非公式☆Twitter



こちらは、アブ☆恋の登場人物たちとTwitter風に対話してみよう!という企画から始まったコーナーです。

現在は不定期更新、のはずが、ほとんど毎日更新中。

誰が登場するかはその日の気分次第です。

書き込む方は当番のキャラの呟きにツッコミを入れたり、質問したり、他のキャラを乱入させたりしてお楽しみください。

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※番外編紹介では内容を要約していますので、セリフや文脈などはオリジナルに忠実でない場合があります。ご購買の参考程度にお楽しみください。

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非公式☆Twitter2001〜
 
◆番外編から零れたふたり〜JS編〜 



「きみは本当に仕事熱心だね」

久し振りに私の前に現れた恋人は、咲き始めた桜の枝の張り出した、カフェのオープンテラスで溜め息をついてみせた。

「花見大会、だなんて。美しい花は自由に愛でるものだろう?命令で集められて座らされて、そのうえ、お仕着せの酒や食事を与えられるなんて。僕なら御免だな」

私はちょっとムッとする。


「…JSは怪盗で、組織に属してないから分からないかもしれないけど。職場の行事に参加するのは、親睦や結束を深める為に大切な事なの。それに、室長だって、『タダ酒タダ飯だ』って言ってたよ」

「出たくもない花見大会なら、せめて腹を満たそうって意味でしょ?ルイルイは即物的だからねえ」

「…JSも桜は好きでしょう」

「好きだよ。でも強制されて見たくはない」

「…」

言い返せない。

なぜなら彼の言う事には一理あるし、何より私自身が、本当は、出来る事なら参加したくないと思っているのだから。

私は、ログテーブルに突っ伏した。

「はぁあ、JSはいいよね。延々続くっていうお偉いさんたちの堅苦しいお話とも、長時間の正座とも、お酌ともセクハラとも無縁だもんね」

「ちょっと待って」

JSの声が、険のあるものに変わった。

「きみ、花見でセクハラ受けるの?」

「あっ」

私はハッとして顔を上げた。

「違う、まだ、そうと決まったわけじゃないの。ただ、捜査室以外の人達の中には、お酒の席で触ってくる人も多い、っていうだけで」

私の説明を聞いて、すうっと目を細めたJSを見て、私は、自分が口を滑らせた事に気付いた。

「聞き捨てならないな」

「ちょ、ちょっと」

「その、偉い方々の体調が急に悪くなったりして、話が短くなれば、それだけ早く花見大会は散会するの?」

「え?!」

「それとも、何か大きな事件が起きれば、花見自体が中止になるのかな。全員警察官だからね」

「まま、待って!お願いだから、変な気を起こさないで!」

私は、早くも席から腰を浮かせかけたJSの腕を掴んで、慌てて引き留めた。

「権威を笠に着た連中が、きみに対して変な気を起こすのはいいの?」

「そ、それは嫌だけど、でも」

「ちょっと我慢すればいい?僕は我慢出来ない。きみが教えてくれたじゃないか。自己満足の為に、他人の人格を無視するのは罪だ」

「大袈裟だってば!」

私が高い声を出したので、カフェの店員さんが、窓越しにこちらをそっと覗いた。

それに気付いて、JSも座り直す。

「…分かった、花見大会の妨害はしない」

「ありがとう!」

私はひとまずホッとして、胸を撫で下ろした。

けれど、JSはしばらく真顔で私をじっと見つめた後、私の手を、自分の方に引き寄せた。

「僕が、きみを、牢獄から出してあげる」

恭しく私の手の甲にキスをしたJSが口にしたのは、悪魔メフィストフェレスではなく、恋人ファウストの台詞だった。


***


続く…

2016/05/04(Wed) 14:15  コメント(3)

