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□The last river
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『The last river 』




 君は1人じゃない
 ぼくがそばにいる
 ぼくの魂はいつも君とともにある




だんだんと視界が狭まり酷い眠気に意識が持って行かれる

それに抗うように愛しい人の一語一句忘れないように反復し魂に刻み込む

本当に幸福なんだ。彼奴のおかげで俺は幸せを感じることができた


『英二・・・』


何も無い闇の中、前方に光が見えた

とにかくそこに行かなくちゃと思い重いはずの身体を奮いたたせ歩きだした

だけど、いつの間にか身体が宙を浮くように軽くなった

この闇の中から外に出たい一心で光に向かって走り出す

少しずつ広がる光に飛び込むと眩い光が視界を奪い何も見えなくなり意識も白い波の中に持って行かれた



どれくらいの時が経ったのだろうか・・・

天を漂う光の渦に巻き込まれるようにゆらゆらと漂っていた。忘れちゃいけないものがあった筈なのに

何であったか・・・

いや、身体の中心で渦巻く身体を引き裂くような激しい感情がまだ残っている

逢いたい・・・

ただ、逢いたかったんだ

最期に

最期の川を渡る前に



『・・・英二』



頭に浮かんだ笑顔に心に響いた言葉を一時でも忘れてしまった事に驚愕する

いつの間にかどこからの建物の中居た。キョロキョロと辺りを見回すと

目の前に愛しい人の顔が見えた

ひどく憔悴した顔には幾筋もの涙の痕が見られる

抱きしめようと柔らかなその黒い髪に手を伸ばすが感じることができずただ宙を掻き抱くだけであった

思わず自分の両手を見てみると向こう側が透けて見える

『あぁ・・・そういう事か・・・』

すぐ目の前の存在に逢いたかったんだ

最期に逢いたかった

だけど、こんな結末を誰も欲してなんかいない

何故、そんな悲しそうな顔をしているんだろう

俺は英二が無事で居てくれることだけが願いだったんだ

そんな顔をしてほしかったわけじゃない

その涙を拭ってやりたいのにもう触れることもできない

俺は幸せだったんだ。英二・・・。だから泣かないで

この川を渡る前にお前の笑顔が見たいから

だから泣かないで
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