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□大好きなひと
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上手に言葉に出来ない俺だけど。
少しずつ、変わっていけたらいいと思う。

君の隣で。




【大好きなひと】




「なぁー獄寺ぁ…」
子供が駄々をこねるように、山本は目の前の人物に向かって言った。
「――ぁんだよ。俺は今忙しいんだよ」
獄寺は山本を見向きもしないで、学校から出された課題をテキパキと進める。
「いっこ聞いてもいーか?」
「だから何だよ」
イラつきながらも、獄寺は答える。
「俺のこと、好き?」
「はぁ!?」
予想外の質問に、獄寺は思わず顔をあげた。
「だってさぁ、もう半年近く付き合ってんのに、一回も好きだって言ってくれねぇじゃん」
俺は毎日言ってるのに、と顔を膨らまして見せる山本に、獄寺はため息を吐く。
「なぁ、好き??」
「…嫌いだったら半年も付き合ってねぇよ」
獄寺は少し顔を赤らめて、課題に戻った。
「ちーがーうー!!俺は、好きだってはっきり言って欲しいんだってばっ!!」
「あ゛ーもぅうっせぇなぁ。テメェも少し課題やったらどうなんだよっ」
そもそも、今日の目的はそれの筈だ。
「…じゃ、俺も獄寺に好きだって言ってやんねぇ!!」
「…勝手にしろっ」
少々戸惑いを感じながらも、獄寺は課題に集中した。
「…浮気するかもよ?」
「出来るもんならやってみろ」
もはや山本の言葉は、獄寺に届かなかった。
「…っ」
山本は完全に拗ねてしまい、怒ったようにピリピリとした空気を漂わせる。
「………」
そんな山本から伝わる無言の空気に耐えられなくなり、獄寺は呆れたように言う。
「別にキレる程度のもんじゃねぇだろ??」
「キレるね。完全にキレるね」
山本は獄寺と目を合わす事無く返事を返す。
いつもうるさいだけあって、急に静かになると不気味なものがある。
「…わぁーった!!言うよ!!言えばいいんだろ!?」
「ダーメ。もう遅い」
まるで本当の子供のように拗ねた山本は、代わりに先程とは別の要求を突き付けてきた。
「俺のドコが好きか言って」
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