夢
□夏侯淵
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どこだ?
どこにいるんだ?
頼む…
返事しろぉっ!
それは、蒸し暑い夜だった…。
薄い掛布を握り締め、歯を食いしばりながら眠る男…。
名を夏侯淵。
夢の中…
どれだけ走ったのか…
どれだけ叫んだのか…
彼が気付いた時はもう朝で、掛布を握ったまま床に転がっていた…。
「こりゃぁ…落ちちまったんだな」
苦笑いしながら後頭部を擦り、寝台の横にある窓を見つめる。
朝の光が眩しくて、思わず夏侯淵は目を細めた。
「……桜」
小さく呟き、夏侯淵は立ち上がる。
呟かれたのは愛しい人の名。
夏侯淵にとって可愛くて可愛くて仕方ない。
けれど、護りたくても護らせてもらえない…
彼女も魏軍の立派な一武将なのだから。