視線の先に在るものが何であるのか解らなかった。私の知らない世界を見ているのか。それともひたすら闇を見続けているのか。どちらにしたって私を見ているのではない気がした。届かない世界を知る彼には私なんて小さな存在でしかなくて、眼中にも無いのだと思う。それでいて、私だけを見てくれれば良いのにと切望してしまう。
「私はここにいるよ」
「え?うん、知ってるけど。つーか普通に見れば解るけど」
髪に隠れて見えない目で私を見ていると彼は言った。だけど違くて、私が言いたいのはそういう単純な事じゃなくて。
「そういうのは見えてるって言わないの」
前髪へと伸ばしてみた手は軽く払われてしまった。やはり私は彼の目に映るべき存在ではないという事か。
「あ…悪ぃ」
「ううん、全然」
焦って謝る彼に気持ちが萎えていく。代わりに膨らむのは、闇の中の彼を見えていない自分への悔恨の情と。それでも消えない切望。