短編
□素直になれますか?
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午後。学校の教室に一日の授業を終える合図が鳴り響く。
チャイムが鳴り、先生が終わりにすると言った途端、ほとんど人が背伸びをして疲れを見せた。
いくら疲れがあろうともお決まりの挨拶がなければ終わらず
気をつけ、礼
と号令がかかる。
ありがとうございました、とクラス一斉に言いながら礼。
着席の号令は出なかった。
号令が終わると、すぐに帰る人や机に伏せている人。友達のところに行って話を楽しむ人など、様々な行動パターンがあった。
僕も例外ではなかったりする。
授業が終わると、毎回向こうからいつもの人が来る。
黒いショートヘアを微かに揺らし、綺麗な黒い瞳でこちらを見て笑い、手を振りながら僕の名前を呼ぶ。
「むっくろー!!」
そして、
また君は僕のところに来る。
「桜ですか。今日はどうしましたか?」
僕がそう尋ねると、桜は恥ずかしがる様子もなく、
「骸との愛を確かめに来た!!」
と満面の笑みで言った。
これはいつものこと。今日始まったわけではない。
でも僕はまだこの言葉に慣れないみたいで、ほんの数秒口をパクパクとさせる。燃えるように顔が熱くなるのは1秒よりも早いだろう。
そんな僕の反応を見ていつも面白がっている桜。
言い返したいのだが、どうも上手く言葉が見つからない。
「笑わないでください。僕は…はっ……恥ずかしくないですから勘違いしないでください」
結局、いつも苦し紛れの言い訳をする。
恥ずかしくないだなんてもちろん嘘。
あんなセリフを言われて恥ずかしくならないわけがない。
一応一人の男として、恥ずかしいとは口から出さないようにしている。
無駄なこととは知っているが。
「骸照れてないのー?」
全部わかっているかのようにニヤニヤと笑って僕に聞いた。
……ほら、君は全部知っている