羅刹篇

□生きる道
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「ん……」

悠助は痛む頭を押さえながら起き上がった。
そんな悠助を見た五人は、安堵の溜息を漏らした。


「悠助様!!」

「良かったあ……」

安心した表情の桜と綾菜。

「起きて早々悪いけど、手伝っておくれ」

疲れた表情の勒七。

「人騒がせな坊やだねえ」

やれやれといった感じの闇鴉。

「あたい頑張ったよ!!」

満面の笑みの椿。

ぼろぼろだけど、生きている。
こんなにも頼もしい“仲間”がいる。


どうして見ようとしなかったのだろうか。



なあ、“悠助”
お前の目には、俺はどんな風に映っている?
生きる道を歩いているか?



立ちあがった悠助が、揺れに襲われることはなかった。





「悠助〜頼んだよ」

再び背中合わせになった悠助達は、水を得た魚のようだった。

「勒七!死にたくなければ気を抜くな!!」

「おや、懐かしい遣り取りじゃあないか」

「下らない」

言葉ではそう言いつつも、悠助は笑顔だった。
それを見た桜がそっと微笑んだ時、辺りが光に包まれた。




“悠助様のある想いとあるものが必要なのです”




其れは、桜に言われた言葉だった。
あの時は、理解が出来なかった。

「(でも今なら、理解出来る。俺は見付けたから)」









     ありがとう









光が消えて視界に入ったのは、青い青い江戸の空に、二つの光が消えていく姿だった。
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