東方鷹伝 二ノ乱

□42章「旧都」
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〜佑介side〜

ニコライ「遅いぞ、大将」

佑介「す、すまない・・・ちょっと厄介事に巻き込まれて・・・」

あれから数分間動けなかった俺は、1時間くらいの遅れを取りながらやってきた。
まだ背中が汗でグッチョリとしていた。

ニコライ「なんだよ、妖精にでもいたずらされたか?」

佑介「いや、妖精のいたずらよりタチの悪い人に出会した・・・」

ニコライ「???」

佑介「それより、お前飛べるのか?」

ニコライ「なんで?」

佑介「いやだって・・・地底って・・・地下深くじゃねえか」

そう、俺たちが立っているのは、でかい穴があいているところだ。
昔地獄の経費を少なくするために切り捨てた場所なんだが、そこに目をつけた荒くれ妖怪たちが集まって出来たのがここ、旧地獄の地底なのだ。
そのため、地下深くに行くためにはどう考えても飛べないといけない。だが、ニコライはここに来てまだ日が浅いため飛べないのである。

佑介「俺は飛べるけどお前飛べないと地底に行けねえだろ?」

ニコライ「・・・」

佑介「・・・飛べないと」

ニコライ「・・・うん」

仕方ないね。
うん・・・仕方ない。

佑介「仕方ねえ、俺が先に降りてスキマを開くからその方法で合流しよう」

ニコライ「わかった・・・すまんな」

佑介「困った時はお互い様だ」

俺はそう言い残し、穴にダイブをした。

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さて、下についたのはいいんだが、どんだけ落ちたのだろうか?穴の下には小さな水溜りがある。だが見えるのはそれだけだ。地上の光により見える水溜り以外後は真っ暗で先が見えない。
とりあえずスキマを開きニコライを呼んでおく。

ニコライ「すまない」

佑介「それはいいんだが・・・ライトあるか?」

ニコライ「あるぜ」

ニコライは背中に背よっているカバンからライトを二つ分手にすると、一つを俺に渡してくれる。

ニコライ「ほれ」

佑介「ん、サンキュ」

カチッとライトのボタンを押すと小さな光が暗闇を照らしてくれる。
そしてその先には大きな穴があった。

佑介「・・・また穴か・・・」

最近穴に縁がある気がする・・・が、ここを通らないと話にならない。

佑介「行くか・・・」

???「やあ!お兄さん達」

佑介「ッ!!」

声に反応してしまい、反射的に銃を抜いて声の主に銃口を向ける。

???「おや、初対面にそんなもの向けないでおくれよ」

ライトに照らされて見えたのは金髪のポニーテールに大きなリボンをしており、焦げ茶色のジャンパースカートの少女だった。

ニコライ「ッ!?妖怪か!」

ニコライが銃に手を伸ばした。

佑介「待てっ!どうやら地底の住人らしいぞ」

ヤマメ「あら、お兄さん達外の世界の人にしては物知りだね。あたしは黒谷ヤマメだよ」

佑介「鷹川佑介だ。先程は失礼した。職業がら癖でな」

何とかここは信頼を築いていかなくては・・・

ヤマメ「職業がらって、何をしてるのさ」

佑介「あぁ、それは・・・」

ニコライ「大将!モタモタしてると敵に先手をうたれるぞ!」

佑介「あ、あぁ・・・ヤマメ、この地底のことには詳しいか?」

ヤマメ「詳しいよ」

佑介「なら、俺らを地霊殿に連れて行ってくれ」

ヤマメ「地霊殿?さとりに何か用があるのかい?」

佑介「あぁ・・・実は・・・」

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俺はヤマメに道案内してもらいながらこれまでのことを話した。この地底に迫っている危機に。

ヤマメ「なるほどね〜それでさとりに協力して欲しいんだね」

佑介「あぁ、我々は協力してこの地を、幻想郷を守りたい。そのためにも、仲間を増やしていたいんだ」

ヤマメ「そういうことだったらあたしは協力するよ。さあ、そろそろ旧都に着くよ」

歩き続けて数分間、暗闇に一筋の光が出てきた。そして、そこから賑やかな声が聞こえてくる。

佑介「おお・・・!」

暗い窖から出ると、そこには街があった。

ニコライ「すげえ・・・!」

こんな地下深くにある街なのに、ちゃんと街として機能している。街を明るく照らす光、店で聞こえるバカ騒ぎ、賑やかに妖怪たちは歩き、飲み、遊んでいた。
まるでどこかの国の城下町のようだ。

佑介「驚いた・・・まさか地底にこんな街があったなんて・・・噂以上だ・・・」

ヤマメ「そうだろ〜!ここはあたしたちにとっては天国みたいな場所なんだ。嫌われ者ばかりが集まるここでは、あたしらを嫌う奴らはいないからね」

ニコライ「今考えたら、普通の人間俺だけじゃねえか・・・」

確かに・・・ん?

