ORIGI

□Catastrophic Love Story 前編
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「うん。…ちょっと恥ずかしいけど、大学出たら結婚するんだ」
七緒は、はにかんで由梨に結婚指輪を見せた。
「これが、あたしの宝物」
左手の薬指に光るそれを見て、七緒は無意識のうちに幸せそうに微笑んでいた。
「…七緒さんと結婚できる人は、うらやましいわね。こんな可愛い奥さんを持つことが出来て」
「そんな…っ可愛いだなんて…!」
「フフッ」
七緒が思わず赤面して否定していると、スーツ姿に身を包んだ若い男が現れた。
「由梨!そろそろ行くぞ」
「あ、お兄ちゃん」
由梨の兄は、見た目からして少し由梨とはトシが離れているようだ。
「七緒さん、こちらが私の兄の望です。お兄ちゃん、こちらは佐藤七緒さん。今話し相手になってもらっていたの」
由梨は交互に紹介をした。
七緒と望は、互いに軽く会釈をする。
「うちの妹がお世話になりました。…さ、由梨」
望も、男にしてはキレイな顔立ちをしている。
兄妹(きょうだい)で並ぶと、美男美女だ。
そのうえ、このパーティーに出席していると言うことは、なかなかの家柄なのだろう。
望のほうは少し無愛想で分からないが、由梨にいたっては内面もお嬢様だ。こういう人のことを世間では完璧というのだろうか。
「じゃぁ七緒さん、またどこかで会えるといいわね」
「…うん。きっと、会えるよ。あたしたち友達でしょ?」
七緒の言葉に、由梨は嬉しそうにして頷いた。

由梨が去ってしばらくすると、水也が帰ってきた。
「遅い!!」
由梨と話をしていたので、言うほど暇を持て余してはいなかったが、これだけ頬って置かれて文句の一つも言わないのは癪(しゃく)だと思ったので、七緒はわざとしかめっ面をして見せた。
「ごめん、話が長引いてさ。でも、今日はこれで終わりだから。送ってくよ」
「え?でもあたし何もしてないよ??」
七緒が今日パーティーに来てしたことといえば、水也の父に挨拶をしたくらいだ。後の時間は、水也と料理を食べたり、由梨と話をしただけだった。
「いいんだよ、七緒は。今日の表向きは父さんの誕生会だし。俺の用事も済んだから」
「そうなの?」
「次に七緒が出席するパーティーは、俺たちの婚約披露パーティーくらいだと思うよ。その時はもっと忙しくなるだろうけど」
水也はスーツを脱いで、ネクタイを外した。
「じゃ、行こうか」
「うん!」
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