短編/シリーズ
□It is ambiguous.
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私の後輩は変だ。
…どこが変かって?
趣味も大層変わっているが…そうだな…
例えば、その後輩が趣味である蛸壺掘りをしている時
「喜ー八郎」
穴を掘っていて、穴の中の深いところにいる後輩に声をかける。
しかし、声は返ってこない。
当たり前だ。
彼は蛸壺掘りを趣味としていて、掘っている最中は誰が呼びかけようと無視を決め込んでいるのだから。
それを知り得ていながら、私は再び声をかける。
「無視ー?傷ついちゃうなー」
別に、本当に傷ついているわけじゃない。
後輩はそれでも尚無視し続け、黙々と穴を掘っている。
「喜八郎ー」
どれだけ無視されようが、後輩の名を呼び続ける。
「喜八郎ー」
ついに折れたのか、喜八郎は私の方を向いた。
趣味を中断されたことに腹を立てているのか、その目は鋭く私を睨んでいる。
「苗字名前先輩。何か御用でも?」
やはりこの後輩は変だ。
嫌味のつもりなのか、私をフルネームで呼んで睨みつけ、いかにも不機嫌だと表情に出してくる。
普通の後輩なら、嫌そうにしながらも笑って返してくるし、フルネームで呼ばずに苗字か名前のどちらかで呼ぶ。
まず、一回声をかけるだけで返事をするだろう。
しかし、この目の前にいる後輩はそれをしない。
本当に変だ。
「あ、やっとこっち向いたー」
そう言いながら笑ってみせると、後輩はマヌケな面を私に見せた。
そんな顔をさせるようなことを私はしたのだろうか?
分からない。
後輩は変…否、とても不思議だ。
本当に、不思議な後輩だ。
It is ambiguous.
end
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久々に短編書いてみました。
綾部大好きです。
四年の中では一番好きですね。
今回の話は、恋する手前みたいなのを目指して書いたのですが、いかがだったでしょうか?
突発的に短時間で書いたので、所々変なところがあるかもしれませんが、大目に見てくださると嬉しいです。
ちなみに、英訳は「曖昧模糊」または「それは曖昧である」です。
ご閲覧ありがとうございました。
光夜