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□紙一重
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…やばい。
これはやばい。
【紙一重】
「真ちゃぁんっ!!」
「…なんなのだよ」
いきよいよく真ちゃんの部屋のドアを開ける。
そこには、いかにもめんどくさそうな真ちゃんの顔があった。
俺はそんな真ちゃんを無視して、飛び付く勢いで真ちゃんに近づいた。
「お前はいきなりなんなのだよ。勝手に人の家に上がるし」
「いやいや違うんだって!!見てこれ!!」
俺が持っていた1枚の紙を真ちゃんに見せる。
それは、俺のテストの点数の表だった。
真ちゃんは最初、普通に見ていたが、途中からの顔色が変わった。
「高尾…なんだこれは」
「今日、放課後に呼び出しくらってさ…行ってみたらこれだった」
「残酷だな…」
そこにはほとんど赤点ばっかりのテスト表。
賢すぎる真ちゃんは、ありえないような顔をしていた。
最近、授業中寝てばっかりだったからかな…。
前はもうちょっと上だったんだけどな。
「だから、さ!お願い真ちゃん!!勉強教えてください!!」
顔の前で手を重ねてお願いをする。
今は二人きりだし、いちゃいちゃしたいのは当たり前なんだけど、今勉強しなきゃ、これから真ちゃんと過ごす時間が減るからな…。
あーキスしてほしい。
ってダメダメ!!
「嫌なのだよ」
「え…?」
「俺は無駄な時間を過ごしたくないのだよ」
無駄な時間…。
真ちゃんにとって、俺との時間は無駄ってこと?
なんでだろうな。
教えてやるって言ってくれるって、少し期待したのが悪かったのかな。
「だ…だよなあ!!わかってるってんなこと!!」
なあ真ちゃん。
俺のこと、嫌い?
「じゃあ俺帰るわ」
今にも出てきそうになる涙をこらえて、ぎゅっと手を握った。
分かってたけどさ…。
ダメ元で頼んだし。
けど、ちょっとくらいならいいじゃねえか。
真ちゃんのバカ。
とぼとぼと玄関に向かおうとしていると、真ちゃんが聞いてきた。
「勘違いしてないか」
「え…」
「俺は、勉強などという無駄な時間より、お前と一緒にいたいと言ったんだ」
「真、ちゃん…」
勘違いするな、と言って俺に近寄ってきた。
ぽんぽん、と頭に手を置かれてそのままゆっくり撫でてくれる真ちゃん。
「ばーか…主語ねぇから分かんねぇんだよ」
「お前は馬鹿だからな」
身長の差が結構あるため、立ったまま真ちゃんを見ると自然に上目遣いになる。
前それで、煽るなと言われたっけな。
真っ直ぐ真ちゃんを見ると、軽く触れるだけのキスをしてきた。
「なあ、ついでに、やっぱ勉強も教えて」
「高尾が言うなら、しょうがないのだよ」
天才と馬鹿は紙一重。
でも相性はばっちり。
なんて、真ちゃんに言ったらあきれられるかな。
end!!
なんだかんだで絶対に高尾を見放さない真ちゃん。
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