◆番外編から零れたふたり〜アニ編〜 


「その日なら、俺も検察庁の花見大会だぞ」


「え、じゃあ、もしかして会えるかも知れませんね?」

喫茶店での向かい合った席で、「慶史さんと一緒にお花見出来たら嬉しいです」と笑顔を見せる彼女に、俺は正直面喰らう。

お互い仕事の最中に、短時間だが待ち合わせをして雑談、というだけでも、まるでででデートのようではないかと面映ゆい思いをしていたのに、何だこの俺得な展開。

「うむ、そうだな」

「皆の話だと、すごく重苦しい雰囲気のお花見らしいんです。慶史さん、上手に私を連れ出して下さいませんか?」

冗談半分にだろうが、櫻井が、拝むように俺に手を合わせる。

たちまち、俺の脳内の桜が一気に開花した。

満開の花の下、手に手を取りあい、自分たちだけの世界へ向かってスローモーションでウフフアハハとスキップしてゆく俺と櫻井。

「…悪くないな」

妄想の逃避行に満更でもない俺の心を知ってか知らずか、櫻井は無邪気に右手の小指を差し出してきた。

「じゃあ、迎えに来る、って約束してください」

「…うむ」

いい歳をして人前で指切りとか、若干恥ずかしいが、いいじゃないかにんげんだもの。

「…まあ、なんだ、お前がそこまで言うのなら。よかろう、抜け出して、二人で花見をしよう」

「はい!」

ああ。

俺は、

花よりも、

お前のその顔をずっと見ていたい。

***


「あっら、アニじゃない」

「検察もお花見だなんて奇遇だね」

「すみませんその弁当は俺のです」

「足を踏むなや兄貴!」

「あ、翼ちゃんの隣は俺だからダメですよ」

「反対側の隣は俺だよメガネ」

…こいつらがいた。

櫻井は捜査室のバカどもから出る雑用を甲斐甲斐しくこなしながら、俺にも弁当を差し出し、緑茶を注いでくれた。

衆人環視ではないか。

この包囲網から俺にどうやって連れ出せというのだお前は。

目が合うと、櫻井は苦笑いして肩を竦めた。

やっぱり無理ですよね、とその目が訴えている。

俺の自尊心が震えた。

「小野瀬、鑑識の席で太った部下が酔って転がっていたがいいのか」

「え」

「明智、総務の女子が、調理で助けを求めていた」

「俺にですか?」

「如月、愚弟。あの桜の下で、これから合コンするメンバー募集していたぞ」

「え、ホンマ?」

「うっわ、もうあんなに集まってますよ」

こうして次々に、俺は櫻井の周りに陣取っていた男たちを追い払う事に成功した。

残るは、人酔いして櫻井の膝枕で寝ている小笠原とかいうメガネと、櫻井に延々と酒の酌をさせている穂積だが…。

小笠原の顔色は真っ青だ。

さすがの俺も、こんな半病人相手に「その膝枕を返せ」とは言えない。

俺の作戦は完遂しなかったが、櫻井も分かってくれるはずだ…

「櫻井」

不意に、穂積が櫻井の名を呼んだ。

「足が痺れたでしょう。ワタシが代わるから、散歩してきていいわよ」

「え…」

驚いている櫻井を横目に穂積は懐から手帳と万年筆を出し、さらさらと何か書き付けてから、そのページをピッと破いて俺に差し出した。

【いつもの居酒屋に芋焼酎1本】

俺と櫻井は一瞬顔を見合わせたが、胡座をかいた穂積が小笠原を引き受けたタイミングで、二人して席を立った。

続く…

2016/05/03(Tue) 12:48  コメント(4)

