『アイツ』
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さて、どうするか。
カガリはドアの前で仁王立ちしながら考え込む。
開けるべきか、それとも引き返すべきか。
冷静に考えてみると、後者の方が確実に正しい。
だが、そうするともれなく敗北してしまう事になるのだ。
負けるのは嫌だ。
その相手がアイツならば尚の事。
だけど、開けたら……
【アイツ 第5話】
「さ、最強の二択だ…」
我知らずカガリは呟く。
じっとりと睨むようにドアノブを見つめ、そっと右手を延ばしてみた。
しかし、ドアノブに触れる寸前で再び右手を引っ込める。
先程からずっとその繰り返しで、一向に先へと進めない。
ああ、もう!
カガリはギリリと唇を噛み締め、挑むようにドアを睨んだ。
「ええい!女は度胸だ!!カガリ・ユラ・アスハ、出陣す──」
バゴンッ
「い゛っっっどゎぁぁああ!」
それはまさしく予期せぬ突然のアクシデントだった。
目の前の扉が勢いよく開き、見事カガリの額にクリーンヒットを決め込んだのだ。
決意の叫びは悲劇の叫びと変わり果て、カガリの思考は一瞬で吹っ飛ぶ。
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