何かの気配が後ろからしたと思い、俺はふと後ろを振り向く。

ニコライ「どうした?大将」

だが、後ろを見てもどこにも人らしい影はどこにもなかった。
気のせいか・・・?

佑介「いや、なんでもない・・・」

俺の発言で二人を混乱させるわけにはいかねえな・・・今は保留にしておこう。

ヤマメ「それじゃあ、二名様地霊殿にご案内〜♪」

と、ヤマメは元気に旧都に向かって歩いて行った。俺は後ろを気にしつつ、ヤマメの後を追った。

???「妬ましい・・・」

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佑介「街は活気に溢れてるな。流石に嫌われ者たちの楽園と言われているところだ」

ヤマメ「そりゃあ、あたしたちは人にも一部の妖怪からも嫌われてるからね。嫌われ者でも楽しいことくらいしたいさ」

ニコライ「俺はこういうところはあまり・・・」

佑介「そうか?俺は好きだ。こういう風にみんながいきいきとしているところ」

ヤマメ「おっ、佑介はわかってるね〜」

佑介「そりゃあ、戦場を見てきた俺だ。戦闘でボロボロになった街なんて見てたって気分は晴れねえよ」

ニコライ「それもそうだな」

???「おや、随分と珍しい客人だねェ、ヤマメ」

横の店から現れた女性。
手には盃を持ち、そして頭の額にある一本の角。

ヤマメ「あっ、勇儀!」

勇儀・・・?
確か幻想郷縁起に書いていたな・・・。
星熊勇儀。かつて妖怪の山を支配していた四天王の一人、萃香と同じ妖怪・・・つまり鬼だ。

勇儀「おや、誰かと思ったら、同族の子かい?」

ッ・・・!この女、俺が鬼だということがわかるのか・・・!?

ヤマメ「えっ?佑介って鬼なの!?」

佑介「・・・どこでそれを」

勇儀「だって、アンタ信介とそっくりなんだよ。そりゃあ気づくさ」

どうやら勇儀は親父とよく酒を飲んでいた間柄だったらしい。
他にも博打打ちや喧嘩相手だったとか・・・。
居酒屋で頼んだ酒を少し飲みながら俺は勇儀の話を聞いていた。
そして、俺は親父のことも話した・・・。

勇儀「そうか・・・あいつ、逝ったのかい・・・」

佑介「・・・」

勇儀「寂しくなるねえ〜・・・」

周辺の空気が重くなる。

佑介「・・・ん?」

また変な気配がした。俺は店の入口に目をやると、そこにはなにやら俺を睨みながら唇を噛み締めている金髪の少女がいた。

佑介「うおっ!!?」

驚いて変な声を上げてしまう。その声に気づいたみんなは店の出口を一斉に見る。

勇儀「パルスィ?なにやってんだいアンタ」

パルスィと呼ばれる少女はゆっくりと視線を俺に向けた。
・・・やべえ、目が合った。
めっちゃ嫌な予感がする。

パルスィ「・・・妬ましい・・・」

佑介「はっ?」

パルスィ「ここに来てそう経っていないのに皆と仲良くなってるところが妬ましい・・・」

妬ましい?俺が??

パルスィ「その綺麗な目が妬ましい・・・その長い綺麗な髪が妬ましい」

佑介「えっと・・・」

咄嗟にニコライを見るが、ニコライはドン引きといった感じでパルスィを見てる。

パルスィ「妬ましい・・・堂々と刀を持ってるところが妬ましい・・・リア充どもが妬ましい」

佑介「最後関係無くね!?」

勇儀「紹介するよ佑介。こいつは水橋パルスィ。嫉妬深いから注意しな」

紹介したところでパルスィは俺に近づいてきた。

えっ?えっ?何なに?

パルスィ「・・・ん」

とパルスィは俺に手を差し出す。
え〜っと、どう受け取ればいいのか・・・。

パルスィ「握手」

佑介「えっ?」

パルスィ「自己紹介に握手は当然でしょ?妬ましいわね」

あ、あ〜あ〜、握手ね・・・いきなりだったら驚いた・・・。

佑介「よ、よろしく・・・鷹川佑介だ」

と名乗り、パルスィの手を軽く握る。

パルスィ「ん。よろしい」

お互いに手を離すとパルスィはそのまま俺の隣に座る。
なんだ、最初は驚いたけど案外いい奴じゃねえか。

勇儀「そういえば、佑介はさとりに会いに来たんだよな?」

佑介「あ、あぁそうだけど・・・」

勇儀「何しにだい?」

ニコライ「大将、あまり話すと混乱を起こすことになるぞ」

佑介「いや、話そう。ここで話さなかったら信頼なんて得られねえ・・・。話そう、全てを」

〜42章〜 終
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