□賈詡
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「これだけとは…なんだかねぇ」

既に束にしてしまった賊どもを見下ろして賈詡はぼやいた。

いい陽気だったのに…。

肉饅でも食って頭を休めようなどと考えながら歩いていた所を呼び止められれば、
「暇なようだから賊の討伐を頼む」
と頼まれてしまい、まぁ最近は書物に向かうことの方が多かったのでと引き受けた。

強奪品も持ち帰り報告するようまで言われていたので巣窟の中を調べてみる。

賊の人数も強さも大した事はなく、まさかと思えばやはり強奪品も少なく。拍子抜けしながら荷を馬車に積んだ。

蓋の開かぬ樽があったらしいが面倒くさくてそのまま馬車に積ませた。どうせ戻ったら開けるのだから中身は別に確認しなくていい。

ほんの数名の、既にしょんぼりしている賊を引き連れ、賈詡の部隊は城へと引き返し始めた。




日暮れまでには戻れる。そんなに急ぎ走る事もなく、馬を進めていると隊列の後方で叫び声が上がった。

「賈詡様!何者かが樽の中にいたようで!」

叫びながら部下が走って来る。ほんの少しの、気配がするとは思っていた。驚いたような叫び声の後は騒々しいばかりの後方に向かってみる。

荷車の、あの蓋の開かなかった樽から子供のような顔が出ていた。
髪は銀色だろうか。陽の光で所々光って見える。顔は薄汚れており、僅かに見える指先は痩せ細っている。兎に角、樽から出している、見えている範囲は賈詡が言うのもなんだが薄汚かった。

「あんた、いくつだ」

目は合っているが反応は無い。言葉がわからないのではないかとさえ思える。そんな振りをしているかもしれないが。
子供の様にしか見えない者から、盛大な腹の音がした。

「……はぁ〜…」

敵意も何もなさそうな、ただ見つめてくるだけの存在に、賈詡は懐から砂糖菓子の包みを渡した。

「いいか?あんたはこれを食べて、俺が出ていいと言うまで中にいるんだ。蓋は開けていていいさ。ゆっくり少しずつ食べるんだよ」

食べていいと一応手振りも見せながら伝える。相変わらず表情の無い子供だったが、砂糖菓子を口に放り込んだ途端の顔はきらきらと輝いていた。こりゃ、着くまでに菓子が無くなりそうだ。

逃げる気も何もなさそうなので、そのまま城へと向かった。

さて、なんと説明すればいいのかな。
無論、ありのままに話すだけだがね。
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