東方鷹伝 外伝


□日常編「彼にとっての日常」
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レミリア「ねえ、佑介の日常ってどんな感じだったの?」

突然そんなことを言うレミリアに対して佑介は雑誌をペラペラとめくる。

佑介「・・・どんなって?」

レミリア「あっちでの世界ではどんな日常を送ってたの?」

佑介「なんだよ唐突に・・・まあ、どっちかというとこっちの方が断然と楽だからいい」

レミリア「楽って・・・?」

佑介「うまく口に出来ないんだが・・・波乱の連続というか・・・なんて言えばいいんだ・・・修羅場?違うなぁ・・・」

雑誌を机に投げてそんなことに悩んでいると、佑介の携帯が突如鳴る。
ジャケットのポケットを漁って携帯を取ると、ディスプレイを指でタッチして耳に近づける。

佑介「はい、こちら鷹川佑介・・・」

蓮子『よかった、繋がった・・・!佑介ぇ〜!至急に助けて〜!!』

佑介「なんだよ蓮子・・・要件も言わずに救援願いを出されても困るんだが・・・」

蓮子『いいから来て!私たちがよく行く喫茶店だから!!』

それだけ言うと、ブツッと切られてしまう。
佑介は「ハァ・・・」といつものようにため息を吐くと、ジャケットに手を伸ばして袖に腕を通し、風呂敷を巻いた刀を手に持つ。そして、妖怪の目になってしまった左目を眼帯をする。
コンコンとノック音。

咲夜「三代目?」

佑介「咲夜か・・・入っていいぞ」

ガチャっと扉が開かれる。

咲夜「三代目にお客様ですが・・・」

佑介「誰だ?」

と佑介が言うと、咲夜の後ろから少女が飛び出てきた。
その少女の手には刀が握られている。

妖夢「師匠!お手合せをお願いしに来ました!!」

佑介「・・・」

妖夢の姿を見ると、佑介は頭を抱える。

佑介「・・・済まないが用事があってな・・・今日が無理だ」

佑介はパチンと指を鳴らすと、スキマを展開させて入ってしまう。

妖夢「あっ!師匠!!」

少しすると、佑介はスキマからヌルッと出てきて、

佑介「師匠って言うな・・・」

と言い残し、スキマを閉じた。

レミリア「・・・それだけ?」

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ここはある街の喫茶店。いつもは静かで、よく佑介が使っている店でもあった。でも、今日はちょっと違う点があった。

ウェイトレスA「いらっしゃいませ!」

ウェイトレスB「いらっしゃいませ!」

みんななぜかメイド服を着ていた。それを見て、佑介は無表情のまま止まってしまう。
一度、店の外に出て店の名前を確認した。

佑介「(ここ・・・だよな・・・)」

蓮子「あっ!佑介!!」

そこに現れたのは、メイド服に身を包んだ蓮子だった。

佑介「蓮子、何なんだこれは・・・」

蓮子「いいからこっち来て!」

強引に蓮子は佑介の胸ぐらを掴んで引っ張っていく。

佑介「痛ててて!待て蓮子!引っ張るな!!」

蓮子「いいから来て!」

と、佑介はロッカールームに拉致されてしまった。

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その頃、幻想郷では

レミリア「なんか部屋に拉致されたわね」

妖夢「そうですね・・・」

紫「・・・ハァ」

何故か紫が紅魔館でスキマを開かされていた。
佑介が出て行って、レミリアは佑介のあっちの世界での私生活を知りたいと思いつき、妖夢を通じて紫を呼び出したらしい。
そして、今三人は佑介の行動をまるで監視カメラのように見ていた。

