fickle text

□それの名前は
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それの名前は



「ねー、クー」
「何だ?」
 剣の手入れをする手を止めてクロエがノーマを振り向く。
「………。う〜ん」
「ノーマ?」
 呼んでおいてノーマはクロエを見つめたまま腕を組み、いつものように多少オーバーに首を傾げる。
「言いにくいなら無理に言わなくていい」
「うんにゃ、そうでなくて」
 ノーマがかしかしと頭をかく。
「自分でもどーよと思うわけよ」
「?」
「つまり俄かには信じがたいってことね」
「いや、言葉の意味は解るがそうじゃないだろう」
 問うと立ち上がった彼女がぽすんと横に腰かける。至近距離で見つめられるのが何と無く居心地が悪い。
「ノーマ?」
「うん。やっぱそうだわ」
 数回頷いて一人で納得したノーマが満面を笑みにする。
「何だ」
「やっぱあたしあんたのこと好きみたいね」
「……は!?」
 一拍おいて、言葉の意味を理解したクロエが派手な音を立てて剣を取り落とした。
「危ないってば、クー」
「な…っ…な……何を…!!」
「クー、動揺しすぎ」
「動揺もする!! いきなりなんだ!!」
「愛の告白?」
「ノーマ!!!」
「顔赤いってば」
「赤くもなる!!」
「照れてんの?」
 顔を寄せられたクロエが気持ち後退さる。
「ノーマ!! じ、冗談はよせっ!」
「ひど〜い」
 ぷうっと頬を膨らませたノーマは、真っ赤になったクロエの頬に小さく口付ける。
「――――!!?」
「本気、だってば」
「な、な…なっ!」
「クー、何言ってんのか解んないし」
 心底楽しそうに笑われてクロエは頭を抱えた。

「勘弁、してくれ……」
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