魔法少女リリカルなのは〜不屈の心と鋼の後継〜

□プロローグ
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牙の塔でも最高の生徒が集うと言われる大陸最強の黒魔術士、チャイルドマン教師が受け持つ『チャイルドマン教室』。その教室の7人の生徒の中で鋼の後継―――サクセサー・オブ・レザーエッジと呼ばれる少年、キリランシェロの姿はとある遺跡の中にあった。天人(ノルニル)の残した遺跡の調査を『塔』上層部―――長老(エルダー)達に命じられ訪れたのだが―――
(とはいっても)
自分以外は誰もいない無音の世界。その世界の中でキリランシェロは心の中でぼやく。
(あらかた掘り尽くされた遺跡に新しい発見が早々あると思えないけどなぁ・・・)
しかしキリランシェロが調査している天人種族の残した遺跡には彼女らの魔術―――魔術文字(ウィルドグラフ)を媒体とする沈黙魔術が何かの拍子に発動して未侵入の小部屋にたどりつき、新たに天人の遺産を発見、なんていう展開が無きにしも非ずという訳で、牙の塔及び大陸魔術師同盟(ダムズルズ・オリザンズ)は所属する魔術士に定期的に調査を命じており、今回はキリランシェロだったという訳だ。キリランシェロは『塔』指定の黒一色の戦闘服に身を固め、首からは剣に絡みついた一歩足のドラゴンの紋章―――牙の塔の上級魔術士たるペンダントを首から下げた姿だ。
キリランシェロが歩いている遺跡は10年ほど前に発掘を終了した遺跡で、彼の教室の仲間も何度か調査に入った事があったがなしのつぶてであった。
(ま、さっさと終わらせて帰ろう)
キリランシェロは傍らに魔術で呼び出した鬼火を浮かばせて歩を進める。遺跡の奥へと。


一時間ほど歩いただろうか、そろそろ遺跡を半周したぐらいになってキリランシェロは壁に横穴が空いているのに気がついた。鬼火を先行させると、どうやら地下につながっているらしい。降りて調査してみることにしたキリランシェロだが階段などといった下りるための足場は無く、穴が広がっているだけ。
「我は駆ける天の銀嶺」
重力制御の魔術を行使して宙に浮かび、ゆっくりと降下していく。一分程度たってから足が地面に着いた。
鬼火を呼びだし、自身の横に浮かべて慎重に歩みを進める。こういった天人種族の遺跡には彼女らが刻んだウィルドグラフ―――文字を媒体とする天人種族、ウィールド・ドラゴンとも呼ばれる彼女らが行使する沈黙魔術の罠があってもおかしくないからだ。いつどのような罠に出くわしてもいいように防御の魔術を構成しながら歩みを進める。幸いにも罠には一回も出くわす事もなく最終目的地であるらしい小部屋にたどりついた。
「何もない部屋だな・・・ん?」
肩を落として踵を返そうとしたキリランシェロだったが、ほこりや砂に覆われた床になにやら刻み込まれているのに気がついた。
「ウィルドグラフか・・・?」
だとするとうかつに触るのは危険。刻み込まれたウィルドグラフの起動は実は誰にでもできる。文字をなぞればいいだけだからだ。
しかし興味を持ったキリランシェロは「なぞらなければいいか」と判断し、革手袋に包まれた手でパタパタと土埃を払う。地面に刻まれたそれは沈黙魔術の文字とは違った不思議な紋様だった。
「変わった魔術文字だな・・・何の目的で刻まれた物なんだろう」
考えられるのは空間転移だが、こうして踏んでいる間もキリランシェロが転移されないという事は転移目的ではないようだ。
「こーゆーのはアザリーが詳しいんだろうけど・・・僕じゃ手に負えないから報告しに帰ろう」
地面に膝をついていたキリランシェロは立ち上がって膝に着いた土を払い、サークルから出ようとした。その時だった。
サークルから緑色の光が灯され、キリランシェロを閉じ込めたのは。
「なっ!?」
完全に緑色の筒に閉じ込められたキリランシェロは急激に気が遠くなり、目の前が真っ暗になり―――
キリランシェロはキエサルヒマ大陸から姿を消した。

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