ORIGI

□Catastrophic Love Story 後編
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水也との電話を切って、どれくらいの時間が経ったのだろう。
気が付くと、日が落ちていて、あたりはカップルで賑わっていた。
「18時…やだ…もうそんなになってたんだ…」
七緒は覚束無い足取りで、ゆっくりと歩き出した。
向かうあてもなく、ただ歩いた。
そのうちに、空からひらひらと白いものが降ってきた。
(…雪…?)
七緒は降ってきたそれに手を伸ばした。
雪は七緒の手のひらに落ちると、一瞬のうちに熱で溶けてしまった。
それがまるで、自分たちの恋の終わりのような気がした。
(…こんなあっさり…終わっちゃうもんなんだ…)
水也と過ごした数年。結婚の約束。愛し合った日々。
(もう、終わったんだ)
頭が真っ白で、それ以外何も考えられない。
終わったんだ。全部。何もかも。
不思議と、涙は出なかった。


「七緒ー?お前何やってんだよ。今日バイト入ってるだろ?」
年明け、同じ時間帯でバイトを入れたはずの七緒の姿が見られず、忘れているのかと思い客が入っていない隙に電話をかけた。
《あー…そうだっけ?ごめん、忘れてた》
案の定、予想していた答えが返ってきてため息をつく。
「おまえなぁ。いくらバイトの冬休み明けだからっていって」
《あー…ごめん、今日休むね。店長に適当に言っといて》
「え?おい、ちょっ…」
ものの数秒で切られた電話を見つめ、智樹は妙な違和感を感じた。
去年最後に七緒と顔をあわせたのは、クリスマスの前日だ。あれ以来、七緒と連絡を取っていなかった。
お互いバイトで冬休みをもらい、学校もないので、顔をあわせる機会が無かったのだ。
(風邪でも引いたのか?)
それならそうと言うだろう。理由も言わずに休むのは、それなりのわけでもあるのだろうか。
(もしかして――…)


「由梨、初詣行こうか?」
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