非公式☆Twitter
こちらは、アブ☆恋の登場人物たちとTwitter風に対話してみよう!という企画から始まったコーナーです。
現在は不定期更新、のはずが、ほとんど毎日更新中。
誰が登場するかはその日の気分次第です。
書き込む方は当番のキャラの呟きにツッコミを入れたり、質問したり、他のキャラを乱入させたりしてお楽しみください。
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非公式☆Twitter2001〜
◆番外編から零れたふたり〜アニ編〜
「年度末は、書類整理はもちろんのこと、決算、引き継ぎ、予算編成で忙しいのは官公庁ならどこも同じだ。当然、検察官であるこの俺も、連日多忙を極めている」
「はい、そうですよね」
久し振りに実現した、慶史さんとのレストランディナー。
二人でホワイトデーのデートの計画を練るどころか、何故か、この時期の仕事がいかに過酷か、お互いに披露しあうような話になってしまった。
まあ、元はといえば、私が、最近の捜査室の忙しさを嘆いたのが始まりだったのだけど…。
「新しい部署は、どれだけ成果を上げるかが全てだからな。上がるのが穂積の血圧だけではどうしようもない」
「室長、ピリピリしてますよ。…お兄さんに言うのはちょっとあれなんですけど、藤守さんと如月さんの書類が溜まりに溜まってて」
「期限を守れないなど社会人失格だ。万が一お前を困らせるようなら、鉄ヲタコレクションをマニアに売るぞとか、実家にある学生時代の出しそびれたラブレターを公表してやるぞと脅してやれ」
「そんな事、出来るんですか?」
「出来るぞ。やらないだけだ」
「ふふ」
慶史さんが本気で弟の大事な物を脅しに使うような人じゃない事は、知っている。
「久し振りに会ったのだ、愚弟などどうでもいい。話を戻すが、その、バレンタインデーのお返しをするという日の事だ」
私にサラダのおかわりを取り分けてくれながら、慶史さんの声は急に小さくなった。
「情けない話だが、今まで、義理でしかプレゼントをもらった事がなくてな。ほ、ほ、本命へのお返しというのは、どうすればいいのだ?」
「特別な事は必要ないですよ。私はその日、慶史さんと過ごせたらいいなあって思うだけで」
「そういういじらしい事を言うから余計に…」
ごほん、と慶史さんは咳払いをした。
「…まあいい。何か考えてみる」
「楽しみにしてます」
私がそう笑顔を浮かべてテーブルの上に手を置くと、向かいの席にいる慶史さんは顔を赤らめたまま、その手を握ってくれた。
「難しいものだな。ありきたりのプレゼントではつまらんし、面白いものは思い付かん」
「面白さ重視ですか?私は、真面目な慶史さんが好きですよ」
「…これは関西人の本能的なものなのだ」
慶史さんは真面目な顔でそう言った。
…数日後…
「すみません、お待たせしました」
私が慶史さんと待ち合わせたのは、霞ヶ関の駅だった。
いつも通勤で利用している見慣れた駅だけど、休日に、改札を出たところで好きな人が待っててくれるというだけで、まるで違った場所になる。
「いや、俺も今着いたところだ」
慶史さんは時計を見た。
「あまり時間がない。行くぞ」
「?」
繋ぐ、よりは掴まれる、という感じで手を引かれて、私は慶史さんと歩き出した。
彼は歩くのが速い。
服装はスーツで、仕事の時とほとんど変わらないけれど、でも、今日はネクタイを締めていないのが特別な感じ。
着いたのは…
「東京地裁?!」
「早く来い。民事裁判法廷ガイドツアーが始まる」
「えっ?えっ?!」
***
続きはまた後で…
2016/03/14(Mon) 07:54
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◆番外編『ステキなお返し』より〜穂積編〜
室長の家で夕飯の準備をしていると、ドアの開く音がした。
「お帰りなさい!」
「ただいま。ちゃんと来てたな」
