東方鷹伝 二ノ乱
□40章「その先に見えるもの」
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〜佑介side〜
佑介「うっわ・・・こりぁあひでえな」
椛「はい・・・最初来たときは、この世のものとは思えませんでした・・・」
俺は今、あの男が住んでいただろう窖に来ていた。中はまるで爆弾で敵ごとぶっ飛ばしたみたいに死体が散乱していた。
といっても、こんな光景見飽きてる俺にとってはあまりどうも思わない。
やはり慣れというのは怖いものだ。
佑介「壊れたショットガンやらなんやら・・・こいつらマジで外の世界から来てたのか・・・?」
死体から何か身元がわかるものがないか探るも、何もない。
死体は恐らく数週間前に殺られたのだろうか、体の肉が腐り、爛れ、悪臭を放っていた。
佑介「うえ〜・・・悪臭がすげえな・・・」
鼻に来る臭いは洞窟の奥に行くほど強くなっていく。おまけに死体の数も増えている。
服の中を探ってもやはり何もでてこない。
佑介「ダーメだ。なんにも出てこねえ・・・これじゃあラチも明けねえし、そろそろこいつらを埋葬してやろう・・・」
椛「そうですね。ですが、これだけの数をどうやって・・・」
佑介「手っ取り早く燃やそう」
手が足りなかったため、犬走には他の天狗を呼んできてもらい、みんなで作業をする。
その際に天狗は鬼である俺に警戒していた。
全く、鬼っていうのも楽じゃねえな。
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埋葬も無事に終わり、紅魔館に戻り、自分の部屋でゆっくりとくつろいでいた。
佑介「ハァ・・・」
犬走は俺とは打ち解けているが、やはり他の奴らは俺をよく思っていない。あれでは到底仲間にできねえな・・・。
俺はことごとく嫌われているらしい。
ガチャガチャと銃の点検をしながら今後の事を考える。
佑介「正志の部隊をここに呼ぶか・・・いや、それだと今の部隊のパワーバランスが・・・」
俺は部隊を選ぶ時はそれぞれの能力を引き出すチームにしているが、今回ばかりはどうにもできない。なんたってうちのギルドの戦士たちは戦闘のプロ顔負けの戦いをするのだ。
この世界の素人たちでは訓練をする前に心を折ってしまうだろう。
佑介「ハァ・・・」
これで何回目のため息なのだろうか、俺は銃のマガジンを装填した状態にして机に置く。
最近この作業しかしていないような気がするが・・・
机に置いているコーヒーを手にしようと手を伸ばした。
佑介「・・・ん?」
あれ?置いてあるはずのコーヒーがない・・・。
佑介「あれ?」
机の方を見るが、そこにはコーヒーの入ったカップがなかった。
???「ねえ、これ、もらっていいかな?」
横から知らない女の子の声がした。
横を見てみると、そこには帽子をかぶり、胸のところに目を閉じた何かをつけた少女がいた。
佑介「君は?」
こいし「私、こいしっ!ねえ、これもらっていい?喉が渇いちゃって・・・」
佑介「それはかまわんが、君どこから入ってきたんだ?」
こいし「ん〜?お兄さんが机に置いてる道具をいじりながらため息してたところから」
ぜんぜん気がつかなかった・・・いや、気がつけなかったのか・・・?
よく見たら窓が開いている。ここから入ったのか・・・?