◆番外編『秘密のお花見大作戦』より〜穂積編〜 



「お待たせしました」

私が車に乗り込むと、室長はすぐにエンジンをふかした。


「藤守と如月は?」

「真面目に残業してます」

「…あいつらの事務処理が遅いのは、俺が甘やかしてきたせいもあるんだよな。これからは厳しくするか」

「これ以上厳しくしたら逃げ出かしちゃうかも」

室長は笑いながら信号待ちで車を停めると、大きな欠伸をした。

「泪さん、眠そう」

「春だからな」

言いながら、また欠伸。

私は心配になってきた。

「少し、どこかで休憩する?」

「何だ、誘ってるのか?」

意地悪な笑みを浮かべて、室長は左手を私の太ももに乗せた。

「違います!」

「触って欲しいくせに」

「…」

恥ずかしいけど、確かに否定できない。

お互いへの気持ちだけの爽やかな交際もいいけれど、こんなふうに、当たり前のように相手に触れることが出来る関係も好き。

私がスーツのスカート丈を伸ばしていると、室長はまた欠伸をした。

「泪さん……」

「そんな心配そうな顔をするな。時間が出来たらゆっくり寝るから、その時は膝を貸せ」

「うん」

私が頷くと室長は優しい笑みを浮かべながら、現場の方向へハンドルを切った。

***

署の花見大会当日。

署長から始まり、次々に偉い人たちの話が続く。

「…帰りたい。もう限界」

私の隣に座っている小笠原さんの端整な顔は歪み、耐えようと奥歯を噛みしめている。

「もう帰る」

ついに、小笠原さんは立ち上がってしまった。

「そ、そうだ!もうすぐ、ビンゴ大会がありますよ!」

「興味ない」

「でも景品の中に…ほら!」

会場に設置されていたパンフレットを開くと、そこにはビンゴの景品として、私にはよくわからないノートPCの写真が。

「こ、これって、実験用に作られた対サイバーテロ用の高スペックタブレット型のデバイス!」

私には小笠原さんの言葉の意味がさっぱりわからなかったけれど、彼は明らかに興味を示した顔をしている。

「…本当に、これ貰えるの?」

「はい、ビンゴで当たればですが」

「これを逃したら、もう二度と手に入らないかも…」

小笠原さんは帰りかけていた身体を反転させ、先ほどと同じ位置に腰を下ろした。

やがて、長い長い挨拶がようやく終わると、全員にビンゴカードが配られた。

「あ、ここだ」

「…これか」

「ここと…ここも…」

するとなんと、小笠原さんよりも早く、私のカードがビンゴになった。

私は急いで、ビンゴカードを彼へ押し付ける。

「どうぞ」

「えっ、でも」

「ほら、小笠原さん。早くビンゴって言わないと、限定版モデルが!」

「…ンゴ…」

進行係の女性事務員が、やっと、手を挙げた小笠原さんを見つけてくれた。

「はい、何でしょう?」

「ビンゴ……ビンゴ!!」

こうしてようやく、小笠原さんはお目当てのPCをその胸に抱いた。

そこへ、挨拶回りを終えた室長が戻ってきた。

「あら、小笠原。逃げなかったのね」

「もう帰る」

「敬、語」

「……お先に失礼します」

景品ゲットでよほど機嫌が良いみたいで、小笠原さんは頭を下げて去っていった。

***

続く…

2016/05/02(Mon) 14:20  コメント(3)

