リボーン小説

□haruletter
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僕が外国に飛び立ち幾日か過ぎた頃、ハルから手紙が届くようになった。

僕らはそれをいつの間にかharuletter(ハルレター)と呼ぶ。

ハルが送るラブレターで、ハルレター。

誰がつけたのか、なんとも笑えるネーミングだが、悪くはないと僕は思う。

ハルレターはイタリアのボンゴレ基地に週に一回のペースで送られていた。


それに僕が手紙を返したことはなかった。
それでも手紙は毎回違った内容で送られてくる。

並盛の様子とか、三浦自身のこと。
楽しかったこと、悲しかったこと。

文の最後には必ずヒバードの絵が描かれていた。

そんなどうでもいい事を、三浦はあますことなく書き綴る。

どうでもいいと思いながらも内容を覚えるほど手紙に目を通してしまうのは、
三浦にとってはどうでも良くないことだと、僕は分かっているからだ。

そして心のどこかで、手紙にある言葉を捜していることも、僕は知っている。

最初に手紙が届いたときは驚いた。

三浦と僕の関係は、それほど深いものじゃなかったからだ。

たまに応接室にやってきてはぺらぺらとお喋りをしていく三浦を、僕は煩わしく思いながらも追い出すことはしなかった。

それからさらに三浦はケーキや紅茶まで持ち込むようになり、苦いような甘いようなガトーショコラを進めてくるようになった。

あの味が、僕は嫌いじゃなかった。

まあ、ありえないが友達というほどフレンドリーでもない。

が、知り合い、というには遠すぎる。

勿論、恋人何ぞでは到底無い。

そもそも三浦は沢田綱吉に好意を寄せていた。

僕がイタリアに飛び立つ前日に並盛高校で会った時も同じように過ごして、特別何があるわけでもなく別れた。

イタリアに行く日を誰にも告げることはなかったためその日が三浦に会った最後の日となつた。

それから届くようになったハルレター。

三浦に特別な感情を抱いていることを否定はしない。

だが、返事を書こうという気はない。

返事の変わりに三浦に会いに行こうと思っていたからだ。

それがいつになるのか、計画は立てていなかった。


週の終わりの日曜日、同じように手紙が届いた。

廊下で沢田達が騒いでいる声が聞こえた。
群れているな、と思いかみ殺しにいこうと近づくと会話が耳に入った。

「10代目、協同組織から手紙がたくさん届いてますよ。」

「ありがとう、獄寺くん。あ、ヴァリアーからも届いてる、ディーノさんから、ハルから・・・。」

「ん?これ雲雀さん宛てだ。」

「ああ、ハルレターっすよ。」

「そういえば、今日は日曜日だったな。しかし、ハルも健気だなっ!。」

「まさかハルが雲雀になあ。もうかれこれ三年か。」

「でも、ほっとする。俺、ハルの気持ちにこたえてあげられなかったから。ハルには幸せになって欲しい。」

「ツナ・・・。」

「十代目・・・。」

少し静まり返った廊下に足を踏み入れると三人がはじかれるように振り向いた。

「何群れてるの。」

「ヒバリさんっ!。」
「ヒバリっ!。」

睨んでやると沢田が困ったような顔をした。

「あ、いやそのー、ハ、ハルから手紙が届いてましたよ!。」

「そう。」

沢田の手から奪い取るり、きびすを返す。

すぐさま手紙の封を切り、中身を取り出した。

ほんのりピンク色をした便箋にはたった三行だけしか書かれていなかった。

:今度の日曜日にツナさんと京子ちゃんの結婚式に行くためにイタリアに行くことになりました。その時にお話したいことがあります。:


僕はそれを折りたたむと、
ひそかに口元を緩めた。

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