それにこの子の名前・・・
佑介「こいし・・・だったか?君もしかして、地霊殿の・・・」
こいし「お姉ちゃんのこと知ってるの?」
佑介「やはり君は古明地さとりの・・・」
こいし「うん。妹だよ」
まさかこんなところで会えるなんてな・・・思ってなかったが・・・
こいし「それよりお兄さん、何か困ってるの?」
コーヒーを飲み終えると、こいしは俺に向かって言う。
佑介「・・・まあ、困ってるっていったら困ってんだけどな・・・」
こいし「何に困ってるの?」
佑介「いや・・・」
こんな子供に戦いのことを話すか?いや、こんな何にも知らなそうな子供に、俺たち大人の汚い戦争の話をするのはいささか・・・。
佑介「いや、なんでもないよ」
こいし「ふぅ〜ん、じゃあ、私帰るね。あんまり遅くなるとお姉ちゃんが心配するから・・・。よかったら、地霊殿に来てね!お兄さん」
それだけを言い残し、こいしは窓から外に出て行き、そのまま飛んでいった。
佑介「・・・なんだったんだ?」
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夕食の時間。この日も食堂は大勢のメイドたちにより賑やかだった。
レミリア「賑やか?騒々しいの間違いじゃないの?」
佑介「細けえ事を気にすんな。食事っていうのはな、大勢で食ったほうがうまいんだよ」
まあ、それを知ったのはつい最近なんだがな・・・。
今日のメニューはカレー。この世界のみんなは食べたことがないらしく、外の世界で買い物をして俺はこうして作ったというわけだ。
まあ、大量に作っておけば明日までもつし・・・。
フラン「このおいしいね!」
パチュリー「そうね。初めて食べるけど、外の世界にはこんなものもあるのね」
よくこれを携帯食料として詰めようとしたやつがいたな〜・・・。
結局入れることはできたが中身全部ブチ撒けたっけ・・・。
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食事を済まして俺は奴に食事を渡しに行く。
佑介「美鈴、ごくろうさん」
美鈴「あっ、佑介さん!わざわざありがとうございます」
ちゃんと見張りをしていた美鈴に食事を渡し、状況を報告してもらう。
佑介「で、何か話したか?」
美鈴「いえ、ここ3日間何も口にしなくて・・・」
佑介「そうか・・・」
俺は牢の中でおとなしくしている男にカレーの入った皿を入れてやる。
佑介「[どうだ、何かを話す気あるか?]」
???「[・・・]」
だんまり・・・か。
10分ほどそこにいたが、男はカレーに手をつけず、ただただ空を仰ぎ見ていた。
手も永林が作ってくれた薬によりすっかり直っていた。
佑介「[心配すんな。もう拷問なんて事はする気はねえ。喋りたくないなら喋らなくてもいいし、そのうち放してやるよ]」
???「[なぜだ・・・]」
立ち上がろうとした時、男は突如口を開いた。
???「[なぜ敵の俺にここまでする・・・さっさと殺せばいいものを・・・]」
佑介「[殺せば・・・か・・・じゃあ、お前は罪のない子供を殺した平和の世界を築きたいと思うか?]」
???「[当たり前だ・・・!世界を平和にするには犠牲が必要なんだ・・・!そのためなら、俺はこの手を汚してでも・・・!]」
佑介「[そして次の子供たちが手を汚すわけだな]」
???「[っ・・・]」
佑介「俺はな、俺たち人間がいる限り戦争はなくならないと思っている。確かに戦争がない世界は理想的だ、そのためには多くの人間を敵に回さなければいけない。だがな、そんなクソまみれの世界でも、俺たち大人がどうにかしてやって争いを無くせば、子供たちは平和に暮らせるんじゃねえか?それが俺たち大人の役割ってもんじゃねえか?]」
???「[・・・]」
佑介「[まあ、これは俺のひとつの方法に過ぎんがな・・・]」
俺は腰に挿していた刀で牢を斬った。
???「[ッ!?]」
美鈴「佑介さん!?」
佑介「[・・・行け、自分の理想を現実にするために、自分の信じた道を進み続けろ。だがこれだけは忘れるな。俺は何度でもお前らの道を阻んでやる。俺は、生きているまでお前らの乗り越えなければいけない壁になってやる。俺はこの世界の住人だ。ここだけは混沌の世界にしたくない。そのためなら、俺はお前らと刺し違えてでも止めてやる・・・]」
???「[・・・]」
男は立ち上がり、俺の顔を見る。
???「・・・あんたには、何が見えているんだ・・・?」
男は突然日本語を話し出した。
佑介「さあな、悪魔になにが見えていると思う?」
???「・・・フン、あんたの見ているものが見てみたくなった・・・!俺をあんたの隊に入れてくれ・・・!」
佑介「いいのか?俺は平和を妨げる悪魔だぞ?」
???「悪魔にもいろいろいることがわかった、それに、あんたの言う平和を見たい」
佑介「・・・いいだろう」
俺は男に手を伸ばした。その手を、男は手を取る。
佑介「俺は鷹川佑介、お前は?」
ニコライ「ニコライ・・・ゴルバ・ニコライ」
〜40章〜 終