短編/シリーズ
□音で伝わる言葉
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utpr×ボカロ ボカロ主
「…名前。何やってるの」
藍が作られたラボの隅っこにいると、不意に藍に声をかけられた。
「…♪〜…」
「…なに?」
歌でしか感情を伝えられないボクは必死に伝えようと歌うけど、藍に伝わらない。
ううん、藍"には"伝わらないのだ。
「はぁ…君さ、博士に改造してもらったら?意思疎通ができなくて不便なんだけど」
「……」
藍の言葉が、金属で出来ているはずのボクの胸をちくりと刺す。
苦しい。
「〜♪♪…」
「もういいよ。君の気持ちは僕には分かりそうもないからね」
「……」
そう言ってボクに背を向け、藍はラボを出て行った。
苦しい。苦しい。
ナンデクルシイノ?
「…名前、悪く思わないでやってくれ。アイツもロボットだが、きみとは違う。心がまだ未完成なだけなんだ」
博士が、ボクの頭をポンポンと撫でながらそう言う。
ボクはすぐさま"気にしていない"という意味で首を横に振る。
「そう、名前が平気ならいいんだ。じゃ、僕はまだ仕事があるから。君も外に行ってみたらどうだい?気晴らしになるかどうかは分からないけどね」
そう言った博士に僕はコクリと頷き、ラボを後にした。