銀新

□君と俺と。
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夢を見た。

さよなら、と告げられて、去って行く君の後ろ姿を俺はぼんやりと見つめていた。
離れたくないのに、傍にいて欲しいのに。
俺が君を不幸にしていたようで、引き止めることは出来なかった。


淋しい、夢だった。




【君と俺と。】






「銀ちゃん、いつまで寝てるヨ?早く起きて!」
「…んー…」
神楽の声で目を覚まし現実へと引き戻された俺は、無償に新八の顔が見たくなって無意識のうちに新八を捜す。
だけどそこには新八の姿は見当たらなくて。
神楽に問うと、どうやら買い物に行ったらしい。
「じゃ、銀ちゃん。私今から定春の散歩行ってくるから、留守番よろしくネ」
「……あぁ」
神楽は定春に散歩用の紐を付けると、楽しそうにして外へ飛び出していった。

「…はぁ」
ため息を吐いて、とりあえず酒を口にする。
『……ょ…ら』
ふと耳に届く、残酷なほど生々しく残っている、君の声。
(……くそっ)
先程から胸のもやもやがとれない。
夢であるとは分かっているものの、どうしても落ち着かない。
『さよなら』
冷たい瞳で君は言った。
全身で俺を拒絶するかのような、冷めた声で。
(所詮夢じゃねぇか…っ)
行き場のない気持ちを誤魔化そうとして、休む間もなく酒を飲み干した。
(…だけど)
それはいつ現実になってもおかしくはないものだった。
俺と君とでは、住んでいた世界が違いすぎる。
やはり、いくつもの命を殺めてきた俺と、純粋に真っすぐ育ってきた君とでは、釣り合わないのだろうか。
あの夢はそれを俺に思い知らせる為のものだったのだろうか。
たとえそうだったとしても、俺は―――…

「ただいまー。あ!!銀さんまた飲んでるんですかっ!?どうせ二日酔いになるって分かってるんなら、量控えめにして下さいって、いつも言ってるじゃないですか!!」

俺は、あの夢のように簡単に君を手放す気はないよ。

(でも)

君は―――?


―――ガタッ

「…えっ??ちょっ…銀さ―――」
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