「もちろん。お夕飯、泪さんの好きなもの作ったよ。いつも忙しいから、好きなもの、たくさん食べてほしくって」
「忙しい、か。お前には、寂しい思いをさせてるかな」
「ううん、そんなことない!私は、仕事を頑張る泪さんも好きだから」
私は、強く首を振った。
「お前は強いな」
「…それ、泪さんが弱いって事?まさか」
「男には、そういう時もあるんだ。…今お前、『俺が弱いとか想像出来ない』と思っただろ」
「えっ!どうして分かったの?」
「…本当に思ってたのか」
室長は呆れたような顔をした。
「次の休みにはバレンタインのお返しをしてやるつもりだったが、そういう失礼な奴には、プレゼントなしだな」
「ま、待って!いります!欲しいです!」
よし、と頭を撫でられ、安堵して息を吐き出す私に、室長は苦笑い。
「からかっただけだ。だが、プレゼントは本当だぞ」
ご飯を食べ終わり、片付けも済むと、室長は私の腰に手を回した。
「だから休みまでは、しっかり働けよ」
「うん。仕事に手は抜かないよ。泪さんの部下だからね」
「そうだ。仕事も恋も、両方手に入れてみせろ」
「うん」
私も室長の背中に腕を回すと、そのまま唇を重ね合わせる。
「お前、最近キス上手くなったな」
「泪さんがたくさんキスするからだよ」
「俺のせい?違うだろ。お前が俺を求めてきてるせいだ」
「それは……」
「違うのか?」
濃厚なキスを繰り返しながら、室長の手が私の身体をなぞる。
その感触に身体を震わせながら、熱い息を吐き出した。
***
それから数日後。
「……一枚足りない」
提出するべき重要な書類が一枚、どうしても見つからないという室長の言葉を受けて、メンバー一丸となった大捜索が始まった。
私は藤守さんとペアを組んで、書庫の捜索に向かう。
「室長の為や、何としてでも見つけだすぞ!」
「はい!」
「…しかし、かなりごちゃごちゃしてるな。かなりの本や資料があるから、見逃さんようにな」
「はい」
ふたりで手分けして探すけど、一向に書類は出てこない。
その間に、捜査室にはない、データ室もない、と次々に報告が入る。
「ええい! こうなったらやけだ!」
藤守さんは座っていた場所にある本を投げ、奥の方まで探し出した。
「ふ、藤守さん!? 落ち着いて下さい」
「俺は何としても探し出す!」
「待って下さい。そんな乱暴に探してたら、棚が……」
言いかけた時、棚がグラついたのが目に入る。
「藤守さん、危ない!」
「やば……っ!」
藤守さんは慌てて棚を押さえたけど、その衝撃で中の本が勢いよく落ちてきた。
ドサドサドサ!
「大丈夫ですか?!」
藤守さんは本と、舞い上がったホコリに埋もれてしまった。
彼を本の中から助け出した時、1番上にある本に目がいった。
(あれ? この本、前に泪さんのデスクにあったような…)
何となく手に取って、中を開いてみたら…。
「あった…」
そこには探し求めていた書類が、折れて挟まっていた。
***
続きはまた後で…
2016/03/13(Sun) 06:41
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◆番外編『ステキなお返し』より〜如月編〜
如月さんの家で夕飯を食べた後、二人並んで後片付け。
今日の交通安全講習、如月さんは女装して舞台に立ってくれた。
以前キャバクラで披露してくれた「ベッキー」以来だったけど、今回も女性そのもの。
「まあ、変装は得意技だから。誰にも見抜かれない自信あるよ」
「うん、確かに。でも、私よりキレイすぎて…むしろ、こーちゃんの方が可愛いんじゃ」
見合わせた顔がふっと緩むと、同時に笑い声を上げた。
「翼ちゃんは、彼氏のこと可愛いって言いすぎだよ」
「そう?でも、みんな男だって気付いてなかったし…」
「なら、今度女装したまま外に出てみようかな」
「きっとそれでも気付かれないんじゃない?」
「その時は、翼ちゃんも一緒にね。翼ちゃんが言いだしたんだから」
「女装でデート…」
想像したら、友だちとショッピングしてるような映像になってしまう。
それって、デート?
