妖語

□語る者
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 子どもたちは見守った。『最初で最後』に酔いしれて。

「この書の初めにこうある」

 語り部は、ぎいっと音の立ちそうな重い表紙を開いた。更なる緊張。少女が少しだけ目を伏せた。
 語り部はそれを見た。その腕に抱かれた赤子を見た。

「姫子、赤子は良くない」

 語り部の言葉に、子どもたちは一斉に少女を見た。語り部と共に来た、物静かな少女。ほとんどの子どもが、その少女と話をしたことがない。おそらく、名前を知るのも初めてだ。

「変わらない」

 それは少女の言葉であった。『語り屋』の戸口で鳴る始まりの鈴の音と同じような音がした。

「良いの。同じよ。続けて」

 淡々とした、色の無い言葉。子どもたちの沈黙。語り部の溜息。

「分かった。続けよう」

 秘密の空間。

 厳かなる時間。

「この書は、『予言の書』と呼ばれるものじゃ。これから先に起こることが全て記されている。勿論、これまでに起こったことも、全て。さて、それはこう始まる」

  
 厳かなる一節。

「我は予言する。最後の戦いを」


 

 赤子の泣き声が、響き渡る。
 

 
 
 あやかしがたりをはじめましょう。
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