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□01:ふと思い出す君の笑顔
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『ふと思い出す君の笑顔』



共に戦況を乗り越えてきた筈なのにいつの間にかお互いに疑心暗鬼になっていた

そんな中、アイツだけは・・・黒髪のジャパニーズは持ち前の能天気さで周りのピリピリとした雰囲気をぶち壊していたんだ

何より驚きなのはリンクスのBOSSアッシュの顔だった

アイツが傍にいると殺気が消えてしまう

周りを凍てつくす程の気がとたんに無くなってしまうのだ

一体、どういう関係なんだ?

この疑問は誰もが持っている

どう見ても普通の関係じゃないのは分かってはいるけど、聞くのが恐ろしいのは周知の事実

だけど、聞きたくなるのが人間の性ってもんだろ?

大体、うちの若様もなんでアイツを忌み嫌っているのか

わけわかんねー

マジでわかんねーよ

と、言うわけで俺はしばらくアイツ・・・英二を観察することにした




英二は、黄色人種特有の小ささだ。そりゃ、黒人や白人の中に居れば際立って小さい

丸い大きな目はより幼さを強調してるし、アイツの癖なのか人の顔をジーと見る

思わず吸い込まれそうになるくらい澄んだ瞳で居た堪れなくなっちまう

何より、その笑顔がかわいい

だってよ、なんかこうほんわかと笑うんだぜ?

思わずこっちが照れちまう

英二を観察していて気付いたことが一つ

俺と英二が会話してる時に見えるアッシュの顔がこえー事だ

まぁ、アッシュが怖いのは元々だけど、違うんだよなぁ

とにかく英二が可愛いって事はわかった。

だから・・・


「英二ー。また日本のおかゆ作ってくれよ」

「あ、シン。日本のおかゆもなかなかイケるだろ?」


ニッコリと笑う英二にさり気なく肩組みすると早速と後ろの方から刺さるような視線を感じる

チラリと視線を送るとリンクスのBOSSであるアッシュがブラッディのケインと話しているのが見えた

話しながらもこちらに注意を向けているのが分かる

それを確認しながら俺はある行動に出てみた

顔を寄せ英二にだけ聞こえるように耳元に囁く


「なぁ、英二。たまには俺んとこにも遊びに来いよ」

「え!?あ、うん。そうだね」


分かってるのか分かってないのか英二は戸惑うようにはにかんだ

そんな英二の表情が無性に可愛らしくて思わず当初の目的を忘れてしまうところだったのは仕方ないんじゃないかなと思う

まぁ、もっとも忘れさせてくれなかった奴がいたけど


「英二!!」


俺と英二の密着した空間に無理やり割って入ってきたのはもちろんアッシュだ


「どうしたんだい、アッシュ?」


アッシュの冷たいグリーンアイズが俺を貫き無理やりそばにいた英二を攫っていってしまった

腕を引っ張られるように去っていく英二が二言、三言、アッシュに文句を言っているようだがまったく動じていない


「ふ〜ん・・・」


俺はその様子を見ながらも思い出すのはあの柔らかな笑顔だった

あの怖い兄ちゃんじゃなくてもあれは守りたくなっちまうかもな





2012.08.20 RIU

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