「さすがにそれは…」
「冗談だよ。俺だって、久しぶりのデートに女装なんてしたくない」
「そっか、そうだよね」
「じゃあ、今度の休みは、『普通に』デートしよう」
嬉しそうに言ったのも束の間、如月さんは顔を曇らせた。
「でも、書類の提出がな…休みの前の日って、年度末の事件書類提出だろ。俺、溜めに溜めたから、終わりそうにないんだよね」
「ダメだよ、ちゃんと月ごとに提出しないと」
「分かってるんだけど」
食器を洗い終わった如月さんの手が、私に伸びる。
「じゃあさ、これから苦手なデスクワークを頑張るオレに、キスでエールをちょうだい」
顔が近付いて、キスを迫られる。
何度如月さんとキスをしても、唇が重なるまでのこの瞬間が、一番ドキドキする……。
「んー、ありがと。でも、まだ足りないな」
如月さんはイタズラっぽく笑い、私の顔を包み込む。
苦笑しながらも、私は目を閉じた。
***
夕方、捜査室の中は、胃が痛くなりそうなほど重い空気になっていた。
予想通り、二人の提出書類が終わらないのだ。
提出済のメンバーも手伝っているんだけどなかなか進まない。
私は意を決して「ジュース買ってきます」と立ち上がった。
廊下に出てすぐ、小野瀬さんに声を掛けられた。
「やあ、仕事終わりかな?」
「実は、藤守さんと如月さんの年度末調整の書類がまだで…室長は怒鳴るし、みんなピリピリしちゃって」
室内のことを話すと、小野瀬さんは苦笑い。
「だから私、気分転換してもらおうかと思って、ジュースを買いに」
「きみは優しいね。ならいっそ、スイーツを差し入れするのはどう?」
こうして、小野瀬さんと一緒に繁華街へと向かった。
「穂積には煎餅でも買おうか。明智くんは厳しいから…どこかオススメのケーキ屋さんない?」
小野瀬さんと並んで歩いていると、私自身の気持ちもほぐれてきた。
(甘いもので休憩すれば、みんなの気持ちも落ち着くかも)
そう思った時。
「どこまでジュース買いに行くのさ」
如月さんの声に驚いて振り向くと、なんと、全員が揃っていた。
「心配させるんじゃないわよ、もう。しかも、小野瀬なんかと一緒だし」
室長がホッとした顔で呟くと、みんなも笑った。
「さあ、気分転換したら、もうひと頑張りよ!」
***
続きはまた後で…
2016/03/12(Sat) 12:43
コメント(5)
◆番外編『ステキなお返し』より〜藤守編〜
夕飯後、藤守さんの好意に甘えてお風呂を借りた。
「賢史くん、お風呂上がったよ」
浴室から出て、貸してくれた藤守さんのシャツに袖を通し、タオルで髪を拭きながらリビングへ行くけれど、姿が見えない。
首を傾げながら寝室を覗くと、藤守さんはケータイで誰かと話していた。
私に気付いて手招きしてくれたので、呼ばれるままに傍へ行き、ベッドの縁へ腰を下ろした。
しばらく関西弁で言い合っていたけど、藤守さんは強引に通話を切り上げた。
「世話がやける兄貴や」
「賢史くんと話したいんだね」
「今夜の俺は、兄貴よりお前の方がいい」
藤守さんは腕を伸ばし、横からそっと抱きしめる。
「いい匂い」
「お風呂上がりだからね」
「風呂上がりって、なんかいいよな…俺のシャツ着てるのも…エロい」
藤守さんの手がいろんなところを撫でるから、その度に反応してしまう。
「あーもう、本当に可愛い!我慢出来ん!」
強い力で抱きしめられた腕の強さに、ぬくもりに、私の胸の奥が嬉しいって鼓動を打つ。
キスを交わしながら、藤守さんの手が私の身体を撫で上げる。
「次の休みは、もっとたくさんお前を感じたい」
何度目かのキスの後、藤守さんが上に覆いかぶさった。
「実は、ずっと前からお前を連れて行きたいと思ってた場所が…おっと、まだ、内緒や。俺からのサプライズ、楽しみにしといて」
耳元でそっと囁くと、藤守さんはまたキスをくれた。
今度はとても深く、甘いキス……。
***
夕焼けに染まる街を、明智さんと聞き込みに向かう。
「盗難事件、か。時間がかかりそうだな」
複雑な顔で明智さんが見上げた先は、ホビーショップ。
店内に入り、明智さんは店長に質問を始めた。
「それで、どの商品が盗まれたんですか?」
店長
「外のガラスケースに置いてあった、はぴなびの愛ちゃんのフィギュアです」
「は?」
店長
「大人気のアニメキャラですよ」
「アニメ?」
「ストーリーは、4人の女の子のゆるい日常を…」
「それより、フィギュアが置いてあった場所を教えて下さい」
店長と明智さんはどこまでも噛み合わない。
それを手帳に書きつけていると、妙な違和感を感じた。
振り向くと、なぜか全員リュックサックを背負っている数人の若い男性が、じっと私を見ていた。
(この人たち、何だろう?)
