魔法少女リリカルなのは〜不屈の心と鋼の後継〜

□キリランシェロと高町夫妻
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魔術文字(ウィルドグラフ)の陣が発する光に包まれて意識を失い、次に意識を取り戻した時に彼が身を預けていたのは見知らぬ民家のソファーだった。そして、彼はその家の主である高町夫妻から聞かされることになる。
ここは『日本』という国の海鳴という街であること。そして―――
彼ら夫妻はキリランシェロの住む『牙の塔』はおろか、『キエサルヒマ大陸』という名を聞いた事をないという事を。


「なるほど・・・信じがたい話だが・・・」
高町家の亭主・士郎は腕組みをして考え込んで結論付けた。
「キミは私たちが聞いた事も無いキエサルヒマ大陸というところの出身で、『牙の塔』という組織に属している・・・ということなんだね?」
「はい。そしてなぜここに来たのかも全くわかりませんし、もちろん帰る方法も検討が付きません」
キリランシェロは士郎の顔を見返して真剣に答える。狂人扱いされては色々と面倒な事になりそうだからだ。
「そして僕は―――魔術士です」
「魔術士?」
士郎の妻と紹介された女性・高町桃子がキリランシェロの発した単語に小首をかしげる。説明するよりやって見せた方がよかろうと思い、訝しげな表情の夫妻の前で魔術の構成を編み上げる。
キリランシェロ達の世界での『人間の』魔術士はひと括りにすると『音声魔術士』と呼ばれる。その名の通り音声、つまり声を媒体に魔術を行使するのだ。
「我は生む小さき精霊」
呪文とともに生み出された拳大の鬼火を見た夫妻は、ポカーンと口を開けて呆気にとられているようだった。
「・・・なるほど。キミが異世界の人間だという事は疑いようのないことのようだね」
士郎は許容範囲外の事態に頭を抱えてなにやら悩みこんでおり、桃子はなにやら考え込んだ末に口を開いた。
「キリランシェロ君、君はこれからどうするの?」
「うっ・・・?」
キリランシェロの所持品は戦闘服及び戦闘服に搭載されている各武装になけなしの銀・銅貨が入った財布。そして『牙の塔』の上級魔術士の証である銀で出来た一本足のドラゴンのペンダント。この世界で持っている硬貨が通用しない可能性が高く、無一文同然である。
答えに詰まったキリランシェロに、桃子は驚くべき提案をしてきた。
「行くあてがないなら、うちで働かない?もちろん、住み込みで」

「・・・へ?」

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