@桐皇

□甘い香(今←若)
1ページ/1ページ

素っ気ないけど優しいところ。

見えないところで努力してるところ。

ここぞというときにキメられるところ。




―そんな彼がかっこよくて、憧れで。




いつしかその気持ちが、"恋心"に変わってしまっていた…





一生叶わない恋をするほど辛いものはない。


――わかってる。


だから俺はこの思いを心の奥に、そっとしまい込んだ。






―――なのに。


それなのに彼は―



―その不敵な笑みで。
―優しい声で。


――俺の心を深くえぐる……






「はぁー…」


溜息をつけば、白く息が染まる。

季節は冬。
もうすぐウィンターカップだ。



今日も今日とて、厳しい部活が終わり只今帰宅中。




とぼとぼと独り寂しく歩いていた。





……にしても、今吉サンは最近諏佐サンにべったりすぎる…



休憩時間も「すさぁー」
部活中も「すさぁー」
部活が終わってからも「すさぁー」





痛い…
胸に針が刺さったように、チクチクする。




叶わない恋…
わかっててなお、俺は今吉サンが好きなのだ。



今日も、今吉サンは諏佐サンと帰ってんだろーなぁ…



落ちそうになる涙を堪えて、マフラーに顔をうめた。




すると、

「おっ!!若松やんかぁ〜」


聞き慣れた大好きな声。



「―今吉、サン?」



笑顔でこちらに駆け寄って来る。
隣に諏佐サンの姿は見当たらない…。



「…っ諏佐サンは――?」

「ああ、アイツ用事あるんやて。まぁどーせ、また後で会うからええんやけど。」



――"後で会う"


もう今は8時過ぎ。

このあと会うなんて―――
目的は明確だ……



「―…そう、っすか…てっきり一緒かと」


「どないしたん?そない泣きそうな顔して」





泣いたってしょうがない。

わかっていても溢れだしそうになる。



「…そうっすか?普通の顔っすよ。」


俺は頑張って笑顔を作ってそう答えた。


「そか?ならええんやけど…」



これ以上表情にだしてはいけない。
今吉サンに迷惑なだけだ…


そう思って俺は俯く。


「若松、あったかそうなマフラーしとるな…」

「―…?…あ、はい。」

「ちょお、ワシも入れてくれへん?」


そう言った今吉サンは、モゾモゾとマフラーの片方を首に巻いた。

ピッタリと身体が密着する。


「あー…暖かいわー。」

「〜〜っ////」



―今吉サンの温もり
―今吉サンの鼓動
―今吉サンの甘い香



すべてを感じる。

こんなにも近くに、手の届く距離にいるはずのに


―――届かない。




俺が勝手に好きになっただけなのに…


胸の奥が痛い。


痛い…


いたい…



イタイ…



思わず、我慢していた涙が溢れ出た。


「…大丈夫か?若松。なんかあったら相談のったるで?」


優しい笑顔でこちらを覗き込む今吉サン。




――彼は知らない



俺があなたに恋をしていること。


―そして、その優しさが俺を狂わせること。




俺はただ、


ただ今吉さんの甘い香に包まれて泣くことしかできなかった。







あとがき

始めは今若にするはずだったんですが…

いつのまにかこんなカタチにっ!!
でも、一生敵わない恋ってのも結構おいしいですよねw


はい
駄文失礼しました((土下座

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