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すっかり夜になってから。 蝶番が取れかけてガムテープで応急措置を施された扉が、音もなくへろへろと開いた。 アニ 「……待たせたな」 小笠原 「やっと来た」 見るからに疲れた姿で現れたアニの肩には、何やら小さいのがくっついている。 よく見ればそれは、茶髪ショートの女の子。 これまたポケットサイズに縮小された、泉であった。 アニ 「帰ろうとしたら、こいつがひょっこり机の中から現れて……」 泉 「アニが早く見つけてくれないのが悪いんですー」 アニ 「朝からの美少女フィギュア騒ぎですっかり盛り上がっていた同僚たちが、こいつの登場によって一気にオーバーヒートしてしまって」 アニはげんなりした様子でソファーに腰を下ろすと、両腕を背もたれに投げ出した。 肩にいた泉が、よいしょよいしょとアニの頭に登る。 アニ 「『藤守検察官……これは、この子はマズイです!もう犯罪ですよ!』 『美少女フィギュアを机の中に忍ばせているばかりか、ロリコ●だなんて……』 『終わってます』 とか口々に言われて……「泉は2●歳だ!」と言ったらさらに騒ぎが大きくなってしまって……!」 泉 「余計な事を言うからです」 アニ 「お前が見た目中学生だからだろうが!」 泉 「ロリ美少女のフィギュアを持ってるだけでアブナイのに、リアル感の増す年齢設定なんか付け加えてしまうから変態度がUPしたんです。変態」 アニ 「二度言うな!……おかげで、皆を説得するのにこんな時間までかかってしまった」 泉 「説得ではなく弁解です。そしてそれは状況を悪化させただけだと思いますけどね。明日からもう出勤出来なくなるといいよ。そして私の嫁になるといいよ」 アニ 「本当に口の減らない……」 そうこうするうちに、冬子とジュン、エミと澪も、ソファーに座っているアニの身体に乗ってくる。 全員 「アーニさん、帰りましょ」 普段のサイズの彼女たちがこんな事をしたら大変だが、意外にも、小さい彼女たちにアニは優しい。 一日かけて耐性をつけたのだろうか。 アニ 「……そうだな、帰るか」 全員 「はーい」 アニ 「今日だけだからな!」 全員 「はーい!」 こうして、ジャケットの左右ポケットや胸ポケット、ズボンのポケットにも女の子たちを詰めて、アニは帰っていったのだった。 藤守 「……兄貴、もしかして今日が人生最大のモテ期なんと違うか……?」 兄の背中を見送りながら涙ぐむ弟の呟きは、アニには届いていなかった……
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