Heart Beat

□今日からお世話になります
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―学校の鐘の音が聞こえる

9月。夏の暑さがまだ残る時期。
あたしは今日からこの、目の前にある帝光中学校に通う。
なんでも、超マンモス校らしい。
まあこんだけでかけりゃそうだろうな。
思わず校門前で足を止めてしまった。

…とはいってもあたしは今、実質中学一年生にあたる年齢だ。
なぜこんな時期に転校なのかは深いワケがある。
それはあとでわかるだろう。
とりあえず職員玄関の脇にあるインターホンを押し、教員を呼んだ。



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「君が今日から通う吉谷柚樹さんだね?私は君の担任の佐藤だ、よろしく」

『よろしくお願いします。
…すみません、叔母は今日仕事で来られないので、私1人で来ました』

「ああ、それは電話で聞いてあるから大丈夫だよ。
それと、ここの学校についての資料や教科書等は確認済みかね?」


『大丈夫です。時間割も把握してます』

すると担任の佐藤は少し笑って「それならよかった」と言った。

「では、あと5分で朝のホームルームがあるから着いてきなさい。」

そう言って席を立つと、私は鞄を持って彼の後をついて行った。







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階段を上がっていくとだんだんと生徒の話し声や騒いでいる声が聞こえてきた。
どうやら教室は3階にあるらしい。
結構登らないといけないな。階段。
廊下では窓際で話す女子や、
ふざけながら走り回る男子達がいた。

「こら、廊下を走るんじゃない。誰かとぶつかったりしたらどうする」

それに驚いた男子達は走るのをやめた

「すんませーん。って、え、先生転校生ってもしかしてコイツ?」

男子二人組はあたしに気づいたのか担任に尋ねる。

「ああ、そうだよ。まあ、お前たちのクラスではないがな」

「まじかよー!(でも超キレー!)」

「噂では聞いてたけどほんとだったんだ!(かわいいのが!)」

「いいから早く教室に戻りなさい」

「「はーい」」

担任は男子達の横を通ると教室がある方向へ歩いて行った。
っていうか、男子2人が気づいたせいで
廊下にいる全員がこっち見てるんだけど。
頼むから見ないでくれないか。
注目されるのは好きじゃない。

すると担任が教室の前で立ち止まり、言った。


「ここが君が入る教室だ。さ、入って」

あたしは躊躇わず教室内へと入った。



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教室の中へ入るとクラス中が騒ぎ出した。


…一体何なんだろうこれは。

教室内を見渡せば
皆驚いているような、そんな目であたしを見ている。
なぜそんな風に見るのかは全くわからないがあたしには関係ない。

すると、髪あっか!とか、あれぜったい染めてるよね…とか
そういう女子の話し声も聞こえてきた。
なるほど、それで驚いているんですか、
うるせーな地毛ですけど何か。

ここの中学に入ったのには理由があった。
…といっても単純な理由だけど。

「吉谷さんは先月までアメリカにいたそうだ。」

えーっ!!まじかよ!
すげえー!!

そんな声が発せられる。

…たかがちょっとアメリカにいたぐらいで
そんなに驚くことかよ。
まあ、帰国子女とかいう部類には入るんだろうけど。

「しかし諸事情により日本に帰国することになり、ここへ転校することを決めたそうだ。みんな仲よくするように」

はーい!!
と、クラスの奴らが口々に言った。

…しかし、そんな中で興味がないのか一番後ろの窓際という
超特等席で本を読んでる、髪が水色の男子がいた。
つーか…影薄そうだし肌白ー…

「じゃあ吉谷さんの席は窓際から2番目の席だからそこに座って」

じゃあ影薄さんの隣か。
ところでどうでもいいが、何の本読んでるんだろう。
あたしは自分の席へ移動すると、
隣の影薄に声を掛けた。

『ねえ、何の本読んでんの?』

「――!!…え、ああ、この本の事ですか?」

『当たり前だろ。本ってそれしかない』

「蜘蛛の糸です」

『それ…最後どうなるか誰でも知ってるよね』

「ですが文章がいいんです、この人の。
結末は知ってても読みたいっていうか」

『ふーん。あっそ』

すると彼は少し怪訝そうな顔で此方を見た。

「聞いてきたのはあなたなのに随分そっけない態度ですね」

『別に。何読んでるのか聞きたかっただけだから』

あたしがそう言った後、諦めたのか
彼は再び本に視線を落として読み始めた。
…っていうかいっけね。担任の話、全然聞いてなかったわ。
ま、時間割通りに動けばいいよね。
生徒たちが続々と立ち上がり、話し声が聞こえてきた。
どうやらホームルームは終わったそうで、担任も教室から出て行くのが見えた。
次の授業は確か移動教室だったよな。
一応確認のためにお隣さんに聞いてみた。

『なあ、次の授業って移動教室だよな』

「そうですよ。場所わかりますか」

…あ。そうだった。
学校の中まではさすがに覚えていなかった。
つまりあたしはコイツについて行かなきゃ
授業場所がわかんないことになる。


『…連れて行ってくれる?』

「ハア……わかりました」

今コイツため息ついたよな?
まさか隠れ腹黒キャラか。


あたしは教室を出ていくそいつの後を急いで追った。
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