東方鷹伝 二ノ乱

□43章「喧嘩」
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あらすじ
ニコライの情報で次の標的が地霊殿だということを知った佑介はすぐに地霊殿の古明地さとりに会うために地底に訪れる。そこで出会ったヤマメ、勇儀、パルスィたちにこれまでの出来事を話すのだった。

〜佑介side〜

佑介「・・・ということがあって、今に至るんだ」

ニコライ「これに関しては、全て嘘偽りのない真実だ」

勇儀「そうかい・・・アンタも大変だったんだねぇ」

佑介「そんなもんじゃねえよ。ただ、やるべきことを見つけただけさ・・・」

ヤマメ「しっかし、地上は今そんなことが起きてるんだね、ここはあんまり地上の情報が入ってこないからねえ」

そういえば、射命丸もここにはあまり近寄りたくないと言って新聞をあまりこちら側には売りに来ないらしいが、そうなると、この世界の情報収集方は不憫だな。
外の世界ならネットやらなんやらで大体の情報は得られるし何かとあちらの世界は便利だ。だが、便利すぎるモノっていうのは、時には人を陥れ、そして命に関わるものにもなるもの・・・だからこの世界にはそんなものは必要ないんだ。

勇儀「ところでさ、佑介」

佑介「なんだ?」

勇儀「アンタは強いかい?」

佑介「・・・まあまあかな。妖怪の力もロクに使えてないがな」

勇儀「どうだい?あたしといっちょやり合わないかい?」

と言いながら勇儀は拳を俺の目の前に出して言う。

勇儀「今の話を聞いて別に協力するのは構わないさ、でも正直いって自分より弱いやつに従う気はないんだ」

まあ、大体予想はついていた・・・。

俺は手にしている刀を強く握り締め、立ち上がる。

佑介「いいだろう・・・だが、俺も親父から受け継いだこの志のために、負けるわけにはいかん。手加減はしねえぞ・・・?」

勇儀「いいねえ・・・そのギラギラとした目。アンタの親父を思い出すよ」

そう言いながら勇儀も立ち上がる。
そして店に代金を払い、

勇儀「ついて来な」

と言われ、俺は勇儀の後をついていく。

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連れてこられたのは人気のない広い道だ。そこで勇儀は立ち止まり、俺と向き合う。

勇儀「ここならちょっとやそっと壊れても誰も文句は言わないよ。遠慮せずに全力できな」

そう言われ、俺は肩にかけていたM4A1アサルトライフルを取り出し、実弾の入ったマガジンを取り、弾幕専用マガジンに変える。

佑介「それじゃあ、遠慮無く・・・」

ガチャ!とマガジンを入れる。
そしてグリップを握り締め、アイアンサイトで勇儀に狙いを付ける。

ヤマメ「佑介の武器変わってるねえ」

ニコライ「まあ、な」

パルスィ「妬ましい・・・」

ニコライ「何に対してだよ・・・」

引き金に指をかけ、後はこの引き金を引くだけだ。
だが、何故か指が引けねえ。やはり鬼相手だから恐れているのか?
いや!今はそんなこと言えねえ!幻想郷が、世界がかかっているのだから!。

佑介「行くぞ、勇儀ィィィィ!!!」

勇儀「かかってこい!佑介ェェェ!!」

バババババババ!!

引き金を引き、弾幕を貼りながら移動する。
だが勇儀は俺の弾幕を軽々と跳ね返しながら避けていく。

勇儀「遅いね!!」

いつの間にか勇儀は俺との距離を詰めており、拳が俺の頭上から振り落とされる。

佑介「ッ!!」

即座に避けることに成功するが、俺のいた地面はその鬼の力で軽々とその地面に大きな穴を開けた。

佑介「もらった!」

そこから集中射撃するが、これまた勇儀は身軽にその場から離れて俺の射撃から逃れる。

佑介「チィ!」

勇儀「アンタの力はこの程度じゃないだろ!?」

そこから勇儀は俺に怒涛のラッシュをかけてくる。
俺は勇儀の攻撃を避けるので精一杯だった。

勇儀「そんなんじゃ負けちまうよ!?」

佑介「冗談キツいぜ!!」

身軽にするために俺は体につけていた装備品を全て脱ぎ捨て、ハンドガンと刀に手を伸ばした。

佑介「まだまだこれからよ!!」

刀で斬撃を与えようとすると、勇儀は手についていた手枷で斬撃を防ぐ。

佑介「ここだ!」

もう一方の手に持っていた拳銃でゼロ距離で勇儀に照準を付けた。

勇儀「しまっ――」

佑介「弾符『バーストショット』!!」

バッゴーン!!
銃口から放たれた巨弾は勇儀の体を包み込むように放たれた。

ニコライ「やったのか!?」

パルスィ「・・・いや」

佑介「カハッ!!」

いつの間にか俺は手から銃を放していた。

勇儀「危なかったよ。少しでも判断を誤ってたらこっちがやられるところだった」

なんと勇儀はピンピンしていた。
その理由はあのスペル発動した瞬間だった。
勇儀は俺のスペルを発動したと同時に腹に拳を入れていたのだ。そのおかげで俺は照準をずらしてしまったのだ。

