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□恋の解き方
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緑高/ほのぼの





相手に聞きたくても聞けない事。
そんなのありすぎて。
一番聞きたい事に限ってなぜか一番聞けない。



【恋の解き方】




最近、悩んでいることがある。
勉強もバスケも俺は常に良いのだけれど、あれはよく分からない。
俺にはもどかしすぎる。
恋愛、というものは。
教科書もなければマニュアルもない、つまり恋愛は自身の積み重ねだ。



「何かしたのか、俺は…」



今日で何回目か分からないため息がでる。
もう誰もいない教室で自分の机に突っ伏す。
ケンカ、ではない。
と思うのだけれど。
昨日の帰りも普段と何も変わりはなかった。
あいつ、高尾だっていつもみたいに普段通りだった。
何が原因なんだ。
分からない。



「まったく…なんなのだよ」



俺らしくない。
不覚にも、あいつが隣にいないことがさみしい、だなんて。
本当にいつから、なんで、こんなことに…。








「おはよ、真ちゃん」


「おはよう」



何も変わらない朝。
いつも通りのあいさつ。
高尾はちゃんと笑ってた。



「真ちゃんさ、数学の宿題やってきた?」


「愚問だな、あたり前なのだよ」


「だよな!だからお願いします!ノート写させて!!」


「9回目だぞ…」


「またアイスおごるからさ」



顔の前に手と手を合わせて頼んでくる高尾。
別に、そんなに頼み込まなくてもお前だったらいくらでも貸す。
なんて、本人には絶対に言わないが。



「高尾、アイスはハーゲンダッツにするからな」


「え!?まじでおごるの!?ってかハーゲンダッツって高ぇよ!」



これっきり、だ。
だから理由が分からない。
避けられてはない。
でもどこかよそよそしい。
目も合わせないし。
なんでだ。
まさかハーゲンダッツで、なんて事はないだろう。
高尾もそこまで子供じゃないし、でもならなんだ。



「考えて考えて、分からないまま結局放課後か…」



あれから、しゃべってないどころか会ってない。
クラスに行こうか迷ったが、行けるほどの勇気は今の俺にはない。
第一、朝のあの会話にケンカの原因がまったく見つからないのだ。
机から身を離して、もう帰ろうとイスから立ったとき、



「っ真ちゃん!!」



勢いよく開いたドアに目線をやると、そこには息を切らした高尾がいた。



「た、かお…」


「下で待っててってメールしたのにいないから、帰ったと思ったじゃんか!」


「あ、ああ…悪い」



普通、だ。
本当になんなんだ。
驚きすぎて、さっきから間抜けな声しか出ない。
唖然としている俺に、高尾は聞いてきた。



「なに、その顔」


「え…」


「泣きそうな顔」


「え…いや、違う。別に」


「何、どうしたの真ちゃん」



あまりにも安心がでかすぎたのかもしれない。
声だけでなく、こんな間抜けな顔、高尾に見られるだなんて。
いつの間にか、俺の前にまで来ていた高尾。
胸が熱くなって、ぎゅっと抱き締めた。



「え、ちょ、真ちゃん!?」


「うるさい…」



自分でもよく分からなかったけど、なんとなく今は抱き締めたかった。
高尾の匂いだ。
とても安心した。










「はあ!?なんだそれ。別に俺、そんなつもりで会わなかったわけじゃねぇよ?」


「なっ…!」


「なんかさー、今日俺、緑間にノートうつさせてもらったじゃん?」


「ああ、まあ…」


「ハーゲンダッツおごるの嫌だなあ、とか思って一緒にいなかっただけ!」



けらけらと楽しそうに笑いながら言う高尾。
なんだそれ、とはこっちのセリフなのだよ…。
まったく、変な勘違いをしてしまった。
悩んだ時間を返してほしいものだな。



「まあでもよかった」


「何がよかったのだよ」


「真ちゃん、ちゃんと俺のこと考えてくれて」


「…当たり前だ。俺が好きなのは高尾だからな」


「わかってるって!俺もだし」


「高尾…」


「ん?」


「俺の…」


「うん?」


「いや、なんでも」


「なんだよー、ったく真ちゃんは」



そう笑う高尾が、きらきらとまぶしく見えた。
俺にはまだ恋愛はいまいち分からないが、教科書の気難しい内容ほど難しいものではないのかもしれない。
でもやっぱり、一番聞きたいことはまだ聞けないな。



―俺とずっと、一緒にいてくれないか?


end!!


早く結婚しなさい!
真ちゃんはやっぱ高尾大好きで、高尾もそうだと思います。
素敵なリクエストありがとうございました!


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