短編/シリーズ
□俺の本心
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俺には幼馴染が居る。
ちっさい頃からいつも一緒で、部屋も窓を挟んで隣同士なんて言う漫画みたいな感じで、お互いの部屋を行き来するときはいつも窓から。
加東秀吉。
今じゃ、鈴蘭って言う不良高校で狂犬って呼ばれている。
まぁ、秀吉がどうであれ、俺たちの関係は崩れることなどなかった。
「秀吉ー…って、居ねぇし」
今日も、勝手に窓から秀吉の部屋に入る。
目的とかは特になく、ただ単に暇つぶしだ。
「…居ないならつまんねぇじゃん…はぁ…」
ため息を吐きながら、秀吉のベッドにダイブする。
同時に香る秀吉の匂い。
タバコと酒、香水や石鹸の匂いがほのかに香る秀吉の匂いは結構好きだ。
「ん…ふ…」
秀吉の枕に顔をうずめながら、布団を抱きしめ、秀吉の匂いに包まれると、ひどく安心した。
…もっと包まれたいなんて思ってしまっていた。
ギシッ-
ベッドの軋む音に反射して、顔を枕から外しベッドから起き上がろうとするが、突然感じた腰への重みに再びベッドへと沈められた。
「っ…ひで、よし…」
顔をしかめて腰元を確認すると、何時の間に帰ってきていたのか、ニヤニヤと笑う秀吉が俺の体にまたがっていた。
「よぉ、人の部屋の人のベッドにうもれて、お前は何してんだ?」
「っ、なんでもねぇ!どけよ!」
まさか、秀吉の匂いを嗅いで、安心してたとか、もっと包まれたいとか思ったなんて言えるはずもなく、俺は暴れた。
「名前…言わなきゃ離さねぇぜ?」
「っ!」
わざと耳元で囁く秀吉の息に、体がびくりと反応する。
「なぁ?名前ちゃんよぉ…?」
「ッ言うから!!やめろ!!…あ」
「ほぉ、じゃ、早く言って貰おうか?」
俺の腰からは降りずに言う秀吉に、若干の苛立ちを感じながらも、墓穴を掘った自分を憎んだ。