お話し

□短編
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今日僕は現世にいた。




新しいドーナツショップが出来たとかで

連日TVでやっていたのだ。

海外から来たお店で門外不出(!)のレシピで作られている

相当美味しいドーナッツが食べれるらしい。これはぜひとも行かなくちゃ!





実はここに来る前に閻魔殿に寄ってきた。

閻魔大王に鬼灯が非番だってきいてたから。

でもあいつ、いないばかりか電話も通じなかったんだよなぁ。

普段は会えば喧嘩ばっかで

時には流血沙汰にあることもしばしばだけど

なんとなく今日は一緒に行きたいと思ってしまった。会いたかったなぁ。

ぼくは鬼灯の男にしては綺麗で冷たい横顔を思い出した。何これ変なの。




お前にドーナツ





全種類のドーナツを一口ずつ食べたいぼくは

トレーにたくさんのドーナツを載せて空いてるテーブルを探すと

「あれ?」一瞬視界に見覚えがある姿が…

そこには僕のトレーの倍はあるドーナツを無心で食べている地獄の鬼神の姿があった…。

グレーのキャスケットを深くかぶり、黒のシンプルなニットに、4千歳を越えてるにしてはお茶目なロールップしたデニムをはいている。

普段は代わり映えしない黒の着流しのみの服装のくせに何気にセンスがいいんだよなぁ。

自分に似合うものをよく選んでると思う。

そんなのことを考えながら、鎖骨の綺麗さとか足首の色の白さに見とれてると





「おや…白澤さん。」気づかれた!

「げ…お前なんで。」やばい、じろじろみてたことばれたかな。

「なんでってドーナツを食べにですよ、見ればわかるでしょう。馬鹿ですか?」

「あいかわらずいやな言い方するなぁ。」でも嬉しい!だってこれってすごい偶然だもん。

思い切って鬼灯のいるテーブルに座った。

「ちょっと何勝手に座ってるんですか?」わかってる、受けて立ったら喧嘩になる。

「何お前そんなに食べてるの。」この食欲でこのスタイルの良さは反則だろ。

「あなただって変わらないでしょうが。」

「うるさいなぁ。こういうところにくると全種類食べたくなるの!」

まあ僕は一口ずつなんだけど…。

相変わらず顔に似合わない口の悪さで突っかかってくるけど正直僕は鬼灯と会えたことが嬉しすぎて緩んでしまう口元を隠すためにドーナツを食べだした。

鬼灯もため息をつくと、再びドーナツを食べだした。とゆーか何に挑戦してるんだって姿だぞ、お前。んでもって口に砂糖もドーナツくずもついてる。
「口、ドーナツついてるぞ。」

指摘すると、鬼灯はウェイトテッィッシュで拭おうとしたけど…違う違う、もっと横…ああ、もどかしい!

チュ…。僕はつい…てゆーかついだよ本当。

女の子にいつもするみたいにキスしてとってしまった。やば…。

ぶん!と風がゆれるのを感じた時には左の頬に衝撃がはしった。

殴られてそのまま床にたたきつけられた僕の鎖骨あたりを鬼灯の足がダン!と踏みつける。

襟にかけていたサングラスが割れて刺さってる…。痛すぎるだろ!

「ちょ…いきなりしたのはゴメンけど、痛い痛い痛い…!!!」

しっかり攻撃してるくせに、前を向いてさっきまで僕のいた場所を見ている鬼灯に声をかける。

「おかしな人ですねぇ・・人の足の下に入り込むなんてマゾですか?」やっと此方に目を向けた鬼灯が言った。

「お前ねぇ…。」

「このぐらいで済んでありがたいと思いなさい。」

動揺を隠してるつもりか?目線が揺れてるぞ。

帰ります…とふらっと立ち上がった鬼灯はよろよろと店をでてしまった。

後に残された僕と大量のドーナツの山。

「すみません!これ!!」近くにいた店員にドーナツを包んでもらい、それをもって鬼灯を追いかけた。
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追いかけずにはいられない

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