短編

□私の彼氏はドS系
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キーンコーンカーンコーンという鐘の音とともに一日の授業は終わった。

今日はなんだか疲れたなと両手を上にあげて一伸びした。
なんでこんなに疲れたのだろうと考えてみる。
一時限目が体育でその次が数学で…
その次が理科だったから…?かもしれない。
どうりで理数系が苦手な私が疲れるわけだ。



今日はお風呂入ってゆっくりしようなんて考えながら、
ダラダラとバッグに教科書やその他の教材を詰めているところだった。

突然、教室にいた女子が窓の外をみて黄色い叫び声を上げた。
そのほかのクラスの皆(男子も女子)も野次馬となって窓の外を見る。

またもや他の女子も続けてキャーキャー騒ぎ出した。

「見てみて!あの人超かっこいいんだけど!」

「ほんとだー!!やばい!」

「っていうかあの服確か警察関係の…なんだったっけ?」

なんだそれ
なんなんだ一体

外に何かいるのか?芸能人か誰かか?
にしても服がどうのって言ってるな…

すると外を見ていた面食いの友達が此方に寄って来た。

「名前も見てみなよ!ほんとかっこいいから!」

と言われ、
私は友達に手をひかれながら野次馬の1人になって外を見た。


『………あ』


その人物を見た瞬間、私は動きが止まった。
同時に、約束事をすっかり忘れていたことに気がつく。
やっば!!どうしよう!なんで忘れてたんだろう
さっきまで覚えてたのに!

窓の外の彼はおもむろにケータイを取り出し、
電話をかけ始めた。

「ちょっと!イケメンがケータイ取り出して電話してる!
もしかして…この学校に彼女がいるとか!?」

「なにそれー!なんか少女漫画みたい!」

するとそれと同時にスカートのポッケに入れてたケータイが鳴った。

…というかクラス全員が私を見る視線が怖い。
全く同じタイミングだもんね。
何も良い言い分けが見つからず、恐る恐る通話ボタンを押した。


〈…おい。待ち合わせは16時だって昨日あれほど言ったよな?〉


『…は、はい…』


〈1分やる。それまでに外に出てこい〉


『1分!?無理だよそんなここ4階〈4階だろうがなんだろうが関係ねえよ。それより1分越したら…どうなるかわかってんだろうな?〉

…ケータイ越しに彼の不敵な笑みが見えたような気がした。

『今行くから!ほんとごめ〈いーち、にー、さーん〉ちょ、ちょっとまって!もう始まってんの!!?一回止まって!〈よーん、ごー〉ぎゃああああ!!』

どうやらヤツの悪魔のようなカウントは止まる気配もなく、
私は真っ青な顔になりながら自分の机にあるバッグを持った。


「なになに、名前、あのイケメンと知り合い!!?」


「ちょっと!、あの彼とどういう関係なの!!?教えてよー!」

クラスの女子が口々に窓の外の彼との関係を聞いてくるが今はそんなことを気にしている場合ではない。

―そう、これは私の生死に関わるのである。
1分後には私の人生の幕が下りてしまうかもしれないのです。


「名前−!!この私を差し置いてイケメンと付き合ってるなんて…!許さないからねー!!」

そんな恐ろしい友達の怒り声を背にダッシュで
生徒玄関まで向かった。





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ゼエーハアーという女っ気のない呼吸をしながらなんとか転ばずにヤツのいる校門前までやって来た。
彼はすこぶる機嫌の悪い顔をなさっていた。

目の前の彼は東京法務局戸籍課第四文室、
通称、セプター4という組織に入っておられる
伏見猿比古様であらせられます。

猿比古は彼らがいつも身につけている青い制服を着ていた。
どうやら巡察中のようだ。

っていうか、
その服すごい目立つんだよね!

休みの日なんか、
いつも忙しい彼が巡察の合間を縫って一緒に出かけてくれるのはありがたいが
その制服を着ているおかげで周りからは変な目で見られる。
まあ、しょうがないんで割り切ってはいる。
彼の上司も少しぐらいは休みをくれてやってもいいのではないだろうか。



…ハッ!!
そういえば!



肝心の時間であるが、
1分は…多分過ぎてないはず!
カミサマどうか…どうか私を見捨てないでください
このわたくしを目の前の悪魔からお救いくださいませ…

するとヤツはまたもや?不敵な笑みを浮かべて言った。

「残念だな。5秒の遅れだ」


『なんだとおおおお!!?』

体制を崩した私は、膝から地面へと崩れ落ち、


『ああ…カミサマ…なぜわたくしをお見捨てになったのですか…』

そう言って両手を組み、天を仰いだ。


「なに訳わかんねえ事言ってんだ。行くぞ」


『猿比古がいきなりカウントし始めたから遅れたんだよ!』


「ごちゃごちゃうるせー。遅刻は遅刻だ」


彼は私の手を強引につかんで歩き出す。

『ちょっ…どこいくの!?』


「俺の家」


『な、なんで!??』


猿比古はニヤリとしながら、言った。


「"お仕置き"、せいぜい楽しみにしとけよ」



そして、私の悲鳴だけが木霊した。









(―ああ、私はこの人から一生逃げられない)

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