レミリア「ねえ、中を見ることできないの?」

紫「無理言わないで。中は多分狭いわ。そんな狭いところでスキマを開いたらバレるわよ」

妖夢「でも、気になりますね・・・どうして」

紫「でも、中の声なら拾えるわ」

レミリア「じゃあ今すぐに聞かせて」

紫「はいはい・・・」

ヒョイッと指を動かしてスキマを操る。すると、まるでノイズのような音と共に二人の声が聞こえてきた。

佑介『オイオイ、マジかよ・・・』

蓮子『いいから服脱いで!』

紫「えっ・・・?」

レミリア、妖夢「なあっ!!?」

ガタッ!と立ち上がる妖夢とレミリア。

佑介『急かすなよ・・・ったく・・・』

ジジジジィ・・・チャックを下ろす音と服を脱ぐような音が聞こえる。
その音を聞くだけで、三人は顔を赤くする。

蓮子『あぁ〜もう、遅い!!』

佑介『待て待て!脱がそうとするな!!ああっ!ズボンを引っ張るな!』

レミリア「この馬鹿兄があああ!!!」

ついにレミリアの堪忍袋が切れた。レミリアはスキマに手を伸ばして上半身だけ中に入れる。

紫「ま、待ちなさい!ここで中に入って余計自体をややこしくしたくないから!!」

レミリア「知るかぁ!あの馬鹿兄を殺す!!」

妖夢「そ・・・そんな・・・師匠が・・・師匠・・・!」

紫がレミリアを止めている間、妖夢は顔をまるで林檎のように赤くする。

佑介『ったく、何が「人手不足だから手伝って」だよ・・・』

レミリア、妖夢、紫「えっ・・・?」

三人の動きが全て止まってしまう。

蓮子『しょうがないじゃない。今日はこの喫茶店の特別イベントのメイド喫茶日。だけど、メイドだけじゃ味気ないから執事とか欲しかったんだけど、ウチそもそも男の人が店長以外いなかったから・・・』

佑介『まるで俺を雑用係だと思いやがって・・・』

蓮子『いいじゃないなんでも屋』

佑介『今は当主だ・・・まあ、今回の依頼は安くしてやるよ』

その会話を聞き、とりあえずレミリアは戻ってくる。

レミリア「な、なぁんだ!せ、せっかくあいつを亡き者にして当主の座を取り返そうとしてたのに・・・!」

紫「説得力がないわよ・・・」

その頃、外ではガチャリと開くと、そこから現れたのは、

レミリア、妖夢「っ!!?」

黒いスーツに身を包んだ執事姿の佑介だった。
少しかったるそうにネクタイを緩く絞めていた。
そんな佑介の姿を見てレミリアと妖夢の二人は

レミリア、妖夢「か、かっこいい・・・」

と二人は佑介の姿に見とれていた。

佑介「なんかこうしてると、いつもの日常に戻ったみたいだな・・・」

蓮子「そうだね。あの頃はよく遊んだよね」

佑介「遊んだんじゃねえ・・・お前らが俺の仕事に首を突っ込んできただけだ」

蓮子「そうだったっけ?でも、あの頃は色々あったよねぇ・・・仕事の終わりによく佑介の家で飲んでたっけ・・・」

佑介「ほとんど俺の金でな」

蓮子「ねえ!久しぶりに佑介の家で飲もうよ。メリーも誘って」

佑介「そうだな・・・それより、今はバイトが優先だ。行くぞ」

トレイを手にとって佑介はお客に接客していく。
綺麗な笑みを浮かべ、客の前では笑顔を絶やさずいた。
いつの間にか店は男性ばかりだったのが女性も入ってくるようになってきた。もちろん彼女たちの目的は佑介であろう。
そんな人気な佑介を見ながら、一匹の吸血鬼と一人の半人半霊がスキマから佑介を睨みつけていた。