◆番外編『秘密のお花見大作戦』より〜如月編〜 



「気温が上がってきたからか、最近事件の件数が増えてきたよね」

如月さんと繁華街を徒歩で巡回中。

「翼ちゃんも気をつけた方がいいよ。特に繁華街は、変な人と危ない人だらけだ」


「私は大丈夫ですよ。この前も、如月さんと訓練したばかりじゃないですか」

急に真面目な顔になると、如月さんは私の手を掴んだ。

「ねえ、今俺の手を振りほどける?」

問われるまま、ほどこうと動かしてみるけど、本気でやっても全然離せない。

「ね?男と女だと、これだけ力の差があるって事」

「でも、如月さんは、柔道の有段者じゃないですか」

「そうだけど、俺よりも強い人が翼ちゃんを襲ってきたら?相手に出来る?」

「…難しいかもしれません」

「分かってくれればいいんだ」

手を掴む力が緩むと同時に、如月さんの顔に笑みが浮かんだ。

「だから、俺も、毎日鍛え続けてるよ。いざという時、翼ちゃんを守れるようにね」

「そんなに想われて、私すごく幸せ」

「もうひとつは、煩悩を振り払う為でもある」

「?」

「こういうこと」

笑みを浮かべると同時に、如月さんは私の手を前方に引いた。

突然のことでバランスを崩す私を抱き、そのまま近くの路地裏へ。

「君といると、すぐにキスしたくなる」

壁に押しつけ、唇を奪われる。

「最近デートも出来ないし、気を紛らわそうと身体動かしてたんだけど、もう限界だよ」

「こーちゃん…」

「花見大会の後、デートしよう」

「うん」

顔を見合わせて約束すると、私たちは笑いながら仕事に戻った。

***

花見大会の会場で、気がつけば、周りには誰もいなくなっていた。

小笠原さんは早々に帰ったし、藤守さんや明智さんは前の課の人たちのところ。

如月さんは事務課の子に呼ばれて、室長は挨拶回りに行ったきり戻ってこない。

私もうまく逃げたいけど、長々と喋ってる偉い人たちが、みんな視線をこっちに向けるから逃げられない。

暗い気持ちになっているところへ、やっと室長が戻ってきた。

「あら、何で櫻井しかいないの?」

「お疲れ様です。みんな、他の課のところへ行ってしまったんです」

「この空気の重さと固さに耐えられなかったのね」

「そうだと思います。でも、如月さんは仕事で呼ばれただけなので…」

「だからって、アンタを置いていくなんて…あいつらは後でしめる!」

指をパキポキと鳴らす室長に、思わず苦笑い。

「まあいいわ、お酌しなさい」

「はい…って、この状況で飲むんですか?」

「大丈夫よ、話を聞きながらでも飲めるわ。アンタも飲みなさい」

室長には逆らえず、お酌する。

でも、私はこの後如月さんとデートだから、酔ってしまうわけにはいかない。

「お偉いさんを気にしてるの?まあ、アンタが飲まないなら全部ワタシが飲むからいいんだけど」

「全部って…これ全部飲んだらさすがに飲み過ぎです」

「こんな堅苦しいの、飲まなきゃやってられないわよ」

室長は宣言通り、あったお酒をたちまち全部空にしてしまった。

足りないから買ってきて、と言われたところへ、如月さんが戻ってきた。

「室長、俺が買ってきますよ。荷物持ちに翼ちゃんを連れて行っていいですか」

「いいわよ」

***

続く…

2016/05/01(Sun) 06:52  コメント(4)