「おおお!」
「愛ちゃんの婦警コスキター!」
(え?)
何か分からないけど盛り上がる男性たちに、私はうろたえてしまう。
「…刑事さん…すごく…愛ちゃん似ですぞ」
「愛ちゃんって……もしかして、盗まれたフィギュアの子ですか?」
「そう!愛タン!」
「愛タン可愛いよ、愛タン」
明智
「こら、お前たち、警察官をからかうと公務執行妨害で逮捕するぞ」
私を庇って間に入ってくれた明智さんにホッとしたのも束の間。
「逮捕、つまり手錠ですか?」
「拙者、本物の手錠は見たことありませんぞ!」
「お主もか!だが俺はぜひ拳銃が見たい!」
「お主ら落ち着け、まずは警察手帳が先であろう」
「おおー」
男性たちはどんどん増え、私の時よりも大人数で明智さんを囲んでしまった。
***
続きはまた後で…
2016/03/11(Fri) 11:51
コメント(5)
◆番外編『ステキなお返し』〜小笠原編〜
「ごちそうさま」
小笠原さんの家で夕飯を食べ終え、洗い物をしていると、リビングへ行ったはずだった彼に、背中から抱きしめられた。
「どうしたの? 諒くん」
「…どうもしない」と答えた彼だけど、付き合うようになって、私は、小笠原さんは疲れると甘えてくるという事を覚えた。
「最近、忙しかったから、休みたい」
やっぱり。
「やらなきゃならない仕事だから、やるけど。でも、きみは、僕と一緒にいられなくても平気?」
「私だって、諒くんと一緒にいたいよ!…確かに、最近、あまり一緒の時間が取れてないね。…諒くん、もしかして、私と過ごす為に休みたいの?」
「前にきみが俺の家に来たのは、10日前だ」
「そっか。もうそんなになるんだ」
「ちなみに、デートしたのは18日前」
「2週間……あ!もう3週間目か」
首を傾げると、小笠原さんは私の身体を振り向かせた。
「前にキスしたのは、27時間前」
「そ、それも覚えてたんだね…」
「全部覚えてるよ。だから…」
待ちきれない、とばかりに小笠原さんはキスを迫った。
いつもと違う少し強引な口付けに、ときめいてしまう。
「もっと一緒にいたい。休みがとれたら、前に行った旅館に行きたい」
「うん」
「じゃあ、それまで頑張るために、きみを充電させて」
「もう、諒くん……」
微笑みながら、私も甘えるように身体を寄せる。
久しぶりだから、今はたくさん感じていたい。
「デートの日は、特別なプレゼントを用意するからね」
小笠原さんはそっと囁いて、深いキスを落とした。
***
「盗難に、書類整理に、空き巣…。みんな出払っちゃったわね」
(おかげで、私が室長と組んで繁華街に出動だなんて…)
「あら、その顔。私とじゃ嫌?」
「いえ、そんなことありません!」
「ふぅん、まあいいわ。ほら、さっさと行くわよ」
室長の後に続いて、向かった先は、きらびやかなネオンが並ぶ、夜の店の多い通り。
被害届にあった店を見つけると、室長はさっさと中へ入っていった。
「警察です」
店長
「あら〜、やっと来てくれたのねぇ」
(こ、これは!この人たち、どう見ても…ということは、この店は、おかまバー…!)
