魔法少女リリカルなのは〜不屈の心と鋼の後継〜

□〜僕は非常識〜
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ジュエルシードの発動に気がついたユーノは、なのはとキリランシェロとともに現場に向かう。そこに現れたのは案の定―――
「フェイト・・・ちゃん」
金髪の少女、フェイトと彼女の使い魔アルフだった―――



なのはとフェイトは空中で、アルフとキリランシェロは地上で干戈を合わせる。
「ディバインシューター・・・シュート!」
キリランシェロとユーノの特訓で動きがよくなったなのはが性能を上げたディバインシューターで機動力が高いフェイトと互角の戦いを繰り広げる。
「我は放つ光の白刃!」
「チッ!」
地上ではキリランシェロとアルフが戦いを繰り広げていたが、こちらはキリランシェロが優勢だった。
(くっそ・・・)
アルフは舌を巻いていた。敵の思わぬ実力に。
(こいつはいったい何者なんだい?デバイスを使わずに強力な魔術を使うなんて・・・あたしは終ぞ聞いた事がないよ!)
あの白いチビ同様、接近戦が苦手な遠距離戦が得意な魔導師かと思って接近戦を幾度か仕掛けたが、なんとこっちのヤツは接近戦が大得意。
(全力で挑まないと・・・倒れるのはあたしだ)


ジュエルシードを2人で同時に封印したフェイトとなのは。2人は空中で無言で向き合っていた。
地上ではキリランシェロとアルフが戦闘を繰り広げている。どうやらキリランシェロが優勢なようだ。
「この前は自己紹介ができなかったけど、私、高町なのは!私立聖祥大付属小学校の3年生!」
なのはは以前の戦いで出来なかった自己紹介を始めた。彼女に自分の気持ちを伝える第一歩だと、前々から考えていた事だった。

話しあうだけでは確かに何も変わらないかもしれない。

でも、話し合わないと分からない事がある―――!

「私がジュエルシードを集めるのは、それがユーノ君の探し物だから!ジュエルシードはユーノ君が見つけてそれを元通りに集めなおさなくちゃいけないから!私はそのお手伝いで・・・だけど!ジュエルシードが危険な事がわかって、今は自分の意思で集めてる!自分たちの町や大切な人たちが巻き込まれたりしたら私は嫌だから!それが私がジュエルシードを集めている理由!」
「・・・私は・・・」
なのはの裏表のない真摯な想いに何か心を動かされるものがあったのか、フェイトも小さく口を開いて―――
「フェイト!答えなくていい!」
「!」
地上で戦いを繰り広げていたアルフがキリランシェロを突き離して戦闘を止めて、主に忠告する。
「あたし達の目的はジュエルシードの確保だよ!」
その言葉にフェイトはハッと立ち直り、ジュエルシードを確保するべく空を飛翔する。なのはも奪われまいと空を駆ける。
そして、2人の杖が同時にジュエルシードを捕らえた瞬間―――
「うっ!?」
「きゃあっ!?」
閃光と衝撃が結界内を走り、2人を空高く吹き飛ばした―――



アルフを叩きのめし、地に這わせたキリランシェロは空を見上げて絶句した。フェイトとなのはが宙を舞っている―――ぐったりとした様子で。
≪キリランシェロ!このままじゃ2人が!≫
「わかってる!」
2人に代わってジュエルシードの封印に向かったユーノの忠告に叫び返し、キリランシェロは構成を編んで両手を広げて叫んだ。
「我が腕(かいな)に入れよ子ら!」
重力減衰の魔術が発動し、宙を舞っていた2人の少女がキリランシェロの腕に収まる。2人とも気絶しているだけの様だ。
「フェイトを・・・どうするつもりだい・・・!」
地に伏せるアルフが犬歯を剥き出しにして威嚇する。地に伏していながら、彼女の闘気は凄まじい。キリランシェロの肩に乗っているユーノが思わず彼の背後に隠れたほどだ。そして、同時にこうも思った。
(キリランシェロは、どうするんだろう)



フェイトside
(んっ・・・)
なんだろう?誰かの腕に抱かれてる?
アルフ・・・にしては腕がたくましい。お母さん・・・?いや、『時の庭園』にいるお母さんがここまで来るだろうか?
知らない人の腕なのに、なんでこんなに落ち着くんだろう・・・?



「別に」
キリランシェロは2人を抱えたまま器用に肩をすくめた。
「別に・・・だって?」
思いがけぬ答えに立ちこめていた闘気がゴソッと抜けた様子で、目が点になるアルフ。彼は着ていたジャケットを脱いでフェイトに掛け、静かに横たわらせた。
「なのはが君らに何の危害も与えるつもりはないんだし、僕も君らをどうこうしようと思ってないから。早く帰ってこの子の傷を癒してあげなよ」
ユーノに帰る旨を告げ、なのはを抱きかかえて歩きだし―――
「―――とまぁ、『塔』の魔術士はこんな事を言うんだけど」
ピタリと足を止め、アルフに向き直る。
「僕の友人から言わせれば、僕は非常識だから―――」
「わっ!な、なにするんだい!?」
キリランシェロは「よいしょ」とアルフを背負い、フェイトを抱えなおした。
「なにって、あんたらどうやって帰るのさ?この子は気絶してるし、あんたは僕がKOしちゃったから僕が送るしかないでしょ。だから暴れないでよね」
「家どこ?」とマイペースに尋ねるキリランシェロにアルフは呆れたように溜息をもらし、彼の背で指図を開始した。

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