ORIGI

□Catastrophic Love Story 前編
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七緒は突っ立っていてもしょうがないので、パーティー会場とは別の、休憩室へと足を運んだ。
ソファーが並べられているその部屋は、いつも休憩室として利用されているわけではなく、今回のパーティーの為に用意された部屋だった。
(慣れないことすると気疲れするなぁ)
上品なドレス、慣れない料理、疲れるだけの会話、絶やすことのない笑顔。
七緒は知らず知らずのうちに、ため息をつきながらソファーに腰を下ろしていた。
すると、隣から自分に向かって話しかけられてきた。
「こんばんは」
隣に目を向けると、自分と同い年くらいの女性が座っていた。
ゆるくウェーブのかかった柔らかそうな髪に、上品そうな顔立ち。着飾るドレスからして、どこかの資本家の娘と言ったところだろうか。
「…こんばんは」
七緒が多少戸惑いながら挨拶を返すと、女はにっこりと微笑んだ。
「私、兄についてココに来たんですけど、なんだか難しい話ばかりで…もしよかったら、話し相手になってもらえませんか?」
女はおっとりとした雰囲気を纏わり憑かせ、どこか柔らかい印象を与えた。
「…いいですよ。あたしも丁度暇してたところですし」
七緒はこのパーティーに来てから、水也にしか頼るあてがなかったので、友達が出来たようで嬉しかった。
「お名前は?私は由梨。工藤由梨といいます」
彼女にぴったりの名前だと思った。彼女のイメージは名前から連想する花の名そのままだ。
「佐藤七緒。由梨さんは、トシいくつなんですか?」
「19ですよ」
「あたしも19!!じゃ、お互い敬語使わなくていいよね」
「‥そうね」
誰とでもすぐに打ち解けられる七緒は、持ち前の明るさで由梨ともすぐに仲良くなった。
「え?じゃぁ由梨さんは幼稚園の頃からずっと女子高だったの!?」
「ええ。エスカレーター式の学校だったから…私、男の人とまったく面識がなくて…。男性で話せるのは、身内しかいないの」
さっぱりした性格故、男友達も多い七緒にとって、由梨の過去はとても新鮮なものだった。
「えー。でももったいないよね。由梨さんこんなにキレイで可愛いのに…絶対モテるよ」
由梨のその容姿は、そこらの芸能人と負けず劣っていない。
「私はそんな…!!七緒さんこそ、とても可愛らしい方よ」
頬を赤らめて照れる仕草は、計算ではなくもっぱらの素なのだろう。そこがまた由梨の魅力を引き立てる。
「あたしは全然駄目!性格こんなだしさ。由梨さんみたいにおとなしい性格だったら、もう少し可愛く見えたかもね」
兄を三人持つ七緒は、小さい頃から兄たちとつるんできたせいか、この年になっても尚、どこか男っぽいところがあった。
「…七緒さんは、彼氏とか…いるの?」
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