短編/シリーズ
□It is ambiguous.
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【綾部SIDE】
僕の先輩は変だ。
どこが変か?
…例えば…
僕が蛸壺のターコちゃんを作っている時。
「喜ー八郎ー」
と、頭上から声をかけてくる。
僕は他の皆も知っている通り、蛸壺以外に興味ないから、当然無視した。
「無視ー?傷ついちゃうなー」
こんな言葉も無視。
僕はターコちゃんを作るので忙しいのだから話しかけないでほしいとか思いながら穴を掘り続ける。
「喜八郎ー」
それでも声をかけてくる先輩。
普通の人なら、黙って去っていくか、悪態をつきながら去っていく。
この時点で残っているのは相当変だ。
「喜八郎ー」
尚も呼び続ける先輩に、最終的に僕が折れる。
「苗字名前先輩。僕に何か御用でも?」
それでも不機嫌なのには変わらないからしっかりと睨みつけて。
なのに、先輩はにへら、と笑うのだ。
「あ、やっとこっち向いたー」
この人には嫌味も通じないのか。
先輩の笑顔に、思わず呆気にとられてしまう。
そして、今自分が感じていた思いさえ、どうでもいいと思えてしまうのだ。
本当に先輩は変だ。
普通の人とは違う行動をして、人の怒りを吸い取ってしまう。
先輩は本当に、変だ。
【綾部SIDE end】