◆番外編『秘密のお花見大作戦』より〜藤守編〜 


「よっしゃ!任務修了!」

犯人をパトカーに乗せると、藤守さんは大きく背伸びをした。


「お疲れ様です」

「おう!お前のフォローのお陰や。ありがとな」

「力になれたなら、嬉しいです」

大きく頷いた藤守さんが、ポンポンと私の頭を軽く叩いた。

犯人を送り届けてから、署の近くに出来た新しいカフェで昼食。

なかなかデート出来ないから、こうして一緒にいられるだけでも嬉しい。

「何か、不思議なんだよな」

「?」

「付き合ったばかりの頃は、もっと一緒にいたい、ベタベタしたいってそればかり思ってた。だけどこうして一年経つと、一緒にいれるだけで良いかなって思えるんや」

藤守さんが私と同じ事を考えていた事が、それを穏やかな顔で伝えてくれる事が、嬉しい。

「私も」

「俺たち、同じ気持ちなんやな。…何か、そういうのって、ええな」

「うん」

「俺、お前とはそういう優しい時間を過ごせる夫婦になりたい」

「賢史くん…」

「時々ケンカするけど、いつも穏やかで笑顔の絶えない家庭がええなって思う」

「うん、私もだよ」

視線が絡み合い、目が離せなくなる。

テーブルの下に伸ばしていた手を、藤守さんが掴んだ。

「あ…」

「……翼」

「お待たせしました、桜のお花見ケーキでございます!」

見つめ合ったところで、陽気な声の店員さんが食後のデザートを持ってきた。

慌てて離れる藤守さんの手。

「あ、ありがとうございます」

「ごゆっくりどうぞ!」

店員さんが去ると、仕切り直し、というように、藤守さんが口を開けた。

「翼、あーん」

苦笑しながらも、つい、甘やかしてしまう。

「うん、美味い。…署の花見大会も、こんな風に楽しかったらええのにな」

「本当にそんな堅苦しいの?」

藤守さんは真顔で頷きながら、私にもあーんしてくれる。

「お前を長く置いときたくない場所やで。早目に抜け出そうな?」

もう一度手を繋いで問われ、私は大きく頷いた。

***

花見大会当日。

「櫻井さん、お邪魔させてもらうよ」

署長の長広舌にうんざりしていると、不意に、抑えた笑い声が聞こえ、爽やかな香りが辺りを包んだ。

「あれ、小野瀬さん?鑑識課の皆さんはどうしたんですか?」

「鑑識は外で飲む機会が少ないから、つい飲み過ぎちゃったのかな。酔っ払って、寝ちゃったよ。疲れも出たんだろうね」

「ああ、なるほど」

「だから、こっちに来たんだ。話し相手になってくれるかな」

「はい」

「あれっ、きみも烏龍茶?良かった。こういう時は、やっぱり酒を飲まない者同士が一番だね」

「無理に勧められても、断るのが大変ですよね」

小野瀬さんは本当に嬉しそうにニコニコして、いつもよりもよく喋る。

「そうなんだよ。新人時代には、よく先輩から酒に誘われたんけどさ…」

小野瀬さんは機嫌良く話しながら、紙コップに手を伸ばした。

「それでね…うっ…何だ、これ」

どうやら、誰かのウイスキーのコップと間違えてしまったらしい。

明智さんと如月さんがすぐに異変に気付いてそばに来て、小野瀬さんを寝かせ、世話を始めてくれる。

私は三人に心の中で謝りながら、花見会場を抜け出した。

***

続く…

2016/04/30(Sat) 06:50  コメント(4)

◆番外編『秘密のお花見大作戦』より〜小笠原編〜 

データ室に入ると、小笠原さんはすでにパソコンの前でキーボードを打っていた。


「お疲れ様です。えっと、この状況と過去に起きた事件を照らし合わせるんですよね?」


「そう。隣のパソコン、立ち上げてあるからそれを使って」

「はい、ありがとうございます」

笑みを向けたけど、小笠原さんの視線はパソコンに向いたまま。

膨大な情報が並ぶ画面に目を凝らしていると、隣の小笠原さんのキータッチの音に、妙な間が開いた。

気になって視線を向けた瞬間、小笠原さんの頭がカクン、と前に傾くのを見てしまった。

(今、カクンってしたよね)

「…諒くん、もしかして眠い?」

「…よく分かったね。でも大丈夫。仕事を続けよう」

「でも…少し仮眠室で休めば?」

「必要ない」

小笠原さんは言い切ると、また作業に戻った。

「…僕、きみを守れる男になりたいんだよ」

「私を?」

問い返すと、彼は小さく頷く。

「だから、眠いくらい我慢しないと」

「諒くん…」

「きみと、ずっと一緒にいたいからね」

小笠原さんの気持ちが嬉しくて、私も一緒にいたい、と頷く。

「でも、甘えてくれなくなるのはちょっと寂しい」

「翼ちゃん…」

「だから、辛い時は無理しないで」

小笠原さんは少し頬を染めると、私の傍へイスを寄せた。

「じゃあ、少し寝る。膝貸して」

「え?だ、誰か来ないかな?」

「大丈夫」

不安はあるけど、彼の重みが愛しくて、苦笑しながら仕事再開。

「…花見大会…参加したくないな…」

まだ言ってる。

強くなりたい、って言ったばかりなのに、可笑しい。

「それなら、諒くん…終わった後のデートの約束すれば、参加してくれる?」

小笠原さんは頷く代わりに、問いかけた私の頬へキスをくれた。

***

花見大会は、桜の綺麗な並木通りで行われた。

「桜、とっても綺麗ですね」

「そうだな。これで上司の固い話がなければ、最高なんだが……」

うんざりするほど長い話に、明智さんも疲れた顔をしている。

「気が重くなって、お酒やお弁当を食べるどころじゃないんですよね」

「そうなんだよな。お偉方の監視があると、緊張して喉を通らない。室長はよくあんなに飲み食い出来るな」

そうは言いながらも、捜査室のみんなとお弁当を食べていると、ゴミ袋が足りなくなってしまった。

明智さんが立ち上がる。

「事務の子たちの所に、もらいに行ってくる」

「…あの、明智さん。室長が、私も一緒に行けって」

「何でだろうな」

「さあ?」

ごみ袋をもらって戻ろうとすると、そこにいたはずの明智さんがいなくなっていた。

「あれ?」

明智さんはなぜか、女性に囲まれて、黄色い声援と熱い視線を浴びながら、困った顔で料理していた。

「…材料はあるのに誰も料理が出来ないと揉めていて…放っておけなかったんだ」

明智さんらしい。

(もしかして、室長はこれを予見してたのかな?)

