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□ずっと大切にしてきた幼なじみ
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俺が壊した。
俺がキラをココまで追い詰めたんだ。
俺がキラの笑顔を奪った。
俺がキラを泣かせた。
俺が、全部…――――。
なのに今更、キラに何を求めるって言うんだ?
こうなることは、初めから分かっていた事じゃないのか?
もう、今までのように、生ぬるい幼なじみを演じることなんて、出来なくなること…。
もう二度と、戻れないこと…。
はじめから、全部分かっていて、俺がやったことじゃないか。
そう。これは、俺の罪だ。
俺の犯した、人生最大の罪。
俺は、自分の手で、世界一大事なものを失ったんだ。
「……キラ…」
「あ…ぃや…あ、あぁあ…」
「…ごめん、な」
他に言葉が見つからなかった。
今俺が何を言っても、きっとそれは言い訳としてしかキラの耳には届かないだろうから…――。
その時、誰もいないはずの家に、足音がした。
足音はゆっくりと、部屋に近づいて来る。
(まさか、おばさんが帰ってきたのか…!?)
今の状況を見られるのはまずい。
とにかく俺は、真っ裸のキラに服を投げ、ドアの鍵を閉めようと、手を伸ばした瞬間、ガチャリとドアが開いた。
(しまった…――!!)
俺は反射的に、目を瞑った。
しかし、聞こえてきた声はおばさんとは似ても似つかない声で。
「キラ先輩?何回ベル鳴らしても出てこないから、勝手に上がっちゃいましたよー…?」
ドアの向こうから姿を現したのは、後輩のシンだった。
「シ…ン?」
おばさんに見つかるよりはまだマシだったが、見つかってしまったことに、かわりは無い。
「あれ?アスラン先輩、そんな格好で何して……――まさかっ!!」
部屋を一通り見回して、状況を把握したらしいシンは、直ぐ様キラの元へと駆け寄った。
「キラ先輩、大丈夫ですか?」
「…ァ、っ…シ…ン?」
「っ…―――」
シンは、キラを優しく抱きしめた。
キラも、あれだけ拒絶した俺とは違い、シンには心を許した様子だった。
(あぁ…そうか)
シンは、自分の着ていた上着をキラに着せると、鋭い目つきで俺を射るように睨んだ。
(誰かにいつか、キラを奪われるんじゃない)
俺は、自分の愚かさに、笑った。
(すでに、奪われた後だったんだ…――)
「…あんたが…あんたがキラ先輩をこんなにしたんだ…!!」
シンの言葉が、痛いほど胸に突き刺さる。
「あんたに、キラ先輩をこんなにボロボロに傷つける権利があるのかよ!?」
シンは俺の胸座を掴んで壁に押し付け、涙目で言った。
「あんたに裏切られて、今キラ先輩がどんな気持ちでいるか…っ!!そこまで考えてんのかよっ!!」
「…キラ…が?」
「まさか、自分のことしか考えてないわけじゃないよな…?自分だけが傷ついてるって…そう思ってるんじゃないよな!?えぇ!?」
「……っ」
目線をキラに向けると、キラの瞳からは、涙が途切れることなく出ていた。
「今一番傷ついてんのは、あんたじゃない!!キラ先輩なんだよっ!!」
「―――!!」
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