魔法少女リリカルなのは〜不屈の心と鋼の後継〜

□〜アリサとすずかの魔術士評〜
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「痛っ!」
夜も更けた海鳴市の公園。闇を駆け、ジュエルシードを封印したキリランシェロとなのは。いざ帰ろうとしたその矢先、なのはが転倒したのだ。
「どうしたの、なのは」
「な、なんでもないの」
しかし彼女は足首を押さえてとても痛そうにしている。どうやら先ほどの戦闘で足首を痛めたようだ。キリランシェロが彼女の足首を診てみると、少し腫れて赤くなっていた。
「痛そう・・・なのは、大丈夫?」
「うん、平気だよ」
同じく彼女の足首を覗き込んでいたユーノが心配そうになのはを見上げるが、当の本人は笑みを浮かべ、大丈夫だとアピール。
「平気じゃないでしょ、ほら」
「にゃっ!?」
額から脂汗を流しているのを見逃さないキリランシェロが彼女を抱え上げた。膝の裏に手を通し、背中に腕を添えて彼女を抱え上げる―――つまり、お姫様抱っこで。
真っ赤な顔のなのはを近くのベンチに下ろすと、彼は患部に手を当てて呟いた。
「―――我は癒す斜陽の傷痕」
キリランシェロが唱えると、なのはの足首の痛みがみるみる引いていく。
「わぁ、すごい!もう痛くないよ!」
「けど、あんまりしない方がいいんだけど」
目を輝かせるなのはに対して、キリランシェロは「あんまりしない方がいいんだけどね」と苦笑する。
「どうして?」
「他人(ひと)の身体は解らないからね。あまり使わない方がいいんだ」
「あ、『自分の身体は自分が一番よく解る』っていう奴?」
「まぁ・・・そういう事かな」
キリランシェロはユーノを摘み上げて肩に乗せ、なのはに向けて背を向けて屈みこんだ。
「なのは、乗りな」
「う、うん」
なのはがおずおずと負ぶさった事を確認して、キリランシェロは歩きだした。


「にゃぁぁぁ!寝坊した〜!」
翌朝。ジュエルシード探索で夜更かししてしまったなのはは、見事に寝坊してしまった。大慌てで鞄を背負い、バタバタと足音高く出て行った。
「あっ!なのは・・・もう」
桃子は朝食も食べずに出て行った末娘をため息交じりに見送り、彼女が弁当まで置いて行ってしまった事に気が付いた。このままではなのはがお腹をすかせてしまう。
「あ、そうだわ。キリランシェロ君、今日はお店お休みだったわよね・・・」
桃子の瞳が、何かを閃いたかのようにキラン、と輝いた。


「うう〜・・・」
苦手な国語の4時間目が終わり、いざお弁当!・・・といきたかったなのはだが、弁当を忘れた事に気が付いて、すっかり意気消沈していた。
「あははっ、いつもの寝坊の賜物ね」
「うう、ひどいよアリサちゃん〜・・・」
なのはの落ち込みようが可笑しいのか、腹を抱えて笑う金髪の親友のアリサ・バニングス。もう一人の親友である月村すずかは、親友(アリサ)にいじめられる親友(なのは)に苦笑しながら自分の弁当のおにぎりをなのはに与えようとした時―――
「なのは」
聞きなれぬ声とともに、見慣れぬ人物が彼女らのいる屋上に現れた。
(あ、カッコいい人・・・)
年齢はなのはの姉・美由希よりすこし下くらいの少年で、ズボン・半袖のシャツ、そして頭髪と瞳の色まで黒という黒づくめの恰好。そして彼の手には巾着袋。
「キリランシェロ君!」
まるで死人のように干からびていたなのはが、目を輝かせてバタバタと彼のもとに駆け寄っていった。
「ほら、お弁当。せっかく桃子さんが作ってくれたんだから、忘れるものじゃないよ」
「ありがとー!」
ポンポンと頭を軽く叩かれて照れ笑いをするなのは。その様は、まるで兄妹のようだった―――


「ねぇすずか」
その日の放課後、アリサはすずかと件の少年について語り合っていた。以前からその存在についてはなのはから聞かされて知ってはいたが、実物を見るのは初めてだった。
「あいつ・・・キリランシェロって言ったけ?どう思う?」
どう、というのはあの少年の人となりであろう。すずかは「うーん」と小首を傾げて唸り、自分の考えを披露した。
「・・・悪い、人ではないと思うよ」
ただ、ちょっと隠している事が多そうなだけで。

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