「櫻井、助けてくれ」

「明智さんを連れて行かないで!」

「明智さん、私たちを見捨てないで!」

「せっかくだからお話しさせて!」

「助けてくれー!」


明智さんが戻ってきたのは、花見大会終了間際のことだった…。

***

続く…

2016/04/29(Fri) 10:35  コメント(3)

◆番外編『秘密のお花見大作戦』より〜小野瀬編〜 

小野瀬さんからの依頼で鑑識室に入ると、机の上にたくさんのダンボールと書類の束。


「ここにある書類を、検査結果のリストと照合して、元の棚に戻してほしいんだ」


「これ、全部ですか…」

小野瀬さんと二人での片付けは、真面目にやってるのになかなか捗らない。

何故なら…

「ごめんね、俺以外の職員が全員出払っちゃってさ」

「そういえば、誰もいませんね」

「そうだよ。この鑑識室には、俺ときみの二人きり」

「二人きり…」

「今、いやらしいこと考えただろ」

なんて言って来る。

「か、考えてません!」

資料を上の棚に乗せようとすると、すぐ来てくれるのはいいけれど、わざわざ後ろから私を抱きしめるような格好で支える。

「だ、誰か戻ってくるかも…」

「戻ってくる時は連絡あるから大丈夫。それに、鑑識のドアには鍵をかけたしね」

こんな調子。

(用意周到というか…)

気を抜いた途端に、小野瀬さんの息が耳にかかった。

その瞬間、背筋がゾワッと震えて、心臓を直接掴まれたような衝撃が走る。

「あ、葵!」

「やっと名前呼んだね」

…この人の恋人でいると、心臓がもたない。

「休憩にして、外出しようよ。開店したばかりで、桜をモチーフにしたデザートがオススメのカフェがあるんだ」

「桜の季節だもんね」

「花を見ながらご飯ってのは風流で好きだけど」

桜から署の花見大会を連想したのか、溜め息をつく。

「花見で酒を勧められるのはなあ」

「上司のお酒を断るのとか大変だよね」

「だから、協力して途中で抜け出そう。なかなかデート出来ないんだから、二人きりの花見を楽しもう」

「うん」

頷くと、小野瀬さんは「約束」と口付けをしてくれた。

***

花見大会当日、署内の数十人が集まって、キレイな桜の下で正座。

「で、あるからして……」

(長い!長いよ、署長の話!)

偉い人が次々と出てきては、何十分も話をしている。

これは花見なのか説教大会なのか、さっぱり分からない。

(みんなが言ってた意味が、よく分かった……)

「翼ちゃん、大丈夫?」

隣から如月さんが、こっそりと耳打ちで尋ねてくれる。

「何とか。如月さんは、案外辛くなさそうですね」

「実はもう飲んでるんだー」

「いいんですか?」

「藤守さんなんて、もう酔っ払って潰れてるよ」

見れば、確かに酒瓶を抱えたまま横になっている。

「明智さんは、前のメンバーに誘われてどっか行ったし、ルイルイなんて挨拶回りで顔すら見てない」

「あれ?小笠原さんは?」

「まさか…」

顔を見合わせてから、慌てて電話をかけてみる。

「…小笠原さん、もう捜査室に戻ってた。帰るなら、誘ってくれればいいのになあ。つまり、今ここにいるのは、俺たちだけってことだよ」

「ですね」

「そういうわけだからさ、こっそり飲もうよ」

「じゃあ、少しだけ」

「飲まないとやってられないよ。ほら、飲もう飲もう」

ぐいぐい勧めてくる如月さんに押されて、私もかなり飲まされてしまった。

「いーい飲み、っぷり…だね、翼…ちゃ…」

散々笑ったと思ったら、如月さんは次第に静かになっていき、やがて眠ってしまった。

***

続く…

2016/04/28(Thu) 09:47  コメント(3)

