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□強がりの後ろ側
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緑高/看病ネタ
「緑間あー、高尾休みだってさ」
「……そうか」
【強がりの後ろ側】
とりあえず、薬とリンゴ、あと熱冷まシート、ポカリ、部活の予定表と学校からの連絡袋も持ったし、これで準備は万端。
高尾の家の前で意気込む。
別に緊張はしてない。
それに別に心配なわけで来たわけでもない。
ただ、馬鹿は風邪を引かないというのに、高尾が風邪を引いたから珍しいと思っただけだ。
はっきり言おう。
ものすごく心配だ。
「あいつ、ちゃんと寝て、食事もとってるのか…」
朝から気が気ではなかった。
いつも埋まっているはずの俺の隣は、ぽっかりと穴が空いたようにとても寂しく感じた。
ゆっくりインターホンを押して、じっと待つ。
少し間が空いた後に、低くてがらがら声だったが、確かに高尾の声だった。
「…はい」
「俺だ、開けろ」
「…は?、え、真ちゃん!?」
「あまり大きな声を出すな。喉を痛めるだろう」
「え、ちょ…なんで?」
あたふたする高尾をよそに、ドアノブに手を掛けると開いていたから、そのまま高尾の家に入っていった。
がちゃり、とリビングに繋がるドアを開けようとした、
「おい、何をやってるのだよ」
「ちょ、まじ絶対入んなっ!!」
「意味が分からんのだよ!」
ドアの押し合いみたいになっていると、やはり高尾は今病人だから、力が弱くすぐに俺が勝った。
ドアを開くと、いきなり顔面に何かがクラッシュした。
眼鏡のフレームがあたって、じんじんとする鼻を押さえながら、投げてきた本人を軽く睨む。
「そんなに嫌か、俺が来るのが」
「べ、別にそういうわけじゃ、ねえけど…」
未だに俺に背を向けながらこちらを向こうとしない。
さすがにイラっとくる。
なんなのだよ。
人がせっかく心配して来ているというのに。
これでは無駄足だ。
持ってきた荷物をその場に荒く置いて、帰る、と一言言って背を向けた。
自意識過剰だったか。
心のどこかでは、俺が来て、喜んで笑う高尾を思い浮かべていた。
「待って、っ…」
腕を引っ張られて、不意に体が後ろに行く。
ぎゅっと背中に抱き付く高尾。
なんだかすごく可愛く見えた。
顔が見えない分、背中からどくどくと早い鼓動を打つ高尾の心臓。
「違う、真ちゃん、あのな。俺真ちゃんが来てくれてすげえ嬉しいんだ。なんか寂しかったから、来てくれた時、ぎゅってしてほしかったんだけど、うつしたくなかったし」
「…分かった、分かったから泣き止むのだよ」
「うっ…しんちゃあーん!!」
「服で涙を拭くなっ!!」
「え、真ちゃんダジャレ?」
「黙るのだよ!」
「で、何もしてないだと?」
「いやあ、すぐ治ると思ってて」
薬も飲んでない、ちゃんと食べてもない、さらには休んでいない。
こいつは風邪を引いても馬鹿だな本当に。
強引にベッドに寝かせて、買ってきた熱冷まシートを貼った。
大丈夫、という高尾を押し切って洗濯や食器洗い、部屋の掃除などをした。
その後リンゴも剥いて、高尾に食べさせた。
「今日の真ちゃん、優しすぎて怖いや…」
「ふん、これくらいは当たり前なのだよ」
「へへっ…」
「高尾、熱が上がってきてる。もう今日は寝ろ」
「ん…なあ真ちゃん」
「なんだ」
「手、握ってて…」
温度の高い、高尾の手を優しくぎゅっと握る。
力が入らないのか、握り返してくる高尾の手は少し震えていた。
寂しかった、と言っていたな。
そりゃ、そうか。
高尾の家は共働きで、休日は家にいない。
忙しいこともあって、帰ってくることも少ない。
「お疲れ」
少し汗が出ている高尾の頬を、握っていない手でふんわりと包み込む。
そういえば初めて見た。
こんなに弱っている高尾。
いつも俺の前では、おちゃらけてたり、すごく元気でいつも笑ってる。
でもやっぱ、たまにはこういう一面も見たい。
救ってやりたい。
気持ち良さそうに寝ている高尾を見て、俺も笑顔がこぼれた。
「…あ!!薬っ…」
ふと横のテーブルにある薬に目が入った。
しくじった…。
もう寝ている高尾を見て、ため息が出た。
ちゃんと飲まなきゃ、治るものも治らないのに。
仕方がないか。
ぱく、と薬を自分の口の中に入れてそのまま水も含んで、高尾に口づけた。
「んっ…」
少し開いた高尾の口に薬と水を流し込む。
喉を通ったのを見て、後から顔が暑くなってくる。
自分でやっときながら、ものすごく恥ずかしい。
高尾を見ると、さらに恥ずかしくなってきた。
「ん…しん、ちゃ…」
「っ…!!」
耐えろ、耐えるんだ緑間。
ここで理性を崩せば、男としてのプライドが!!
それに相手は病人。
耐えるんだ。
俺にとってもある意味しんどい時間だった。
次の日、高尾が元気になって俺が体調を崩すことになるとは思ってなかった。
end!!
弱ってる高尾って良いですね。
高尾は風邪とか引いたら甘えたになると思いたい。
そしてやっぱりそんな高尾を真ちゃんが襲う。
素敵なリクエストありがとうございました!
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