ごっついお姉様たちに心の中で衝撃を覚えつつも、表面上は隠して対応する。
室長は、私以上の塩対応だ。
「それで、盗まれたものは?」
「金庫の中に入れてた売上げ、100万ぐらいかしら。あと、棚にあったお酒。ヘネシーとドンペリと、マッカラン…」
「防犯カメラの位置と、進入経路を確認させて下さい」
「ええ、どうぞ」
すると、店長の後ろにいた二人のおかまさんが、「カワイイ刑事さん」「化粧水なに使ってるの?」などと、私に話し掛けてきた。
困惑しながら相手をしていると、室長に叱られた。
「櫻井、仕事しなさい」
「いいじゃない、少しぐらい遊んでも」
「この子で遊んでいいのは、ワタシだけなの!」
なぜか私を巡って、店長さんと室長が火花を散らし始めた。
「…やっぱり、おかま同士だとソリが合わないのかな」
思わずポツリと呟くと、店長と室長は一斉にこっちを向いた。
「「同士じゃない!」」
***
続きはまた後で…
2016/03/10(Thu) 14:18
コメント(4)
◆番外編『ステキなお返し』より〜小野瀬編〜
小野瀬さんと向かい合って、ちょっと遅めの夕飯。
「うん、美味い。きみ、また料理の腕を上げたんじゃない」
「頑張って練習してるの。少しでも、美味しいものを食べてほしいから」
「愛情を感じるよ」
「たくさん入れたからね」
「じゃあ、残さず食べないとね」
上機嫌でご飯を食べ進める、小野瀬さんの姿を見ていると……
「眠いの?」
急に声を掛けられて、ハッとした。
「ご、ごめんなさい」
どうやら、ウトウトしていたみたい。最近、仕事が忙しいからかな…
食後、小野瀬さんは洗い物を手伝ってくれる。
片付けが終わると、ソファに腰かけた彼が手招きをした。
「膝枕してあげる。おいで」
「ふふ、いつもと逆だね」
「いつも、きみの膝枕に癒されてるんだよ。だから、今日はそのお礼」
「足、痛くない?」
「その痛みも、愛せるよ。きみがくれたものだからね」
「もう……」
そういうセリフをサラリと言うから、聞いてる私の方が恥ずかしい。
「今度の休みは、きみを癒すようなデートをしようか」
「え?!いいよ。だって、葵も疲れてるのに……」
私は飛び起きて、小野瀬さんと正座で向き合った。
「俺がそうしてあげたいんだ」
「……私だって、癒してあげたいのに」
小野瀬さんの手が優しく頭を撫でて、そのままゆっくりと、頬に移動する。
「きみはいい子だね」
「そんな事ない」
「じゃあ、どこがどう悪い子なのか、教えてごらん」
優しくソファの上へ押し倒され、息が触れるほど顔が近付く。
「あ……」
言葉にする前に、小野瀬さんは私の唇を塞いだ。
その優しい口付けに、鼓動が早くなる。
「その顔、そそるよ」
小野瀬さんはネクタイを緩めながら、今度は深いキスを落とした。
***
数日後。
その日は朝から捜査室の電話が鳴りっぱなしだった。
「藤守!如月!次の現場に向かって!」
「え、また俺らの出番ですか?」
「やっと帰って来たと思ったのに!」
藤守さんと如月さんが捜査室を出ると、また電話。
「明智!出るわよ!」
「室長まで現場ですか?」
「面倒な事件で、小笠原や櫻井には生々し過ぎる現場らしいから」
「そういう事でしたら」
「櫻井は、小笠原と一緒に、今年度の提出書類をまとめておいてちょうだい」
「はい、了解です!」
ところが。
資料室から膨大な量の書類を捜査室に運んで来なければならないはずなのに、小笠原さんはパソコンに向かったまま、全く立とうとしない。
私は、重い書類を抱えて資料室と捜査室を往復する作業を繰り返した。
いつか小笠原さんも、運ぶのを手伝ってくれる、そう信じて。
けれど…
「小笠原さん、少しは、運んでくれませんか…」
「俺は俺の仕事をしてるよ」
「…」
結局、全部私が運んでしまった。
