Ib trip
□近づいていく青
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「不味いわね…」
ギリッと歯を立て不機嫌そうに、冷たい目つきで
壁を見つめ、力強く蹴り上げると
ミシッと壁の軋む音が響いた
掛かっていた作品たちはガタガタと震えている
彼の恐怖が通路全体を覆っていた
「このままじゃ、ルチアとメアリーが
先に合流しちゃうじゃない…
へましたわね…どうしましょう…」
俯き気味に歩き始める
ブツブツと独り言をいっていると
あっと急に嬉しそうな声を出してニヤリと笑った
そして急いで走り出して、ある扉の前で止まり
部屋に入っていくと、徐に置いてあった
パレットナイフを数本取り出し
内ポケットへとしまい込んだ
「ふふ、いいこと思いついちゃったわ
あぁ早く会いたいわルチア…!
イブ以上にこんなに可愛らしい子に会えるだなんて
アタシってば幸せ者ね♪」
無邪気に笑うと薔薇を眺めて愛しそうに撫でた
「ルチア…もうすぐ会えるわよ…
ふふ、アタシ楽しみだわ…
待っててね♪助けに行くわ♪」
嬉しそうに笑顔を浮かべるたかと思うと
すぐに無表情になり、部屋を出て行った
さぁ、ゲームの始まりよ
―――
――
―
「あら…?」
開いたと同時に名前を呼ばれた気がして
辺りを見渡してみたが、人影は何処にもなかった
「…気のせい?」
きっと幻聴だろう
扉を閉めて少し考えていると
赤い服の女が這いよってくるのが見えた
慌てて走り出して
このフロアの出口の扉を目指して走り出した
チラッと見えた女の顔は
顔が真っ青になるくらいに怖いものだった
ゲルテナが言ってたことと同じだけど
私には何かに、怯えているように見えた
焦っているというか、迫られてるというか
そんな感じだった
一体美術館で、何が起こっているの?
(少しずつ迫る、距離と、危機、)