Long

□Again
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新連載ですが、読む前に注意点
IF設定としていますが、導入部分ではアッシュの死が前提となっています
タイムパラドックス、パラレルワールドとしてのIF設定です
アッシュ×英二のBL要素含みます(R18となる描写が入る可能性もあります)
以上、注意の上読んでいただければ幸いです





『Again』





あの時、何故手紙を渡してしまったのか悔やんでも悔やみきれない思いで一杯だった

今更、何を言っても過去に戻れないし、どうしようもないのは分かってはいるけど

焦燥感だけが自分を苛んで明日への希望の光が見いだせずに過ごしていた

僕にとって彼の存在が思っていた以上にとても大事なものだったんだと知った瞬間、君は手の届かない場所に行ってしまった

こんなにも君に焦がれて

こんなにも逢いたいなんて

過去の僕は分かっていたのだろうか?

いや、分からなかったからこそあの時、あの選択肢を選んでしまったのだろう

今の僕のこの姿を君が見たらどう言うのかな

呆れるかな?

それとも心配してくれるかな?

アッシュ。君に逢いたいよ

逢いたくて

逢いたくて・・・





  『もしも、願いが叶うなら・・・

   神様お願いです。

   せめて・・・

   あの時まで時間を戻してください・・・

   もしも、願いが叶うのならば

   僕にかかる

   どんな試練も

   耐える覚悟があります

   だからどうか・・・』





真っ白な壁。白い白衣。白い天井。全てが白いこの建物の中で


 「先生、患者の血圧が急降下しています!!」


僕は意識があるのか無いのかわからずにいた


 「血中酸素濃度80%まで落ちました」


周りで慌ただしく動く気配はするけれど既に何も感じられない。痛みすら無いんだ


 「循環性ショック状態に陥っています」


何も見えない。ただ、心臓の動く音だけが物悲しいげに弱い拍動を紡ぎだしていた


 「家族に連絡を・・・」


この白い世界で僕はただ、君の事を想って




 『ねぇ、アッシュ。もしも願いが叶うなら・・・』




既に辺りは暗く、街灯の明かりがパチパチと音を立てている。

暗闇に浮かび上がる白い建物の窓から漏れる光がその部屋の中の慌ただしさを物語っていた

シン・スゥ・リンは祈るように空を仰ぎ見ていた

夜の闇の中には月は見えず、その代り星々がここぞとばかりに自己主張の輝きを零していた


 「英二・・・。早すぎるよ」


その時、ポケットに入れていた携帯が振動し、着信を知らせる

この着信は、取りたくないという気持ちの一方で早く取らなくちゃという相反する思いが交錯していた

それでも鳴り止まない振動に手を伸ばし通話ボタンを押す

小さな機械の先から聞こえる声が非常に遠く現実味の無い言葉を紡ぎだしていた


「・・・今、行きます・・・」


聞きたくない言葉

だけど、一方でとうとうきたかと思う

彼はあの日から生に対する執着が感じられなかったのだから

胸の奥が張り裂けそうで目頭が熱くなる

俺が傍に行くまで・・・待っていて欲しい

先ほどまで重かった足取りだったが地を蹴り駆け出す

早く、早く、早く

今はとにかく会わなきゃという思いでいた





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2012.09.25 RIU.
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