疲れて座り込んでいると、小笠原さんがコーヒーを入れてくれた。
「ご苦労様。おかげで仕事がはかどった」
「…え?もしかして、私が運んでいる間に、これを整理してまとめてくれてたんですか?」
「うん。聞かれなかったから言わなかったけど」
「…」
捜査室の中を、春なのに秋風が吹いた気がした。
***
続きはまた後で…
2016/03/08(Tue) 20:34
コメント(5)
◆番外編『ステキなお返し』より〜明智編〜
明智さんの家へお邪魔すると、既に彼が料理を始めていた。
「お疲れ」
お邪魔します、と言いながら、早速腕まくりしてお手伝い。
「まーくんのおかげで、私の腕も上がってきたみたい。実家で料理作った時も、お父さん喜んでくれたし」
「そうか、お父さんも喜んでくれたなら良かった。お前は教え甲斐があるな」
「ありがとう。これからもよろしくお願いします、明智先生」
「任せなさい」
料理中なのに、思わずお互いに顔を見合わせて笑ってしまった。
「ところで、3月13日。休みが重なるって話をしただけで、まだ予定を立ててなかったな」
私に触れる明智さんの手に、そっと自分の手を重ね合わせる。
「うん。…でも、本当に休めるかな?」
「確かに」
笑いながらも、私達の距離は近付いていく。
「せっかく、ホワイトデーの前日だし。何も起こらないことを祈って、デートの計画を立てよう」
「すっごく楽しみだよ」
「俺が予定組んでもいいか?バレンタインのお返しに、とっておきのデートにしてやる」
「ホント!?とっておきかあ…どうしよう、もっと楽しみになってきたよ」
自然とにやけてしまう私に、明智さんは私の腰をギュッと抱き寄せ、唇にキスを落とした。
「お前が喜ぶこと、全部してやる。だから…」
「だから?」
「デートが終わったら、俺にご褒美をくれ」
「ご褒美って…?」
「そんなの決まってるだろ、お前だよ」
おでこを指でちょん、と突いた明智さんは、眩しいくらいの笑顔を浮かべた。
***
穂積
「ない!」
室長の突然の叫び声に、みんなが一斉に視線を向ける。
「明日提出しなきゃいけない書類が、1枚足りない!あれを出さないと、評価が貰えないどころか…」
室長の声に重みが増して、背筋が震える。
「絶対に探し出す!来期から給料下がるのが嫌なら、アンタたちも手伝いなさい!」
私は如月さんと組んで、書類の捜索を始めた。
「無いなあ」
如月さんはぶつぶつ言いながら、藤守さんの机の周辺を探している。
「あの、あまり、机の上をかき回さない方が…」
「だって、もしここにあったら困るじゃん」
「それはそうですが…」
困惑する私を置いて、今度は引き出しを開けた。
「あはは!藤守さん、電車のおもちゃ引き出しに入れてる〜」
「き、如月さん!それはプライバシーの侵害ですって!」
「翼ちゃん、これは捜査なんだ。どこに書類があるか分からない」
「それは、そうですけど」
「でしょ。なら、みーんなの引き出しを開けよう!」
「き、如月さん。まさか、私の机も開けるんですか?」
「当然!こういうのは、本人以外の目で探さなきゃ」
(絶対ダメ!私の机の中には、まーくんの写真が…)
私は心を鬼にして、如月さんのデスクへ向かった。
「なら、如月さんの引き出しは私が開けます」
「え?あ、待っ」
ガラッ
引き出しを開けると、そこには、見慣れないボトルやブラシ。
「?」
「…ただのヘアケア用品だよ」
「……あ!」
如月さんの顔は真っ赤。
…これは……
「ごめんなさい!誰にも言いませんから、その代わり…」
「うん…、俺も、君の引き出しは開けない」
私たちは、捜索を再開した……。
2016/03/07(Mon) 09:50
コメント(5)
◆番外編『ステキなお返し』〜プロローグ〜
いつもより少し規模の大きい交通安全講習が行われた、徒歩での帰り道。
「疲れましたねー!」