やはり鬼であって力が強い・・・!腹に入れられた拳は俺の腹にめり込み、更にはたった一発で膝を付きそうになってしまった。だが、俺は膝をつかない。必死に刀を地面に刺して体を支える。

勇儀「すごいねぇ、普通の奴ならさっきの一発で膝を付いちまうのに」

佑介「俺は、こんなところで躓いていられないんだ・・・!親父が愛したこの世界のために・・・!愛する家族のために・・・!!」

だが、やはりさっきの一撃が効いた。
足元がふらつく・・・。

勇儀「勝負あったよ。諦めな」

佑介「冗談だろ・・・!まだまだ行くぞっ!」

確かに勇儀の力は俺では敵わない。はっきり言えば不利なのは変わりない。
だったら・・・!

佑介「速さで押し通す!」

射命丸の能力である風を操る程度の能力で高速移動しながら

佑介「オラァ!!」

勇儀「ッ!」

斬撃を与える。まあ、峰打ちだから打撃といったほうがいいか。

佑介「守ってばかりじゃあ勝てねえんじゃねえのか!?」

勇儀「流石信介の息子だ!気に入ったよ!!でも・・・」

隙が出来たところに打撃を与えようと刀を振りかぶる。
だが、刀を振ろうとしたところで、辺りが真っ白になったと同時に、腹部に強烈な痛みが走った。

佑介「があ!!!」

ニコライ「まずい!勇儀の攻撃が佑介の腹に!」

その時、俺は鬼の強さを痛いほど味わった。
恐らく俺はこの人、星熊勇儀に勝てないとこの時実感した。
吹っ飛ばされる際に木で出来た柱を何本かへし折りながら俺は気を失ってしまった。


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佑介「・・・で、気を失って勇儀に運ばれたところまではいいが・・・なんで俺はパルスィに膝枕されている?」

ニコライ「さあな」

あれから、俺は随分長い時間気を失っていたらしい。俺たちはそこら辺の宿で休ませてもらっていたのだが、俺が目を覚ました時には何故かパルスィが膝枕をしていたのだ。
なんだろうな・・・黙っていれば美人なのに・・・勿体ねえ。

パルスィ「男の人ってこういうの好きでしょ?」

・・・ようわからんが。

佑介「そういうもんなのか、ニコライ?」

ニコライ「知るか。お前らのギルドと違ってハンターは女と縁がねえんだ」

パルスィ「あなたたちのその純粋な心が妬ましいわ」

まあ、ウチのギルドでは男女の間のことをうるさくは言わなかったが・・・。
さて、さっさと起きるか・・・。

佑介「勇儀はどうした?」

パルスィ「街中の妖怪に話しをつけてきてるわ」

話をつける・・・どういうことだ?

パルスィ「勇儀は勝っても負けてもあなたに協力する気だったのよ」

そうか・・・確か親父とは喧嘩仲間とか言ってたな・・・
だからって、俺と親父とじゃあ戦闘力が違いすぎるんだけどな・・・。

佑介「そうか・・・ありがたい・・・んじゃあ、行くか」

立ち上がり重い装備を体に付けながらロングコートを羽織る。最後に置いていた刀を手にする。

ニコライ「そうだな、すっかり忘れるところだった」

ニコライも立ち上がり、畳に置いていた西洋の剣を手にしてそれを背中に差した。

佑介「世話になったなパルスィ。今度お礼するよ」

パルスィ「そう、期待してるわ。期待させるあなたは、妬ましいわね」

佑介「俺はお前のその素直じゃないところが妬ましいよ」

フッと笑い合う。そして、俺たちはその部屋を後にした。

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〜勇儀side〜

勇儀「佑介・・・って、いないし」

せっかく報告してやろうとした時には、佑介たちはもういなかった。

パルスィ「・・・もう行ったわよ」

部屋にはパルスィが一人でいた。どうやら入れ違ったようだ。
平然な顔をしているが、その表情にはどことなく悲しんでいるようにも見えた。

勇儀「そうか、いや〜それにしてもホント信介にそっくりだったねえあの子!あたしは気に入ったよ」

なんてたって、惚れた男の子供だからねぇ!

パルスィ「えぇ・・・」

勇儀「・・・いいのか?あいつを行かせて・・・お前、待ってたんだろ・・・」

パルスィ「・・・確かに、やっと会えたけど、彼は『彼』じゃないわ・・・佑介を彼と重ねるわけには、いかない・・・」

パルスィは懐から一枚の紙切れを出した。そこには、まだこの幻想郷に来る前のパルスィと、その横で立ってる着物を来て腰に刀を差した佑介そっくりの青年が映った白黒写真だった。

勇儀「そうだけど、いいのか?初恋の相手の生まれ変わりだろ?」

パルスィ「・・・私の恋は、もう終わってるわ。それに、こんな嫉妬深い女じゃあ、佑介が迷惑するわよ・・・」

店の窓から見える人ごみの中にいた佑介を見つめながら、パルスィはその写真をギュッと握りしめた。

〜43章〜 終
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