◆番外編『秘密のお花見大作戦』より〜明智編〜 

明智さんの車に乗り込み、空き巣の被害届があった現場へと移動する途中。


「お前と組むのは、久しぶりだな」


「そうですね。頑張ってお仕事しますから、よろしくお願いします」

「…今は二人きりなのに。真面目だな」

「公私混同はいけないと思って」

「そうか。今日は食事にでも誘おうかと思ってたんだが…止めておこう。仕事中だから」

「そんな!」

「はは、冗談だよ。真剣な顔だったから、ちょっとからかいたくなっただけ」

「もう……」

「今日、俺の家に来ないか。美味しいふりかけを作ったから」

私の頭を撫でてから、明智さんはハンドルを握りなおした。

「それに実は、最近、姉たちに彼氏が出来た。だから、静かに過ごせるんだ」

良かったね、と言うと、明智さんは「長続きするといいけどな」と苦笑した。

「今日も彼氏と花見デートだそうだ。…ああ、そうだ。俺たちも、署の花見大会の後、二人だけで花見をしないか?」

「いいの?嬉しい」

「せっかくの花見だし、弁当でも作って…と言いたいが、捜査室メンバーに貪り尽くされるのがオチか」

「お弁当なんてなくても、私は、二人で桜を見られるだけで嬉しい」

「そうか。じゃあ、みんなに気付かれないようにしないと」

「うん」

赤信号で停まると、明智さんの手がまた頭を撫でる。

「おっと、仕事中だからほどほどに、だったな」

「うん……じゃなくて、はい」

「よし。じゃあ、櫻井。気を引き締めて現場に行くぞ」

「了解です、明智さん」

私たちは車の中で笑い合った。

*****

署の花見大会も終盤に差し掛かって、やっと堅苦しい雰囲気から解放された。

「お偉いさんたち、みんな長い挨拶やったなー」

こっそりと伸びをしたのは、藤守さん。

「そうですね。でも、挨拶が終われば普通のお花見と一緒ですね」

見渡せば全員が同じようにほっとした顔で、お酒や料理に手を出している。

私は室長にお酒を渡したり、如月さんにお皿を渡したり、青ざめた小笠原さんに横になってもらったり。

(これが終われば、明智さんとデート出来る)

私がそんな不純な動機でせっせと働いているとは知らない藤守さんは、しきりに褒めてくれる。

「お前はほんま優しいなー」

「だって一番下ですもん、普通ですよ」

「いや!優しい!」

「普通ですってば」

「何だか櫻井と藤守って、お姉さんと弟って感じよね」

「確かに。櫻井の方が落ち着いているせいですね」

私たちを見て、室長と明智さんが笑っている。

「櫻井、これお食べ。酒も飲んでええんやで」

新しい皿に次々と食べ物を乗せ、藤守さんが手渡してくれる。

「ありがとうございます…藤守さん、随分匂いますよ。飲み過ぎてませんか?」

藤守さんの周囲を見てみると、案の定、凄い量の酒瓶が転がっていた。

「…だいぶ酔ってますね」

「俺は酔ってませんよ、酔うてへんがな〜」

(関西弁が適当になってる…)

「櫻井…ぐすん、ぐすん」

(笑い上戸かと思ったら、泣き上戸?)

「藤守さん?」

「…気持ち悪い」

「やっぱり!薬買ってきますから、大人しくしてて下さいね」

藤守さんを寝かせると、私は急いで花見大会を抜け出した。

***

続く……

2016/04/27(Wed) 01:33  コメント(3)

