濃紺の天
□呼び出しと戦闘
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フィリムが特訓を開始してから早三日。亜空間では一週間以上経ってるんだけども。
未だに、真星祭で組むもうひとりのメンバーが見つかっておらず。
それでもまあ焦らず暢気にぶらぶらと。校舎を探し歩いていたならば。
「君だね!編入生、リアマーレ・チェレステ!」
と、びしいっと指をさされ、声高に名前を呼ばれ、問答無用で校舎からだいぶ離れた森の近くまで連れてこられた。
身の丈三倍はゆうにありそうな木々が連なっている大きな森には結界が張ってある。
こんな大きな結界を張れるほどの実力者がいるのか。…ああ、いや。結界碑で張っているからそうとも言えないな。
これだけ大規模だと結界碑があと4つは必要になるんじゃないだろうか。
「ちょっと!さっきから話聞いてる!?」
「ねえ、この森って結界張るほどの"何か"があるの?」
「"魔の森"なんだから魔獣が住んでるに決まってるでしょ。それより話を逸らさない!」
「ごめんごめん」
謝る気ないでしょ!
と怒る彼女…いや、彼か。背が低くて華奢。しかも目は切れ長だけど大きく、まるでそう。
キャンキャン吠える猫みたいな印象だ。
猫は吠えないけど。
「ええと、で。何の話だっけ」
「そこから?そこからなの?もう一度話せって?後輩のくせにそこまで図々しいなんて!」
「ええ!先輩だったの!?」
「ピンの色が黒でしょ!」
「そういう意味だったんだ」
「話が進まない!」
俺の首襟についているピンは白だから2年は白ってことか。
それで先輩ということは3年生で。
「いやーすいません、先輩。ところでお話って、」
と言いかけたところで口を閉ざす。
「今度はなに?聞きたいことがあるなら先に聞いちゃってよ」
話が全然進まないんだから、と膨れる先輩。
「じゃあ、アレ。なんですかね」
先輩の背後に広がる魔の森の方へ俺は人差し指を向ける。
そこにいるのは濃い紫色の髪の―――。
「何って、結界碑いじってるんだから結界委員か誰かじゃないの」
「いやでも」
あいつの纏っている空気は魔獣のそれとよく似ていて。
「私服で結界委員の腕章つけてないってことは急ぎか緊急事態ってこと」
邪魔したら駄目。
さ、話を戻そうかと俺に向き直った先輩。
そこに立たれると紫髪の男が見えなくてちょっと邪魔なんだよ
「ねっ!っと」
先輩の体から半歩横にずれて、紫髪の男に胸ポケットにさしていたものを投げつけた。
それが男の背中についたのを確認して。
―――――"電光・星針"
「ちょ、あんた何して」
「発動」
瞬間、紫髪の男の体がビクンッと大きく揺れた。
そしてキョロキョロとあたりを見回し、こちらを向いた。
あれま。人間が一瞬失神する程度の電流じゃ特に効果はないらしい。
ただ単に電気に耐性があるのか、それとも人間じゃないからか。おそらく後者だろうけど。
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