お話し

□アムリタ
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(鬼灯さん目線で話は続きます)



実際白澤さんの背に乗るというのは初めての経験でした。
以前、閻魔大王がその背に乗っているのを見たときは、本人たちが酔っており、楽しげで緩やかな動きでした。
ですが今、私は烈風のすさまじさに耳がしびれ、目が開けられないのでした。
それほど白澤さんの空を駆けるスピードは速く、この人が神獣であったとしみじみわかるのでした。
ふいに風がやみ、私はつい前のめりになってしまいました。

目の前には、中国的な彫刻をあしらった幅の広い階段があり、何人か人が立っているようでした。
その中に以前お見かけしたことのある太公望さんがいたので、ここが中国の崑崙山、つまり仙人たちの秘境だということが分かったのです。
「白澤さん、これは…。」
「そ、中国。ここまではまだあの病は届いてないみたいだから避難していただいたんだ。」
白澤さんの目線を追うと、階段の先の大きな神殿の扉の前にもっと見知った顔がありました。
「篁さん、どうも。」
しかし、秦広王の補佐官である篁さんは、ぎこちない顔をして私をみると、次に白澤さんの方を向き
「白澤様、ありがとうございました。これにてお帰りくださいと十王が申しております。」
と言ったのです。






十王会議








私が案内された広間には、はたして地獄の裁判官十王たちが円を描くように向かい合って座っていました。
その補佐官たちもわきに控えています。
が、何人かはいないようです。
十王たちの前には、先ほど白澤さんが持っていた黒い金魚草が透明の球にいれられて封印されていました。
「………………。」
私が無言で十王たちを一人一人眺めていると、変成王が口を開きました。
「鬼灯殿、あなたに確認したいことがある。」
そして金魚草を指しました。
「この金魚草はあなたが開発したものか。」
なるほど、そういうことかと私は納得しました。
白澤さんが「この金魚草の件で私を連れて行くように言われた。」的なことを言っていたこと、先ほどの篁さんの様子…すべて合致が行きました。
「半分その通りですが、少し違います。」
私は事実を述べることにしました。
「この金魚草は私が品種改良し、長年閻魔殿の花壇で育ててきたものです。しかし色は違います。今はこの姿になってしまいましたが、数日前は赤と白の一般的なものでした。」
ひそひそと囁きが十王の間にささやかれました。
今度は初江王が言いました。
「閻魔大王も病で倒れられているし、君は私たち十王の管理下にある。それはいいね?」
「はい。」
もう結論は出ているのでしょう。
しかしこうやって確認をとって進めてくださるのがこの方たちの温情なのだと私は感じました。
「私たちは今回の流行病と地獄の異変においていくつか推論をたてている。」
初江王は続けました。
「実際はあなたが犯人ではないかと思っているのだ。」
―――――――――
さて、どうしましょうか。
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