甲子園を目指す少年少女

□1年目4月@
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聖タチバナ学園高等部に野球部は存在しない。部員が9人に満たない為、野球同好会が細々と活動しているのみである。
現在、同好会には3年生が2人、2年生が2人いる。3年生はキャプテンを務める武井雄太(たけいゆうた)三塁手と村井貞雄(むらいさだお)一塁手。2年生はエースの太鼓望(たいこのぞむ)投手と松井友之(まついともゆき)外野手。これに新たに橘みずき・宇津久志(うつひさし)の両投手、片倉渚捕手、原啓太(はらけいた)内野手、大京均(だいきょうひとし)・矢部明雄両外野手が入部した。
宇津・原・大京の3人はみずきの野球仲間で、実力も中々のもの。宇津はコントロール、原は俊足、大京はパワーと、それぞれ魅力的な武器がある。
相談の結果、原はセカンド、大京はレフト、俊足の矢部がセンターを務めることになった。しかし、問題がひとつ浮上していた。その問題を口にしたのは、武井キャプテンである。
「人数はそろったけど、ショートがいないな」
人数は10人揃ったが、そのうち3人がピッチャー。内野の要・ショートが欠けているのであった。投手陣をコンバートさせる案も出たが、左投げのみずきは除外され、ずんぐり体系の太鼓は長いノックに耐えきるスタミナはあるものの、守備範囲の狭さがネックとなった。宇津は機敏なフィールディングは見せるものの、長いイニングを守れるスタミナに欠けており、ノックの球数が増えるごとに凡エラーが増えていった。
「誰か、部員を見つけなきゃね・・・」
「でも、そんな都合良くショートを守れる人なんて・・・」
昨年まで野球部すらなかったのだ。そんな都合よく内野の要を任せることのできる人が転がっているわけが―――





ともかく、ショートがいないとはいえ人数は揃っている。夏の大会に向けて聖タチバナ野球部は動き出した。
「・・・じー」
遠目からグラウンドを見つめる、一対の視線とともに・・・

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