小説ウィスタル
□その瞳に映る、世界の真実
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空が墜ちていた。
薄暗く、絶望に満ちた空。
地上の惨劇を写したような、汚い空。
吐き気を催すほどの血の匂いと、消えない砂埃の中で、私はただ立ち尽くしていた。
こんなはずではなかった。
誰もがそう思っているに違いない。
どうしてこうなってしまったのか、何を間違えたのか。
断末魔の叫びと、罵りの言葉と、救いを求める祈りが、私の内と外で木霊する。
そうだ、私たちは何も間違ってなどいない。
これが世界の、あるべき姿なのだ。
逃げ惑う人々の中に、同じように呆然と動かない者を見た。
その者は、自らが手にかけた者の死体の隣に横たわり、墜ちてくる空を見ていた。
隣に眠る者は美しい銀髪の持ち主。
殺してしまった。
死んでしまった。
あぁ、どうして。
途端に涙が溢れた。
無力な自分を呪った。
空が墜ちていく。
世界が終わる、音がする。