ORIGI

□拭いきれないナミダ
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「今日から諸君達と一緒に、戦場へ出る為の訓練を受ける、浅野莉那少尉だ」
彼女を見た瞬間。
素直に綺麗だと思った。
もしかすると、コレが一目惚れと言うものなのかもしれない。



【拭いきれないナミダ】



栗色の長い髪。輝かしい瞳。真っ直ぐな背筋。白くて細い体。
隊長から紹介されている姿は、いかにも堂々としていて、綺麗で…。
俺の目には、まさに天使が空から舞い降りたように見えた。
「そうだな、彼女の指導係は…上條中尉!君だ」
「え…?俺ですか?」
いきなり名前を呼ばれ、俺は驚き半分、嬉しさ半分で戸惑った。上條孝彰とは、俺の事だ。
「そうだ。お前は成績もトップクラスだし、安心して任せられるだろう」
「…はい。了解いたしました、隊長」

「よろしくお願いします。上條中尉」
「こちらこそよろしく。えー…っと、浅野…少尉」
俺は、隊長から渡された、彼女の今までの成績の資料に目を通して、驚いた。
「君は…軍に所属して、まだ半年も経っていないのか?」
「はい」
普通、俺達が今世属している、“アディス”に入るには、一歩手前の“キサカ”で、それなりの訓練を受けてくる。簡単に言えば、戦場での戦い方の基礎、武器の使い方などを学んでくる。
そして、月に一度“アディス”に上がるための試験が行われ、試験官に認められた者だけが、少尉という階級を与えられ、“アディス”にやって来る事が出来るのだ。
今までの経験からして、軍に所属してからここまで上がって来るのには、少なくとも一年はかかる。
俺だってそうだ。一年目の試験で、やっと少尉の階級を与えられた。
それにもかかわらず彼女は、たった5ヶ月で…――。
しかも、女で。
彼女には、元から実力があったのか、それとも、相当の努力をしたのか。
まぁ、そんな事はどうでもいい。
ぼさっとしていると、そのうち彼女に追い越されてしまう。
そんな事になったら、指導係として、男として恰好が付かなくなる。
今更ながらにして思ったのだが、本当に俺が彼女の指導係でいいのか?
そんな事を考えていると、ふと彼女の視線が自分に注がれている事に気付いた。
「…どうした?何か質問でも?」
そういうと、彼女はハッと我に返ったようになり、「いえ、何でもありません」と、答えた。
「…そうだな、―…指導係と言っても、資料を見るからに、君は成績も実績もいいし、今のところコレと言って教える事は無いが、とりあえず軍の活動時間内はほぼ共に行動してもらう事になるが、いいか?」
「はい。分かりました」
「それと、何か分からないことがあったら、遠慮なくすぐに聞く事。後は…まぁ、その時の状況になったら教えていくよ」
「はい。よろしくお願いします」
…――こうして、俺と彼女の時が刻み始めたんだ。
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