べるぜバブ小説

□人魚姫と子連れ王子
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海の底には人間には行くことができない国があるという。

魚や珊瑚達が優雅に踊り、住民達はにぎやかに町を泳ぐ。
海面から微かに降り注ぐ光は町を鮮やかに照らしていた。

そこは人魚達が住む人魚の国。

国の真ん中には大きな城がある。
城には王トウジョーと女王ヒメカーワ、そして6人の姫がいた。 

人魚達には16歳にならないと地上に出ることは出来ないという掟がある。

地上の世界では人魚達はたいへん珍しい生き物だ。

五歳になったばかりの子が人間に見つかり食べられたという噂もある。

だから、この掟は絶対だ。

人魚姫達の一番末っ子の姫ヒルダは今日で16歳になる。
ヒルダの夢は地上に出ること。
姉達から地上の話を聞いてはまだみぬ世界に思いをはせていた。

ヒルダは王トウジョーの元へと急いだ。
地上に出るには王の許可がいる。

城の最上階に行くとトウジョーはいた。
目付きが悪く髪はボサボサ下半身には筋肉質な上半身に似つかわしくない魚の尾びれが緑色に輝いていた。
手には金に輝く槍を持っている。

「お父様、私はもう16になりました。地上に
でる許可を頂けますか?」

トウジョーは簡単に許可をだした。

「おう、まあ楽しんでこいや。あ、一つだけ忘れんなよ人間どもに姿をみられないようにしろよ。捕まったら何されるかわからねぇからな。」

めんどくさそうに簡潔に言うとトウジョーはオレンジがかったボサボサの髪をガリガリとかいた。

ヒルダは瞳を輝かせトウジョーに礼をいうとすぐに光輝く地上へと向かい泳いだのだった。

そこには初めて見る世界が広がっていた。
星が輝く空がみえ、目の前には大きなお城がそびえ立っていた。

ヒルダは近くの岩に腰かけると金色の美しく長い髪を手でときながら歌をくちづさんだ。

ヒルダの声は人魚達の中でも一番美しいと有名だった。だからヒルダにとって声は何よりも大切なものだった。

不意に豪華な船が現れた。そして一番端の部屋の窓があき、一人の男性が現れた。

茶色っぽい髪に尖った瞳。ヒルダは歌を止めた。
気付かれてしまったのだろうか。

船の方を見ると男性が一人増えていた。
銀色のような髪をしていて賢そうな顔をしていた。

「オガー、どうした?」
銀色の髪の男性が聞いた。
「なぁフルイチ、何か聞こえなかったか?。」

どうやらばれてはいないらしい。
ヒルダはホッと胸を撫で下ろした。
人魚は人間より耳がいいため二人の会話を聞くことができた。

「さぁ、なんも聞こえなかったけど。」

「おかしーな、たしかに歌のようなものが、、。」

不思議そうに首を傾げる姿は何だかアホっぽくて面白いと思った。

そして彼のために歌ってあげたいと思った。

ヒルダは歌が届くようになるべく大きな声で歌った。

「何もきこえねーじゃねーか。俺もうもどるぞー。」
欠伸をしながら戻ろうとするフルイチをオガが呼び止めた。

「まて!フルイチ、今微かに何か聞こえた気がする!。」

二人は喋るのをやめ、耳をかたむけた。
すると最初は小さかった音がはっきりと聞こえるようになった。

「本当だ!女の声がする!近くにいるかもしれない!行くぞオガ!」

女好きのフルイチは嬉しそうに言うとオガの腕を引っ張り浜辺に出てきた。
ヒルダは気づかれないように岩の影に隠れた。

でも歌うのをやめようとはしなかった。

「どこにもいない。歌声はすんだけどな。まるで、海から聞こえてくるようだ。」

フルイチの後ろからついてきたオガはおもわず呟いた。

「綺麗な声だ。」

フルイチは驚いた。
「お前がそんなこと言うなんてな。珍しいこともあるもんだ。」

「けっ、なにいってやがんだフルイチ。俺ほどの正直者はこの世にはいないぞ。」

歌がやんだためフルイチをおってきたオガにフルイチはあきれた様子で答えた。

「どの口が言うんだか。」

岩影にいたヒルダの顔は真っ赤だった。

「あのオガという奴、私の声が綺麗だと、、、。」

そんなことは何人からも言われてきた。
だがなぜかオガに言われた言葉だけがヒルダの頭を駆け巡っていた。

しかしこの感情が何なのか恋を知らないヒルダは知るよしもなかった。
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