お話し
□短編
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神獣さん
僕は草むらを走っていた。
最愛の鬼神・鬼灯が欲しがっているりんごを探すために。
【待ってて】
とは言えりんごとはさまざまな種類がある。
現世のみならず冥府のものを含めれば探すのは一苦労だ。
しかも個体差もある。
正直探すのは骨が折れるので僕の神獣としての力を解放し桃源郷の高台から、世のあらゆるりんごの木を視た。
しかし鬼灯が夢で見たような光輝くりんごは無い。
今度は世のあらゆる店を視た。
しかし鬼灯が夢で見たような光輝くりんごは無い。
久々に神獣の力を使ったらずきずきとこめかみが痛んだ。
でも鬼灯が待ってるんだ、りんごを。
あいつが喜ぶ顔を想像するだけで僕の心は跳ねる。
表情の変化が乏しいあいつだけど本当にうれしい時は瞳が変わるんだ。
僕みたいに長年付き合ってないとわからない変化。
僕のように近くで見ていないとわからない変化。
本当に何十年、何百年に一度しか見れないものだけど僕はその瞳が大好きだ。
そんなことを考えていれば頭痛もおさまって次はどこを探そうかと思い至った。
僕は携帯電話を取り出して、その人物にかけた。
待ってて鬼灯。
僕必ずお前の欲しいりんごを持ち帰るよ。