羅刹篇

□揺れる心
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〜羅刹 第六章 『揺れる心』〜








翌朝

「椿ちゃんをよろしくお願いします」

悠助達はその言葉に見送られ、椿の家を出発した。

ちょこちょこと勒七の隣を歩く椿は、誰が見ても楽しそうで、周りに花が見えなくもない。

しかし

「助けて!!」

突如飛んできた声によって、花は全て地面に落ちてしまった。
言葉と共にやって来たのは、一人の少女だった。
綾菜より少し年下であろうその少女は、綺麗な桃色の簪をつけていた。

「待ちやがれ!!」

次にやってきたのは三人の男。
それを見た少女は、ぎゅっと悠助にしがみついた。

助けるべきなのだろうが、どうも気乗りがしない。

しかし、一般的な天秤にかけて傾くのは、当然、少女であり、釣り合うなんて有り得ないだろう。

男に傾くなんて問題外。

結論に辿り着いた後の悠助の動きは素早く、あっという間に三人の男は、地面と仲良しになっていた。

「貴方強いのねえ……」

痛みに呻く男達と助けた少女を放って歩きだした悠助達を、そんな言葉が追ってきた。

「あたしの名は琴音(ことね)。それにしても、助かったよ。あいつらしつこくてさあ、お金まんと持っているのに、けちよね」

金の入った袋をじゃらじゃらさせながら言う琴音を見れば、何処から出したのだろうか。
他にも金目の物を持っているではないか。

「お前さん、追剥かい?」

驚きの声で勒七が尋ねれば、当然のように肯定するものだから、此方は無言になるしかない。
そんな悠助達を余所に、

「あたし、貴方達と旅することに決めた!!」

と、にっこり笑って言った。

もし今、天秤にかけるとしたら、確実に釣り合っていたことだろう。

そう思った悠助は、「下らない」という言葉を、口の中で執拗に噛み砕いたのだった。
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