◆番外編『秘密のお花見大作戦』より〜プロローグ〜 

〜翼vision〜

暖かくなった南風が警視庁を満たし、出勤する私の足取りも軽い。

署内ではあちこちに、研修中の新人らしい姿がちらほらと目につく。

すっかり、春爛漫だ。

自分の新人時代を思い出しながら捜査室に向かう角を曲がると、自販機の前で何やら揉めている、明智さんと小笠原さんを見つけた。

「おはようございます、どうしたんですか?」

「……」

「ああ、おはよう。いや、小笠原が、今年の警視庁の花見大会に出たくないって駄々をこねていてな」

「駄々こねてるわけじゃない。行きたくないだけ」

「行きたくないって…」

「それを駄々って言うんですよ、小笠原さん」

「せやな」

私の後ろから、如月さんと藤守さんも加わった。

「明智さん、お花見大会って何ですか?小笠原さんがこんなに嫌がるなんて、もしかして、年末の忘年会のような……?」

「お前、花見会に出た事無いのか。忘年会のような酒乱製造現場とは違う。普通の花見だ」

「それなら…」

「花見なんてしたくない」

話は堂々巡りで、私は困ってしまった。

「小笠原さん、職場のお付き合いですから、お花見があるなら少しだけでも参加しないと…」

「そうよ。嫌でも顔だけ出しなさい」

急に後ろから別の声が掛かって、全員が一斉に振り返る。

そこには、室長と小野瀬さんが立っていた。

「花見会なんて、ただ集まって酒飲むだけなんだから」

「俺は飲めないけど、花見って何か楽しいよね」

私は小野瀬さんに尋ねた。

「花見会って、飲み会なんですか?」

「そうよ」

答えたのは室長。

「別名、タダ酒飲める会」

小野瀬さんは室長の言葉に苦笑いしてから、続ける。

「確かに飲み食いはタダだけど……あの雰囲気は苦手だな」

「小野瀬さんも?」

「うーん。お偉いさんたちが来るから、場が暗いんだよね」

「お通夜みたいで、俺なんか早く帰りたいですよ」

と、如月さん。

「俺は行きたくもない」

小笠原さんはますます不機嫌。

「せやけど、他の課の連中とも飲める、楽しい面もあるんやで」

「署長たちの訓話が長すぎて料理が冷めるのがなあ」

「でもタダ酒タダ飯よ」

藤守さん、明智さん、室長…、みんなの意見を聞いても、なかなか想像が出来ない。

「……つまり、お堅いお花見なんですね」

「その通り」

捜査室メンバー全員の声が一つになった。

小笠原さんを視界に入れながら、室長が補足する。

「花見会は旧年度の慰労会でもあり、新年度からの新人歓迎会、さらに懇親会でもあるのよ。だから、確かにくだけた宴会ではないけど、なるべく全員が参加するように言われているの」

「ああ、なるほど」

室長の説明に、私は頷いた。

だから、管理職の人たちが参加して、挨拶や長い訓話をするわけだ。

「一応、ビンゴみたいなイベントもあるんだよ。すっごく静かだけど」

小野瀬さんが笑う。

静かなビンゴとかちょっと想像つかない。

まだぐずる小笠原さんを励ましながら、私は、初めて参加する事になる花見大会に思いを巡らせていた。



でもその前に、今は仕事を頑張らなくちゃ。

私は一日の仕事を終えると、捜査室を出た……。
 
*****

……続く……
 

2016/04/26(Tue) 06:27  コメント(2)

◆春のキャンプで得する人損する人 




小春ちゃんは先週会ったリア友の皆さんとのやり取りにうつつを抜かしていて、なかなかTwitter部屋にきてくれませんね。



普段家にばかりいるから、たまに外に出ると嬉しくて仕方がないんでしょうね。

まあ、もうじき戻って来るでしょうから、大目に見てやってちょうだい。



小春ちゃんに影響されたわけじゃないですけどー、桜が咲いていれば花見、葉桜になればピクニックに行きたくなりませんか?



わかります。



せやな、って、怪盗が普通に俺らと一緒に茶ーしばいてるんですけど!



ピクニック、いいですねえ。

なんでしたら明智氏に絶品のお弁当を作っていただいて、奥多摩あたりのちょっとした湖畔のキャンプ場まで足を伸ばして……



お前の口からキャンプ場と聞くと悪寒が走るのは俺だけやろか。



いいわねーキャンプ。

今年の研修って事で、行きましょうかまたみんなで。



あ、藤守さん、俺も今悪寒が走りましたよ。



こんにちはー、…あっ、この空気。

ろくでもないことに巻き込まれそうな予感。



当たってる。



でも嫌いじゃないくせに。



ドラマCDでも、親愛な森よでも、楽しかったですよ!



俺には「恋人の日〜明智編〜」からの掲示板(リレーSS「穂積←→小野瀬」)での苦い記憶もあるんだがな……



はーい、それじゃ、非公式Twitterはそろそろ番外編紹介に入るので、その間、我々は全員でキャンプに行く事に決定!



決まっちゃった!
 

*****


4月番外編はのんびりペースでご紹介しまーす。

2016/04/23(Sat) 11:31  コメント(8)

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