「お前座ってただけだろ」
「俺の方が疲れた」
「小笠原、あの世代のママ受けええんやな」
「俺より人気だったね」
「小野瀬さんもお疲れ様でした」
「みんなお疲れや。ルイルイに飲みに連れて行ってもらわんと」
せんな冗談を言いながら捜査室に戻った私たちを待ち受けていたのは…
鬼の形相の室長。
「ようやく帰ってきたわね」
「ほ、穂積?どうしたんだ?」
「藤守!如月!書類の提出期限!」
室長の怒号に、指名された二人が凍りつく。
「ああ、そっか。年度末だもんな」
つられて固まっていた私に、小野瀬さんと明智さんが説明してくれる。
「年末の経費精算とはまた別に、年度末は、事件で作成した書類をまとめる作業があるんだ」
「なるほど」
「年度内の書類を全部月ごとに分類して整理しなければならないからね。まだ未提出なんて、言語道断だよ」
そうか、だから、室長は殺気だっているんだ。
藤守さんと如月さんが半泣きで机の上の書類に向き合う。
とても飲み会どころじゃなさそう。
「ご愁傷さま」
「小野瀬、鑑識の課長も走り回ってたわよ。手伝ってあげなさいよ」
小野瀬さんは疲れが出たのか、肩を竦めただけでソファーにどさりと座ってしまった。
「今日の俺は捜査室のお手伝いー」
「じゃあ書類整理する?」
「遠慮するー」
「ちっ」
小野瀬さんを横目に、室長が舌打ちをした…。
2016/03/06(Sun) 11:26
コメント(4)
◆卒業シーズンですね
・学生時代にもっと○○しておけばよかった、実は○○してみたかった、ってありますか?
今日のテーマも澪からね。
澪、どうもありがとう。
そうねー、ワタシは高校時代ずっと生徒会役員だったから、部活動をやってみたかったかも。
もしもうちの連中と同じ高校だったら、きっと面白かったわね。
陸上部で藤守と一緒に走って、明智や如月と柔道やって、小笠原とバドミントン、アニと卓球。
小野瀬を剣道でコテンパンにした帰りは、明智の家に寄って夕飯をごちそうになって姉ちゃんたちと騒いで。
それでもって櫻井と甘酸っぱい初恋をするのよ。
あら?
これじゃワタシ帰宅部だわね?
それより何で俺はお前にコテンパンにされてるんだよ
2016/03/05(Sat) 11:13
コメント(5)
◆花より団子と言いますが
・花より団子と言いますが、みんなの花より○○は?
今日は澪からもらったこのテーマよ。
澪、ありがとう。
……昨日は醜態を曝してしまってすみませんでした。
お詫びにたくさん団子を作って来たので許して下さい。
気にする事ないよ。
そうよ。
久し振りにアンタと寝たけど、べろべろぐだぐだでべそべそで可愛かったわ。
ワタシ、キュンとしちゃった
面目無いです……室長に抱かれて眠ってしまうなんて不覚です……
無理もないですよ。
室長の腕の中は居心地が良いですもんね。
そうか?じゃあ、今夜はお前を抱いて寝てやるからな。
明智くんも櫻井さんも会話が天然すぎ。
あと穂積はどさくさ紛れに口説くんじゃない。
あら、これじゃ「花より団子」じゃなくて「団子より花(翼)」だわ。
せっかくだからお団子も頂くよ。
そうだなあ、俺なら「花より仕事」かな。
毎年あっという間に桜の季節が過ぎ去ってるからね。
お気の毒です。
「花より団子」は「風流よりも実益」という意味だからな。
小野瀬はそれを体現してるわけだ。
似た言葉で「色気より食い気」というのもあるが、こっちなら、小野瀬は「食い気より色気」だな。
否定したいけど言えてる。
(泪さんは「花も団子も」「色気も食い気も」ですけどね……)
聞こえてるわよ〜。
きゃあっ!すみません!
穂積は常に「花より彼女」だよね。
2016/03/04(Fri) 06:52
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