魔法少女リリカルなのは〜不屈の心と鋼の後継〜

□〜キリランシェロの誓い〜
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「さて、と・・・聞きたい事は色々あるけど、ともかくなのはちゃんは下がって。後は僕がやる」
コンコン、と爪先で地面を突いて戦闘へのボルテージを高めて行く。キリランシェロが睨み据える先には例の黒い影。熱衝撃波をぶち込んだせいか、何となく怒っているような気がする。
「なのはちゃん?」
さきほどからなのはは尻もちをついたまま動かない。彼女はその体勢のまま顔だけをこちらに向けて情けない声で告げた。
「腰が抜けて立てないの・・・」
『・・・へ?』
キリランシェロともう一つの少年の間が抜けた声をあげる。

グォォォォォォッ!

彼女の情けない声を合図に、黒い影は咆哮をあげて突進してくる。土煙を巻きたてて突進してくる黒い影は、今度こそなのはを切り裂かんと爪を振り上げて迫る。
「チッ―――!」
舌打ちを一つ残してキリランシェロもなのはのもとに駆けだす。走っている間に彼女を守る構成を編み上げる。
「我は紡ぐ光輪の鎧!」
黒い影がなのはのもとに辿り着く前に彼女のもとに到達したキリランシェロは、黒い影が振り上げた爪を防御の魔術を展開させて防ぐ。そして至近距離から―――
「我は放つ光の白刃!」


グォォォォォォッ!?


≪す、すごい・・・≫
熱衝撃波を叩きこみ、黒い影は沈黙した。


私の運命が変わった日の夜、『九死に一生』という諺を私は身をもって体験する事になったの。『ジュエルシード』の力が暴走した黒い影に襲われたユーノ君を助けて魔法少女になったあの日、未知の恐ろしさに腰を抜かした私を助けてくれたのは―――


いつの間にか気絶していたなのはを背負って、キリランシェロは高町家への帰路を進む。
「てゆーことは」
事情をすべて聞いたキリランシェロは半眼で自分の肩に乗っている小動物―――ユーノを睨む。
「この事態はほぼすべてあんたのせいなんだ?」
「・・・はい」
頭にたんこぶをこさえたユーノが涙目で首肯する。キリランシェロは溜息をついて月を見上げながらこれからの事を思う。
短い付き合いだが、彼は背負っている少女の事を少しは解っているつもりだ。絶対に物事を放り出さない少女だという事も。なのははユーノに最後まで協力するだろう。つまり、戦いの世界に身を投じるという事だ。
「ユーノ」
「は、はい」
ユーノは少し緊張のせいか、身体を固くしてこちらに向き直る。キリランシェロはそれを一瞥して続けた。
「なのははあんたの手伝いをしようとするだろう。でも、あの子は戦いにはまだ不慣れだ」
「そうですね・・・なのはの魔力は強大ですが、まだその魔力を手中におさめきれていない・・・」
ユーノの見る限りなのはの魔力は稀にみるほどに強大だが、彼女はまだそれを完全には制御できておらず、まさに宝の持ち腐れといったところだ。
「だから僕が彼女に制御法を教えろということですか?」
「そう。もちろん断ったりしないよね?」
もし断るなら・・・と言外に睨み付けると、ユーノはコクコクと首肯した。

「そう・・・そんな事が・・・」
キリランシェロが黒い影を打倒した翌日、なのはが学校に、ユーノがジュエルシード探索に出ている間にキリランシェロは桃子にすべてを伝えた。夫妻の方針で戦いとは距離を置かせていた末娘が戦いの場に身を投じる事になると知り、さすがに顔を曇らせる桃子。
「やめさせようとしても、あの子はなかなか頑固だから聞き入れないでしょうね・・・」
ちなみにユーノの事は伏せてある。ただのフェレットだという事にして飼育許可は得ているが。
「ですから―――」
キリランシェロは桃子の瞳を見据え、誓う。
「僕が彼女を守ります」

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