レミリア「ゆ〜う〜す〜け〜・・・!」

妖夢「し〜しょ〜う〜・・!」

紫「・・・やれやれ」

???「手を挙げろォ!!」

いきなり店の中で銃声が響くと同時に店の天井の蛍光灯がパリン!と割れた。

傭兵A「なっ・・・!」

一人の客が脇に付けたショルダーホルスターから拳銃を手に取った。恐らく傭兵なのだろう。だが、パァーン!と乾いた銃声が響き、その傭兵の肩に銃弾が被弾した。

傭兵A「ぐぁああああ!!」

ドサッと倒れた傭兵は肩を押さえて横たわった。

レミリア「なんか・・・まずいんじゃない?」

妖夢「そ、そうですね・・・っというより、師匠は?」

確かに店内を見ると、佑介の姿がなかった。調理場を見るが、どこにもいない。
強盗がいるというのに、佑介はどこにもいなかった。

佑介「お待たせしました・・・アイスコーヒーになります・・・」

店内をよぉ〜く見ると、なんと佑介は客にコーヒーを運んでいた。

強盗「な、何をやっているんだお前は!!」

佑介は強盗の声に反応したのか、強盗に顔を向ける。

佑介「何って、仕事だ・・・それが何か・・・」

強盗「仕事じゃねえだろうが!強盗に来ているんだぞ!?」

佑介「焦ったとこで状況は変わんねえんだ・・・冷静に考える方がいいってもんだ・・・」

既に出て行ったしまっていた客が座っていたテーブルにあるコップやカップを片付ける。

強盗「上等じゃねえか!その綺麗な顔に風穴を開けてやる!!」

強盗の手に握られている拳銃が佑介の眉間に照準が付けられ、引き金が引かれる。
パァーン!と銃声が響くと、佑介の体が衝撃波を受けたかのように宙を浮く。

レミリア「ゆ、佑介!?」

妖夢「し、師匠!?」

だが、佑介は地面に片手をつき、そのままバック回転をする。
顔にはトレイで隠されていた。そして、銃の弾丸はそのトレイの中心に被弾していた。

強盗「なっ・・・!」

佑介「フン!」

トレイを強盗にフリスビーのように投げつけた。トレイは強盗の顔に当たり、宙に浮く。

強盗「あたっ!?」

大きな隙ができ、佑介は一気に間合いを詰めた。

佑介「シャアア!!」

渾身のパンチが強盗の顔面に当たると、口から血を出しながら強盗は倒れる。
そして、宙に浮いていたトレイを手に取る。

佑介「フン・・・観念してもらおう」

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小さな事件を解決して、それから数時間、佑介は外の世界での久しぶりの買い物をしていた。

蓮子「それにしても、今日の事件はやばかったね」

佑介「そうか?そうでもなかっただろう・・・こうしてバイト料も弾んでくれたんだし。今日は鍋で酒でも飲み明かそうじゃねえか」

蓮子「う、うん・・・」

結局あれから、あの強盗は警察に突き出し、佑介の活躍で、店は客が増えた。(主に女性)
噂というものはあっという間に広がっていくものであり、ほとんどのお客は佑介の姿を見るために来店する客が多かった。

佑介「ほう・・・ネギが安くなってるな・・・今日だけはついてるな」

そんな独り言を一人口にしながらネギをカゴの中に入れる。

佑介「酒はいつものビールか?」

蓮子「そうだね。あと日本酒も欲しい」

佑介「はいはい」

カゴに適当に目に入った酒を入れていき、会計を済ませる。
スーパーを後にして、酒などでいっぱいのビニール袋を二つずつ持つが、

蓮子「っと、うわわっ」

流石に重いらしく、蓮子はフラフラしながら歩く。
そんな危なっかしい蓮子に

佑介「持とうか?」

と言う佑介だが

蓮子「いや、いい・・・」

と言う蓮子。
そんなことを言う蓮子だが、やはり危なっかしい。

佑介「やっぱり持とう」

と佑介は蓮子から半ば強引に荷物を取り上げる。

蓮子「わわっ!いいってば!」

佑介「何を言ってんだ。転んで怪我とかしたらどうするんだ。一升瓶だって入ってんだ。刺さったりしても危ないだろ?」

蓮子「そ、そりゃあ、そうだけど・・・あ、ありがと・・・」

佑介「別にこれくらい・・・そういえば、メリーはどうしてるんだ?」

蓮子「メリーは佑介の家に直接行ってるって」

佑介「そうか。だったら、早く帰ってやろう。今夜は冷えるからな」

三つの買い物袋を軽々と持ちながら歩き出す佑介。
その後を追うように歩く蓮子だった。

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〜メリーside〜

それは、夢の中の世界――――

そこには、妖怪、妖精、神様が住んでいる世界だった――――

そこにはもちろん蓮子はいない。私の知り合いはひとりもいない世界・・・――――

そう思っていた――――

でも、一人だけ知っている人がその世界にいた――――

――――佑介――――

彼は刀を手に持ち、村の中を歩いていく。途中に出会う人々に手を振っている――――

最近目を悪くしたらしく、眼帯を付けるようになったのだが、その佑介には、眼帯がなかった――――

隠されていた左目は、まるでその夢で見た妖怪のような目をしていた――――

道に一人の女の子が佑介にお花を差し出す。佑介はそれを笑顔で受け取り、女の子の頭を撫でた――――

そして、佑介は、紅い館の中へ消えていった――――
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